音楽を心に~music heart~

野良豚

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第1章

1-6.5「正体不明のあいつ」

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閑話休題のため視点が変わります。

-------------------------
   ある日、私、祇園 優美ぎおん まなみは体に電気が走る衝動に駆られた。
それは家での出来事だった。

「なに…この声…」

   スマホアプリSINglesで歌の上手い…いえ、そんな言葉では表せないほど美しい歌声の人がいた。

   私はこのアプリでクイーンとして存在している。
母親の作ったアプリを最初に使い、歌を投稿したら、人気者になっていき今やクイーンと呼ばれるようになった。

   クイーンがいるならキングは?と思った人もいるだろう。
今までクイーンという存在はいる。もちろん私だ。しかし、キングという存在はいたことが無い。
自称キングと言っている人はいくらでもいる。
少し歌が上手いと、やれ1番だ。やれキングだと騒ぐ。
しかし、ほかのユーザーがそれを認めてはいない。

だからこそ、このアカウント名【暗神】という人物が出てきた時には驚いたし、
もしかしたら、キングに一番近い人かもしれないと1曲聴いただけで思ってしまった。
もちろんファン登録もした。
私がファン登録をした時、既にファンの数が20,000を超えていた。

こんな歌声聞いたことない。
どこの誰なのだろう。
気になって仕方がない。
しかし、今は学校にいかなければ。
準備をして家を出た。
登校している最中や学校でも、その【暗神】の話で持ち切りだった。

「あっ!優美ちゃ~ん!おはよ~」

   1人の女子生徒が話しかけてきた。
この子は、友達の河北 由佳かわきた ゆか。この子もSINglesを使っている1人で、ランキング上位者である。

「おはよう、由佳。どうしたの?テンションが高いようだけど」

   いつもはそんなにテンションが高い方ではないのに今日はワクワクしたような顔をしている。

「ねぇ~アプリのアカウント名、暗神さんの曲聴いた~!?」

   今、一番の話題のアカウント名の話だった。
だからテンションが高かったのか
由佳は歌が大好きだから分からなくはないが。

「えぇ、聴いたわ。誰なのかしら?私気になって仕方がないわ」

「うちも気になるんよね~そう言えば違うクラスにランキング上位者いたよね~?」

「えぇ、確かケンタという名前じゃなかったかしら?」

「その人なんか知ってないかな~?噂だとこの学校の人かもしれないんでしょ~?」

「え?」

   由佳は、私の知らない情報を知っていた。
この学校の人かもしれないの!?
なんでその情報が私に回って来てないの!?

「ゆ、由佳!?その情報は確かなの!?」

「うわ!びっくりした~急にどうしたの~?」

「さっきの話!この学校かもしれないって!」

「あくまでも噂だからね~確かな情報ではないよ~」

「そ、そうなのね…」

   有力な情報かと思ったのに…違うのね…
私がガッカリしていると続け様に由佳が情報をくれた。

「でもね~、学生じゃないかって噂は本当だと思うよ~」

「!?な、なんでそう思うのですかしら!?」

   自分でも信じられないほど日本語がおかしかったがそれ以上に情報の方が気になった。

   なぜならこういう投稿アプリは個人情報保護のため、本名や年齢が分からないからだ。
学生かもしれないし、大人かもしれない。はたまた、おじいちゃんやおばあちゃんかもしれない。
だから、学生かもという情報は大きかった。

「ま、優美ちゃ~ん痛いよ~」

   無意識の内に由佳の肩をガタガタと揺らしていた。

「ご、ごめんなさい、でも由佳。なぜ学生で決まりなの?」

「昨日の投稿した時間が学校が終わってすぐだったの~。動画なら録り溜め出来るけど歌は録り溜め出来ないでしょ~?」

   たしかにその通りだ。
動画は撮ったものを編集して流せばいい。
しかし、配信や歌は録り溜めすることが出来ない。
投稿する時間はリアルタイムだけだ。

しかし、時間だけで学生と思うのは違うのでは?
私はそう思っていた。

「時間帯だけで学生って言えるのかって顔してるね~?」

思っていた事が由佳にバレてしまった。

「よく分かったわね」

「顔に書いてあるも~ん!」

「そ、そう?」

…そんなに解りやすい顔してるの私

「時間帯だけじゃないよ~実は~噂だと暗神さん、最初にケンタって人しかフォロワーいなかったらしいから~」

「そうなの?」

   確かにそれは有力な情報かもしれない。
大体初めての人がフォローするのは友達だ。しかも、最初にその人だけということはこの学校かもしれない。あと分かることは内気な人なのかもしれない。
この学校は、アプリ使用者がかなり多い。にも関わらずフォローしてるのが1人という事は…

「その噂を探っていくしかなさそうね」

「探っていく~?」

「もちろん、暗神という人を探すのよ」

「優美ちゃ~ん…ストーカーなの~?」

「ち、違うわよ!どんなボイストレーニングを受けたらあんな声になるか知りたいの!」

「な~んだ、てっきり好きなのかと思ったよ~」

「なんでそうなるの!?」

   まったくこの子は…
でも絶対に見つけてみせる!
そしてその声の秘密を暴いてあげる!
実態が分からない正体不明のあいつを!
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