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第1章 安住の地を求めて

第26話 不可視の視線

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 最も厳しい冬の峠は超えたか。最近はめっきり雪が降る事は無くなった。いまだにテンが目覚める気配はない。

 冬に入ってからは周辺の探索をほとんど行わなくなった。テンが一緒に行動できない以上、僕1人で探索するしかない。

 この雪の上では機動力を奪われる。もしこの上でも高い機動力を維持できる魔物がいた場合、僕とは相性が悪いから危険が大きすぎる。

 それでも空間魔法を創造した今ならその機動力の問題も解決する。さらには拠点に戻っても探索の続きから行えるようになった。そういう訳で今は1人で探索を再開した。

 やはり森の空気が静かだ。魔物の気配はそこかしこからするが活発に活動している魔物はいない。やはり魔物にとってもこの森の冬は厳しいのだろう。

 僕にとっても慣れない雪の上で、いまだに厳しい寒さの中長時間探索し続ける事は出来ない。数日に渡って細かく森の奥へと探索を進める。

 森の奥へと行くにつれ空気に漂う魔力量が多くなる。基本的に保有する魔力量が多いほど魔物は強い。そしてそういう魔物ほど漂う魔力量が多い場所を好む。

 ここら辺に棲む魔物は一体どういった魔物なのだろうか。魔物は多種多様で非常に面白い。凶暴な魔物もいるが、多くは敵意を示さなければ襲ってこない。なかには興味本位でこちらに近づいてくる魔物もいる。

 拠点にいる羊の魔物なんて我が物顔で居座っている。寝ている時に「メエ~ メエ~」うるさいなと思ったら外に連れていかれ雪をどうにかしろと訴えられた。少しの範囲の雪を溶かしてやると草を食い始め、満足したら自分の部屋へと戻り寝始めた。

 あいつほど図々しい魔物なんていないが、最近は拠点付近の魔物とも交流しており、新しい魔物との出会いも楽しみだ。

 ☆

今日も探索を続けていると周囲の気配に違和感を感じる。空気に漂う魔力量が増えた時よりは薄い違和感。何かが変わった感覚なのだが何が変わったか、その原因が分からない。

 歩みを止め周囲を探ることに注力する。ふと前方から何かに見られているように感じる。

 まずいな。この森に入ってから僕より気配感知の上手い魔物には出会わなかった。魔物の中で1番気配感知が上手いのは大蜘蛛だがその大蜘蛛ですら僕より気配を感知できる距離は短い。

 いつから見られていた。そして今もどこから見られているか分からない。さらに四方から視線が増えているように感じる。

 今はまだ向こうにこちらを襲う気は無いのだろう、不穏な気配は感じない。それでも四方を囲まれているのはまずい。拠点に撤退できるよう身構えるが、出来れば何かしらの情報を得たい。

 そう思い後方、遠く離れた樹の裏へとワープする。瞬間、先ほど僕がいた周辺の気配が騒がしくなった。その気配はだんだんと僕がいた場所に群がっているのを感じるのに目には映らない。

 一体なんなのだろうか。僕の気配感知を狂わせるような能力なのか、それとも姿を周囲に溶け込ませるような能力なのか。

 結局情報を得たようで得ていないような不思議な感覚で拠点へと帰る。今後あそこへ近づか時は要注意だな。

 「メエ~」

 「はいはい、草が食べたいんだな。今雪を溶かすから待ってな。それにしてもお前、僕がいない時もこの森で生きてきたんだから自分で食べれるか食べなくても大丈夫なんじゃないのか?」

 「……」

 …そうか、不都合な事はダンマリですか。
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