鬼になるまで出会うまで

トマトマル

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1章

霊感持ち

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白い軽自動車が下り線の高速道路に乗り、猛スピードで走っていく。

車内は沈黙。
とてもじゃないが、家族に「実言うと、おばあちゃんの記憶が全くないんだけど」なんて言える状態ではない。いや、絶対に言えない。


これ以上、おばあちゃんの事を考えても仕方ないと思い、
気持ちを落ち着かせようと、外の景色を眺めた。
窓に映る自分は、目元に酷いクマがあった。

(相変わらず、酷い寝不足顔・・・。)

スーハーと深呼吸をして、一旦、目を閉じた。
目を開けて、車内を見渡した。

(やっぱり着いてきてる・・・・・・。)

お母さんの肩にはドロドロした黒いモノがまとわりついている。
数ヶ月前からお母さんの肩にはソイツが着いていた。

(あんなにキモいの久しぶりに見たな。)

ソイツと目が合う前にふいっと目を逸らし、
もう一度、外の景色を見た。
外の高速道路には、たくさんの霊がいた。私の経験上、お墓とかよりも
道路や病院の方が霊がたくさんいる。

もうお気づきだろうが、私は霊感持ちだ。
いや、正確には霊感持ちだった。

物心ついた時から人には見えないモノが見えていた。
自分以外にこいつらが見えていないと知った時には大泣きしたと思う。
何歳の頃かは忘れたけどね。
おかげで私のコミュ障は素晴らしい程に育った。どうしても、こいつはもしかしたら霊なのかもしれないと疑ってしまうのだ。
これもいつ頃かは忘れたが、霊が見えなくなった時は大喜びしたものだ。「これでやっと友達が出来る!!!」・・・と思ってたんだっけ?
まぁ、霊が見えなくなっても拗らせまくったコミュ障がなくなる訳では無い。
結論から言うけど私は学校でボッチである。もう一度言う。ボッチである。
必死こいて勉強し、せっかく入学した高校ではグループに入れず、夏休みに入った現在でも友達は皆無であった。夏休みの予定??ねぇよ!そんなもん!!あったとしても、家族旅行ぐらいだわ!
友達なんて、しばらくはいらないし!?これは決して強がってなどいない!そう、決して強がりなんかじゃない!!(2回目)

霊感の話に戻るが、数ヶ月前から
お母さんの肩に乗る例のヤツ、またの名を''ドロくん''が見えたのをきっかけに霊感が復活したのである。
私としては悲しいばかりであるが、近所の霊はあまりこちらには危害を加えないので日常生活に不安はない。危害と言う危害は確かにないが、ちょっとしたイタズラはある。まぁ、適当に付き合っていればそれなりに理解は得れるし、帰宅部で友達がいない私にとっては良い放課後の暇つぶし仲間になっていた。

この霊感が戻ってきてしまった元凶であろう''ドロくん''は私の寝不足顔の元凶でもある。
とにかく、気味が悪い。お母さんの肩にずっと乗っているし、黒くてちょっと透けていて中に白い塊が鈍く光っている。そして何より、血走った一つ目が怖い。しかも、意思疎通を試みても全く出来ないのである。
そして真夜中だけお母さんから離れて、家中を這いずり回っている。
総じて、キモいのである。
お母さんに不調はないかと聞いてみても特にないらしいので放置プレイ状態である。

しかし、''ドロくん''が深夜に家を這いずり回るのは我慢ならんのだ。
不気味だし、なんと言ってもうるさくて眠れないのである。
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