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第壱部-Ⅱ:はじまりは確かに駒だった
10.晴海(はるみ) 貴方は
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「ーーーーーーー!!!!!」
突如、空気が震えて悲鳴を聞いた。
妃殿下が何事かと問うのを待たず、部屋を飛び出す。廊下の先から、皇子殿下の叫び声と、甲高い悲鳴がした。
階下から駆けた藤夜が、私を追い越してゆく。
一拍遅れて部屋に飛び込むと、洗面所の中で、皇子殿下が抱いた小さな体が崩れ落ちるのが見えた。
「紫鷹(しおう)、離せ、」
愕然とする皇子殿下の腕を藤夜がはがす。
殿下は彼に任せればいい。
「日向様、」
ぐったりとした体を受け取り声をかけたが、完全に意識を失っていた。だが胸は小さく上下している。脈もある。
生きている。
全身に目を走らせると、何もまとわない皮膚はあちこちが破れ、滴る水を赤く染めていた。脱力した両方の手の爪が一部剥がれている。唇が割れていたが、他に明らかな外傷はない。
もう一度呼吸と脈を確かめて、小さな体を抱えた。
駆けつけた水蛟(みづち)に指示を出して、ベッドに体をおろし、もう一度全身を確認した。
すぐに青空(そら)と唯理音(ゆりね)、宇継(うつぎ)が駆けてきて処置を始める。遅れて医師を連れた水蛟が戻り加わった。
誰もが小さな体をみて息をのむ。しかしすぐに、意識を戻して淡々と働いた。
皇子殿下はまだ同じ姿勢のまま、洗面所にいる。
普段は年に見合わぬ空気をまとう彼も、まだ15歳の子ども。
仮面をかぶって隠していても、未熟で、心が弱い。
おそらく、日向様の体を見たのも初めてなのでしょうね。
小さな白い体は、とても15歳の子どもの体ではない。
離宮に来た日には、美しい王族の衣装をまとっていた。せいぜいやつれた子ども。
けれどその下に隠した肌は、ひどく傷つき、本来の機能さえ失っていた。
水分のない枯れた肌は、汗をかくのも難しい。あちこちに焼けただれてケロイドになった箇所があった。背中や腹に入った無数の細長い傷跡は、おそらく鞭うたれたものだろう。左肘の関節は、皮膚が引き攣れて可動域が狭いし、下肢の骨は数か所折れた痕跡がある。おそらく左の足がいびつに曲がっているのは、適切な治療が受けられなかったためだ。股関節の脱臼と、陰部の傷が物語るのは、とてもあの小さな子どもが受けていい仕打ちではなかった。
皇子殿下は飼い馴らすつもりで、いたのでしょうけど。
日向様が箪笥の一番下に隠れたその日に、私はすべて把握した。
皇子殿下が「巣穴」と呼ぶ場所に、小さな王子がおびえて隠れる異常さを、妃殿下はすぐに理解されたから。
日向様が眠った隙に術を重ねてより深い眠りへと落とし、「巣穴」から運び出して医師に診せたのは私だ。
一度、眠らせて「巣穴」を洗ったことで日向様に気付かれてしまい、皇子には「二度とやるな」と叱られた。
確かにあれは、最大の失態だったが、その後も何度も、医師には診察や治療をさせた。
とても、飼い馴らすのを待つ時間はなかった。
藤夜に支えられたまま、皇子殿下はまだ放心しているが、慰めようとも励まそうとも私には思えない。
鼻から、殿下にお任せできるとは考えていなかったけれど。
ひどいことをしてくれたものね。
皇子殿下は、食事を与えて懐かれたとはしゃいでおられたけれど、一度だって、日向様の尼嶺(にれ)での暮らしを知ろうとはしなかったでしょう?
貴方は、日向様がなぜあんなに人におびえるのか、知ろうともしなかったでしょう?
なぜ同い年の少年が、成長できなかったのか、なぜ王家の第一王子の魔力があんなにも未熟なのか、なぜ獣のように「巣穴」に隠れるのか、なぜ言葉を話さないのか、なぜ人質としての価値をもたないのか、貴方は考えもしなかったでしょう?
貴方はただ、拾った子犬が馴れたと喜んでいただけ。
診察を終えた気配を感じて、医師を振り返る。
彼はこの3か月半、ずっと日向様を診てきた。
「すぐに危ういということはないが…、皮膚の破れたところから感染する可能性が高いですね。そうなれば、おそらく日向様には耐えられません。――ーきちんと治療がしたい。」
断固とした口調で彼はいう。
これまでもずっと、彼は日向様を救う方法を本気で考えてきた。
「晴海さん、」
水蛟が小さな白い手を握ったままこちらを見る。
「私たちがついて、お世話いたします。」
彼女たちは、初めからずっと日向様を守ることに必死だった。
「薬で眠らせても構いませんが…、」
「日向様の負担になるのでしょう?私がやります。」
日向様に気付かれぬよう、負担にならぬよう、私は繰り返し術を磨いた。
妃殿下は、おそらく同意されるだろう。
あの方は、すべて知ったうえで、分の悪い人質の条件を受け入れた。
日向様。
貴方は、決して獣や駒などではない。
私たちは懐かれなくてもいい。
恐れられてもいい。
貴方がただ、生きて、幸せだと、いつか笑ってくれればそれでいい。
だから今は、貴方の命を救わせてください。
私たちはとっくに覚悟を決めましたよ。
皇子殿下、貴方は?
突如、空気が震えて悲鳴を聞いた。
妃殿下が何事かと問うのを待たず、部屋を飛び出す。廊下の先から、皇子殿下の叫び声と、甲高い悲鳴がした。
階下から駆けた藤夜が、私を追い越してゆく。
一拍遅れて部屋に飛び込むと、洗面所の中で、皇子殿下が抱いた小さな体が崩れ落ちるのが見えた。
「紫鷹(しおう)、離せ、」
愕然とする皇子殿下の腕を藤夜がはがす。
殿下は彼に任せればいい。
「日向様、」
ぐったりとした体を受け取り声をかけたが、完全に意識を失っていた。だが胸は小さく上下している。脈もある。
生きている。
全身に目を走らせると、何もまとわない皮膚はあちこちが破れ、滴る水を赤く染めていた。脱力した両方の手の爪が一部剥がれている。唇が割れていたが、他に明らかな外傷はない。
もう一度呼吸と脈を確かめて、小さな体を抱えた。
駆けつけた水蛟(みづち)に指示を出して、ベッドに体をおろし、もう一度全身を確認した。
すぐに青空(そら)と唯理音(ゆりね)、宇継(うつぎ)が駆けてきて処置を始める。遅れて医師を連れた水蛟が戻り加わった。
誰もが小さな体をみて息をのむ。しかしすぐに、意識を戻して淡々と働いた。
皇子殿下はまだ同じ姿勢のまま、洗面所にいる。
普段は年に見合わぬ空気をまとう彼も、まだ15歳の子ども。
仮面をかぶって隠していても、未熟で、心が弱い。
おそらく、日向様の体を見たのも初めてなのでしょうね。
小さな白い体は、とても15歳の子どもの体ではない。
離宮に来た日には、美しい王族の衣装をまとっていた。せいぜいやつれた子ども。
けれどその下に隠した肌は、ひどく傷つき、本来の機能さえ失っていた。
水分のない枯れた肌は、汗をかくのも難しい。あちこちに焼けただれてケロイドになった箇所があった。背中や腹に入った無数の細長い傷跡は、おそらく鞭うたれたものだろう。左肘の関節は、皮膚が引き攣れて可動域が狭いし、下肢の骨は数か所折れた痕跡がある。おそらく左の足がいびつに曲がっているのは、適切な治療が受けられなかったためだ。股関節の脱臼と、陰部の傷が物語るのは、とてもあの小さな子どもが受けていい仕打ちではなかった。
皇子殿下は飼い馴らすつもりで、いたのでしょうけど。
日向様が箪笥の一番下に隠れたその日に、私はすべて把握した。
皇子殿下が「巣穴」と呼ぶ場所に、小さな王子がおびえて隠れる異常さを、妃殿下はすぐに理解されたから。
日向様が眠った隙に術を重ねてより深い眠りへと落とし、「巣穴」から運び出して医師に診せたのは私だ。
一度、眠らせて「巣穴」を洗ったことで日向様に気付かれてしまい、皇子には「二度とやるな」と叱られた。
確かにあれは、最大の失態だったが、その後も何度も、医師には診察や治療をさせた。
とても、飼い馴らすのを待つ時間はなかった。
藤夜に支えられたまま、皇子殿下はまだ放心しているが、慰めようとも励まそうとも私には思えない。
鼻から、殿下にお任せできるとは考えていなかったけれど。
ひどいことをしてくれたものね。
皇子殿下は、食事を与えて懐かれたとはしゃいでおられたけれど、一度だって、日向様の尼嶺(にれ)での暮らしを知ろうとはしなかったでしょう?
貴方は、日向様がなぜあんなに人におびえるのか、知ろうともしなかったでしょう?
なぜ同い年の少年が、成長できなかったのか、なぜ王家の第一王子の魔力があんなにも未熟なのか、なぜ獣のように「巣穴」に隠れるのか、なぜ言葉を話さないのか、なぜ人質としての価値をもたないのか、貴方は考えもしなかったでしょう?
貴方はただ、拾った子犬が馴れたと喜んでいただけ。
診察を終えた気配を感じて、医師を振り返る。
彼はこの3か月半、ずっと日向様を診てきた。
「すぐに危ういということはないが…、皮膚の破れたところから感染する可能性が高いですね。そうなれば、おそらく日向様には耐えられません。――ーきちんと治療がしたい。」
断固とした口調で彼はいう。
これまでもずっと、彼は日向様を救う方法を本気で考えてきた。
「晴海さん、」
水蛟が小さな白い手を握ったままこちらを見る。
「私たちがついて、お世話いたします。」
彼女たちは、初めからずっと日向様を守ることに必死だった。
「薬で眠らせても構いませんが…、」
「日向様の負担になるのでしょう?私がやります。」
日向様に気付かれぬよう、負担にならぬよう、私は繰り返し術を磨いた。
妃殿下は、おそらく同意されるだろう。
あの方は、すべて知ったうえで、分の悪い人質の条件を受け入れた。
日向様。
貴方は、決して獣や駒などではない。
私たちは懐かれなくてもいい。
恐れられてもいい。
貴方がただ、生きて、幸せだと、いつか笑ってくれればそれでいい。
だから今は、貴方の命を救わせてください。
私たちはとっくに覚悟を決めましたよ。
皇子殿下、貴方は?
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