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・せんちゃん、はじめての仮病
これは現実
しおりを挟む「もー! 阿須崎くんったら! せんちゃんは具合悪いんだからね! もっと優しくしてあげて!」
ムッとした様子で入ってきたのは、お皿を持った優兄だった。濃厚な甘い香りが一緒に漂ってくる。きっと約束通りパイナップル持ってきてくれたのだろう。
──ん? ってことはもしかして現実?
「絶対に仮病やでコイツ。手とり足とり腰とりイロイロ看病してもらいたくて演技しとるに決まって──」
「阿須崎くんッ!」
いつもであればオレのアホ崎呼ばわりを注意してくる優兄だけど、今日はオレの絶対的な味方でいてくれるらしい。
こりゃ最高だ。よく分かんないけど夢のよう。
「おお怖っ。助けてナナフシ先生ッ」
アホ崎はふざけたようにナナフシを盾にしたけれど、いまにもポッキリしそうな細身が救いになるわけがない。
「あ……あ、えっと、あの……そのお皿、受け取ります。せんりくんに、渡します……」
前線に出たナナフシはオドオドしながらも、優兄からパイナップルの入った白いボウル皿を受け取った。
優兄が手をすべらせたら大変だと気を利かせてくれたのだろう。
余計なことしやがって。──でも、アホ崎に比べたらだいぶマシか。
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