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課外授業編
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しおりを挟む「はい、じゃあ事前に決めた班に分かれて」
クルザナシュの西方の山に集められた魔法学院の一年生達は、妙に張り切った様子のレオンの指示を受けて五人ずつの班に分かれる。
その五人ずつの班に課外授業の付き添いできた教員が二人つき、後は臨時で手伝いをしているルイズが引率につく。
そして、足りない分の引率にはクルザナシュの街からエイデンと他二人の人間の魔法使いが引率を引き受けることになった。
「まさか付き添い人を自分の街のやつらで集めちまうとね……」
その様子を見ていたマークは感心したように頷いている。
事前に報告を受け、マークに「人手が足りないから」という理由で断られた「西の山で鉱物の洞窟を探す」という計画はレオンの機転とほぼ無償に近い報酬で参加してくれたクルザナシュの魔法使い達によって見事に叶っていた。
引率に必要な魔法使いは「身元のハッキリとした優秀な魔法使い」である。
他所から人材を探し、雇うのではそれなりの金額がかかるものの、クルザナシュには他の街と違いレオンを慕って教えを乞いにきた魔法使い達が多くいる。
レオンがその者たちの存在を思い出し募集をしてみたところ、エイデンを含む三人の若者が名乗りを上げてくれたのだ。
学院側からの許可もすんなりと出て、クルザナシュでの課外授業の計画は見事に実現された。
「それじゃあ、俺たちは山の周囲に散って警戒する。何にもないと思うが、一応生徒には『呼びつけの笛』を持たせているからな」
マークはそう言うと部下を連れて先に山の中へと入っていく。
護衛としてついてきたマーク率いる魔法騎士団は任務上、教員達のように各班に分かれて付き添い役をすることができない。
しかしその代わりに山の周囲に散って何かがあればすぐに駆けつけられるように警戒してくれるのだ。
各班の生徒の代表が首から下げる「呼びつけの笛」という魔道具は魔力を込めて吹くと数十キロ離れていても吹いた者の位置がわかるという物だった。
魔法騎士団の団員達が山の中に散り、各班の生徒と付き添い人の準備ができたのを確認したレオンは早速説明を始める。
片手に山の中で採れたオルガナイトの鉱物を持ち、右手に魔法を構築しながらレオンは皆に聞こえるように声を張り上げた。
「これは鉱物に含まれる成分を魔法で読み取り、同じ成分の物を探す簡単な魔法です。これを応用すると『人物探知』や『失くした物を探す魔法』ができるわけですが……とりあえず実際にやってみましょう」
レオンの右手に構築された魔法は、左手に持つ鉱物に吸い込まれるように溶けていくと鉱物の中で煌々と光を発した。
そして、何度か脈打つように点滅した後、空に向かって打ち上がる。
全員の目が空に向かって飛んでいく光に注目した。
光は空の上で一瞬留まると、その後で西の山の中へと消えていく。
「今光が向かった先が鉱物のある場所です。つまり、光の筋を辿るとそこに鉱物があります。さぁ、簡単な魔法なので皆もやってみて」
レオンにそう言われて学生達は一斉に動き出した。
各々が片手にオルガナイトの欠片を持ち、魔法を発動しようと躍起になっている。
仕組みを聞くと案外簡単にできる者もいれば、なかなか上手くできない者もいる。
できない生徒にはルイズやエイデンが優しく手解きし、最終的には全員ができるようになった。
「それじゃあ早速山に入ってもらいましょう。山には魔法騎士団の人達が先に入って危険がないか見ているし、引率の先生達もいます。でも気を抜かないように、どんな危険も回避するためにはまず自分の集中力が必要だということを忘れないで」
レオンが最後に注意を促すと、学生たちは「はーい」と元気よく返事をして、山の中に入っていった。
全ての班が山の中に消え、引率の魔法使い達もいなくなる。
レオンはホッと一息ついて、課外授業が無事に終わることを祈った。
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