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第二章
マリアベルの帰省 5
しおりを挟むセバスチャンはホッと肩を撫で下ろした。
マリアベル様は今日は何事も無かったように、<アズキ>と言うモノを煮ておられる。
夢の話もすっかりと忘れてしまっているようだ。
私は、忘れる事は最大の自己防衛であると思っている。
なので、いつもと変わりのないお嬢様で安堵した。
ローガン様のように、トラウマになってしまったらどうしようかと心配しておりましたが、、、
マリアベル様は以前から明るい方でしたが、記憶を失ってからと言うもの非常に前向きになられ•••• 良い傾向ですね!
学園に入りしっかりと淑女教育をせねばと思っておりましたが、
今流行りの庶民派お嬢様でも良いじゃありませんか!
マリアベルが幸せであれば、それではそれで良いと思うように感化されてきた、セバスチャンであった。
今日は小豆作りの日
ますは、茹でこぼしをして、再度煮る
「コトコトと、小さな火で一時間程煮て下さい。かき混ぜは優しくですからね!」
アクをとり、煮上がった所で数回に分け砂糖を投入。そして少し加熱し出来上がり。
「こんな泥水みたいなの、初めてだな!」
ピエールにビックリされた。
寒天がなかったので小豆ゼリーに変更する。
ピエールに指示を出しながら一緒に作成。
こし餡と粒あん、二層にする。
我ながら上手く出来た。
セバスチャンに試食してもらった。
OKが出たので 明日、祖父様に召し上がってもらうため15個ほど作ってもらった。
残った小豆は、、、
目を離した隙に、リリアンが凄い勢いでスプーンで食べている。
「私、三食これでいいですぅーー」
どうやら、小豆がツボにハマったようであった。
お世話になった飼料係の方にも完成品をもって報告にいかなければ。
リリアンのドカ食いで少なくなった小豆で、餡サンドを作った。
リリアンをお供にお裾分けに行った。
ジャックが留守だったので言付けて置いてきた。
穏やかに時間が過ぎる。
こんな、日常が毎日続けばよいなぁ
「やっぱりクラレンスの星は綺麗ね」
課題を終え、窓から夜空を眺めていた。
「コンコン」ノックの音、
「私だ、起きているか?」旦那様の声がした。
ハイ、と返事をしてドアを開けて招き入れた。
「今日も’まじない’を頼みたいのが••••」
よろこんで、と答え 旦那様の頭に手をやる。
この前流したばかりなのに、またペタペタしたものが滞っている。
「旦那様、また溜まっていますね?」
「それはお前には、どのように感じているのか?」
「そうですねぇ、なんだか重くてペタペタしたモノが溜まっている感じでしょうか」
「それは、怪我を治す時と違うのが。」
「基本は同じなんです。
怪我も頭痛も痛いの、辛いのがどこかへ行くようにお祈りするだけなのです。
旦那様の場合は、ペタペタが指先に感じまして、、、」
「魔法では無いのだな?」
「はい、”おまじない”なんです。」
「そうか、、、」
「マリアベル、そのぉ、あのだなぁ••••
私をまだ、父と呼んではくれないのだな?」
「いえ、そう言う訳では••••
まだ生活に慣れなくて••••」
なんとなく、思った。
ああ、この人は寂しいのだ。
そして、私の中の何かが 寂しさを感じているのだ。
「 •••••お父様 」
父の手を取り答えた。
「ありがとう。少しづつでよいから、
親子になっていこう」
父は私を抱きしめ、額にお休みのキスをした。
———————
泣いてる。
これは、私の感情では無い。
体の奥から湧き出るこの感情
………溢れてきそう………
ああ、、、
嬉しいかったのね、
寂しかったのね、
ああ、こんなにも、辛かったのね、
私の中の何が、、、
浮かび上がり、
登って行く、上に、上に、
登って行く、夜空に、夜空高くに、
女神様に手を引かれて••••••
—————————-
仕入れから帰ってきたジャックの手元にあるのは、だった1切れのあんサンド。
たくさんあったはずの あんサンドは、
餡子の魔力に取り憑かれたリリアンと、飼料係達で食べてしまったのだ
「チクショーー」
その後、餡子 はリリアンの努力の甲斐あって常備食となったのは言うまでもない。
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