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第2話 稀血の聖女
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「今日から私の妻だ。稀血の聖女、フィーネ」
「まれち……?」
サファイアブルーの瞳はフィーネを見つめて逃がさなかった。
「君の血は稀血といってとっても魅力のある血なんだ。甘くて香しい匂いをしてる」
「そんなこと誰にも言われたことない……」
「ああ、だって魅力的な血なのは『吸血鬼(ヴァンパイア)』にとってだからね」
「ヴァンパイア……!?」
馬車はゆっくりと進み始めてガタンと揺れた。
その拍子にフィーネはよろけてオスヴァルトの胸元に飛び込む形で倒れてしまう。
「も、申し訳ございませんっ! エルツェこうしゃ……っ!」
フィーネはそこで彼の正体に気づいてしまった。
(犬歯が長い……まるで牙みたい。それに目が……赤い……)
オスヴァルトはそっと目を閉じると元のサファイアブルーの目に戻り、フィーネに優しく微笑みかける。
「気づいたかい? そう、私は吸血鬼だよ」
「吸血鬼……」
吸血鬼は伝承や絵本の中でしか出てこない存在であり、こうして目の前に本当に現れたことに驚きを隠せないフィーネ。
「君はね、稀血でね、吸血鬼からしたらご馳走なんだよ」
その言葉に思わず息を飲む。
まるで目の前の男にこれから命を奪われるような、そんな緊張感がフィーネの中に走った。
(そうか……私はこの方に食べられるために身請けされたのね)
フィーネは自分のこの後の行く末を想像して、虚無感漂う表情になる。
(これまでもたくさん辛いことがあったし、何度も身請けがうまくいかなかった)
そう心の中で思いながら、フィーネは目を閉じて今までのことを思い出す。
虐げられて食事もまともに与えられてなかったことでやせ細り、身体目当てだった貴族には失望された。
また別の貴族には翡翠の目が気持ち悪いからと、その場で断られ雪の降る寒い外に置き去りにされた。
それにある貴族の家に行ったときには、うまく食事が用意できずに熱いスープをかけられてやけどをした。
頭の中にあの頃の言葉たちがこだまする──
『黙って俺の言うことを聞いていろ!』
『そんな身体で俺が満足できると思ってるのか!?』
『なんだその目は、気持ち悪いっ!!』
『近づくな、この偽聖女が!』
フィーネはゆっくりと目を開けて目の前にいるオスヴァルトを見上げると、ふっと笑った。
(そうね……、私なんか吸血鬼に食べられちゃうくらいがちょうどいいのかもね)
突然何かを悟り、自分の死を覚悟したような笑いを浮かべたフィーネに、オスヴァルトは真剣な面持ちで尋ねる。
「君はもしかして私に食べられると思っているのかい?」
「え……?」
きょとんとしたフィーネの顔に優しく手を添えると、これまた特別に優しい目で彼女を見つめる。
「そんなことしないよ」
オスヴァルトはそっとフィーネの髪をなでると、ちゅっと唇とつける。
「私は君のことを食べたりしない。安心して」
低くて甘い言葉にフィーネの体温は少しだけ上がった──
「まれち……?」
サファイアブルーの瞳はフィーネを見つめて逃がさなかった。
「君の血は稀血といってとっても魅力のある血なんだ。甘くて香しい匂いをしてる」
「そんなこと誰にも言われたことない……」
「ああ、だって魅力的な血なのは『吸血鬼(ヴァンパイア)』にとってだからね」
「ヴァンパイア……!?」
馬車はゆっくりと進み始めてガタンと揺れた。
その拍子にフィーネはよろけてオスヴァルトの胸元に飛び込む形で倒れてしまう。
「も、申し訳ございませんっ! エルツェこうしゃ……っ!」
フィーネはそこで彼の正体に気づいてしまった。
(犬歯が長い……まるで牙みたい。それに目が……赤い……)
オスヴァルトはそっと目を閉じると元のサファイアブルーの目に戻り、フィーネに優しく微笑みかける。
「気づいたかい? そう、私は吸血鬼だよ」
「吸血鬼……」
吸血鬼は伝承や絵本の中でしか出てこない存在であり、こうして目の前に本当に現れたことに驚きを隠せないフィーネ。
「君はね、稀血でね、吸血鬼からしたらご馳走なんだよ」
その言葉に思わず息を飲む。
まるで目の前の男にこれから命を奪われるような、そんな緊張感がフィーネの中に走った。
(そうか……私はこの方に食べられるために身請けされたのね)
フィーネは自分のこの後の行く末を想像して、虚無感漂う表情になる。
(これまでもたくさん辛いことがあったし、何度も身請けがうまくいかなかった)
そう心の中で思いながら、フィーネは目を閉じて今までのことを思い出す。
虐げられて食事もまともに与えられてなかったことでやせ細り、身体目当てだった貴族には失望された。
また別の貴族には翡翠の目が気持ち悪いからと、その場で断られ雪の降る寒い外に置き去りにされた。
それにある貴族の家に行ったときには、うまく食事が用意できずに熱いスープをかけられてやけどをした。
頭の中にあの頃の言葉たちがこだまする──
『黙って俺の言うことを聞いていろ!』
『そんな身体で俺が満足できると思ってるのか!?』
『なんだその目は、気持ち悪いっ!!』
『近づくな、この偽聖女が!』
フィーネはゆっくりと目を開けて目の前にいるオスヴァルトを見上げると、ふっと笑った。
(そうね……、私なんか吸血鬼に食べられちゃうくらいがちょうどいいのかもね)
突然何かを悟り、自分の死を覚悟したような笑いを浮かべたフィーネに、オスヴァルトは真剣な面持ちで尋ねる。
「君はもしかして私に食べられると思っているのかい?」
「え……?」
きょとんとしたフィーネの顔に優しく手を添えると、これまた特別に優しい目で彼女を見つめる。
「そんなことしないよ」
オスヴァルトはそっとフィーネの髪をなでると、ちゅっと唇とつける。
「私は君のことを食べたりしない。安心して」
低くて甘い言葉にフィーネの体温は少しだけ上がった──
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