瞳を閉ざした兄の世界に見えているのはオレだけがいい！

・マママママフィア！（家族団らん）

クシュン

　
　さっきナホちゃんや優兄が言っていた通りだ。うちはかなり変な家族だと思う。


　“普通”とはちがうことばかり。


　シズクちゃんは優兄の養母で、ナホちゃんとシズクちゃんは一生の愛を誓い合ったパートナー。
　だから養子同士のオレと優兄は兄弟で、四人で一つの家族。

　こんな感じだから、世間に漠然と根付いている“幸せな家庭”のイメージは通用しない。


　うち以外には、どこにもない家族。
　でも、だからこそとても味わい深いような気がするんだ。


「この服はね、とある舞台衣装のボツ案なんだけど、わたしの今年一番のお気に入りでっ！　だからどーしても愛しのナホたんに着てほしくなっちゃって！　絶対絶対似合うって信じてたのんっ！！」

「シズがデザインしたってんのなら、アタシに似合って当然だろうが！　なぁ、千理！」

「……うん、まぁ」


　正直、母親がマフィアっぽくなって喜ぶ子供はいないと思う。


　──でも、まあ、オレが優兄にふわふわもこもこのヒツジさんパジャマを着てほしいとお願いするのと同じだろうから、気持ちは分かる。

　眠れない夜におもいっきり抱っこして、もふもふスリスリしてみたい。最終的には脱がしちゃうけど。


　オレのそんなスケベ妄想が伝わったらしい。その瞬間、優兄はクシュンと大きなくしゃみをした。