50 / 693
4
4-2
しおりを挟む
青さんからの言葉に色々と言いたいことはあるけれど、まずはこれを言った。
「私、キスも前戯も指導されてないよ?」
「は・・・?」
ここまで驚いている青さんは初めて見るくらい驚いている。
「お兄ちゃんは、“ダメ秘書の望にはどうせ無理だろ”って言って、昔からやらせるつもりなかったよ?」
「いや・・・はあ?
じゃああの怪談話なんだったんだよ!!!
どんな嘘だよ!!!」
青さんが私の頬から手を離し、大きく項垂れた。
「バイト初日だった“あの日”、怪談話を聞いてマジで怯えていた俺の前に望がトボトボ歩いてたんだよ・・・!!!
何分も何時間も家に帰らず歩いてたんだよ・・・!!!
いや・・・もうさ、マジで可哀想過ぎて・・・!!!
まだこんなにちっこいのに好きでもない奴どころか指導員があんなキモい秘書のオッサンとか、“どんな奴とも対処出来るように”とかいう理由まで可哀想過ぎるだろって半泣きだった俺の気持ち・・・!!!!」
青さんは項垂れながら私のことを“可哀想”とばっかり言ってくる。
絶対に“青さんは大きいな”というくらいの意味ではない“可哀想”を。
「それなのにお前・・・っお前、友達が欲しいとか・・・・っっっ!!!
何だよそれ、そんなの俺がなってやるよと思うだろ!!!!
あんな恐ろしい“兄貴”じゃなくて俺が望の“ほぼ兄貴”になってやるって思うだろ、普通・・・!!!」
「なんか・・・お兄ちゃんがごめんね?」
謝った私に青さんは無言になり、それから小さく笑った。
「“お兄ちゃん”、か・・・。」
ゆっくりと顔を上げた青さんが私に優しい顔で微笑んだ。
「望のお兄ちゃんは強くて優しい兄貴だな。
あんなにちっこくて可愛い顔をしながら、妹のお前があんな仕事をしなくて良いように守ってきたんだろうな。
お嬢様だけじゃなく望のことも守る為にあんなに恐ろしい男になったのかもな。」
「“可愛い”でもなく“格好良い”でもなく“怖い”でもなく、お兄ちゃんのことをそう言ってくれたのは私の“友達”だけだったな。」
青さんに私は大きく頷き、笑った。
「うちのお兄ちゃんは“普通”のお兄ちゃんではないけど、どの分家の“秘書”よりも強くて優しい私の上司で、私のお兄ちゃんだよ。」
そう答えてから私は青さんに言う。
もっと昔から分かっていたけれど自分では認めたくないと思っていたことを。
「お兄ちゃんはいつも私のことを“可哀想”な子にするんです。」
「・・・いや、マジで何の嘘だよあいつ!!
半泣きだった俺の気持ち返せよ・・・!!」
「私のことを“可哀想な子”にしておいた方が色々と綺麗に進むんだと思います。」
「まあ、お前の身体は実際綺麗なままにしてくれてたから、そこはもう俺的にはめちゃくちゃ安心したし“ほぼ家族”の俺からすると感謝までしてる。
それにしても、俺に何であんな嘘ついたんだよ!!
あの怪談話は全部嘘だったってことか!?
・・・いや、バイト中に知った望のこと以外は“お兄ちゃん”からの研修通りだったか。」
青さんが難しい顔をしながら考えている様子になった。
だから私も考え付くことを言葉にしていく。
「青さんも知ってる通り、増田財閥は崩壊に向かってた。」
「あのまま崩壊させておけば良かったんだよ。
他の分家の秘書の奴ら、もっと本気で攻めてこいよ、な!?」
「その秘書達からの裏での攻撃を対処してくれてたのは、青さんもでしょ?」
「それはやるだろ、バイトだったし。
指導員の“お兄ちゃん”から指示されたらやるのが普通だろ。」
「青さんはそれが出来る人だとお兄ちゃんは判断したんだと思う。
分家の“主”達は自分達が財閥のトップに立とうとした。
本家では一人娘しか生まれず、増田ホールディングスの一般社員が婿養子になったことにより、それまで心の奥底に沈めていた“望み”が溢れ出てしまった。」
「俺の“望み”も今はソレに近い。
どの財閥にも俺には到底理解出来ない決まりが多すぎる。
その普通じゃない決まりのせいで自分の身体も人生も自分のモノではないとか、おかしいだろ・・・っ。」
青さんが昔と同じように怒った顔でその言葉を言う。
「そんなの、俺には到底理解出来ない・・・!!!」
「私が可哀想ですか?」
「可哀想だよ!!!」
「一平さんが可哀想ですか?」
「可哀想だろ・・・!?
あんな変な決まりのせいであいつは・・・」
言葉を切った青さんが何かを思い出したかのような顔になり、その視線が私の胸の辺りに動いた。
「お前、ボタンは・・・?
捨てた・・・?」
ボタンの所在を聞かれて私も思い出した。
私のおマ○コから抜き取った一平さんの第2ボタンは私の手の中に強く握られていた。
「望、あいつとケツでやった・・・?」
「するわけないじゃん・・・。」
「じゃあ、前戯は?」
「ないよ。」
「キスは?」
「ないよ。」
「頬にも?」
「うん。」
答えた私に青さんは苦しそうに笑った。
「バカだな、あんな決まりを守り続けて。
他の秘書達も分家の奴らも、異性の秘書がいる家はセックスしまくってただろ。
それでも秘書として働き続けてただろ。」
「だから今はもう秘書ではなくなった。
譲社長も社長になってからは他の分家も他の秘書も全員増田財閥から離された。」
「お前の“家”もその時に離れれば良かっただろ。
そしたら、俺は・・・俺は・・・」
「もう掃除の仕事は終わりにするのに?」
苦しそうな青さんの代わりに私が続けた。
「私、キスも前戯も指導されてないよ?」
「は・・・?」
ここまで驚いている青さんは初めて見るくらい驚いている。
「お兄ちゃんは、“ダメ秘書の望にはどうせ無理だろ”って言って、昔からやらせるつもりなかったよ?」
「いや・・・はあ?
じゃああの怪談話なんだったんだよ!!!
どんな嘘だよ!!!」
青さんが私の頬から手を離し、大きく項垂れた。
「バイト初日だった“あの日”、怪談話を聞いてマジで怯えていた俺の前に望がトボトボ歩いてたんだよ・・・!!!
何分も何時間も家に帰らず歩いてたんだよ・・・!!!
いや・・・もうさ、マジで可哀想過ぎて・・・!!!
まだこんなにちっこいのに好きでもない奴どころか指導員があんなキモい秘書のオッサンとか、“どんな奴とも対処出来るように”とかいう理由まで可哀想過ぎるだろって半泣きだった俺の気持ち・・・!!!!」
青さんは項垂れながら私のことを“可哀想”とばっかり言ってくる。
絶対に“青さんは大きいな”というくらいの意味ではない“可哀想”を。
「それなのにお前・・・っお前、友達が欲しいとか・・・・っっっ!!!
何だよそれ、そんなの俺がなってやるよと思うだろ!!!!
あんな恐ろしい“兄貴”じゃなくて俺が望の“ほぼ兄貴”になってやるって思うだろ、普通・・・!!!」
「なんか・・・お兄ちゃんがごめんね?」
謝った私に青さんは無言になり、それから小さく笑った。
「“お兄ちゃん”、か・・・。」
ゆっくりと顔を上げた青さんが私に優しい顔で微笑んだ。
「望のお兄ちゃんは強くて優しい兄貴だな。
あんなにちっこくて可愛い顔をしながら、妹のお前があんな仕事をしなくて良いように守ってきたんだろうな。
お嬢様だけじゃなく望のことも守る為にあんなに恐ろしい男になったのかもな。」
「“可愛い”でもなく“格好良い”でもなく“怖い”でもなく、お兄ちゃんのことをそう言ってくれたのは私の“友達”だけだったな。」
青さんに私は大きく頷き、笑った。
「うちのお兄ちゃんは“普通”のお兄ちゃんではないけど、どの分家の“秘書”よりも強くて優しい私の上司で、私のお兄ちゃんだよ。」
そう答えてから私は青さんに言う。
もっと昔から分かっていたけれど自分では認めたくないと思っていたことを。
「お兄ちゃんはいつも私のことを“可哀想”な子にするんです。」
「・・・いや、マジで何の嘘だよあいつ!!
半泣きだった俺の気持ち返せよ・・・!!」
「私のことを“可哀想な子”にしておいた方が色々と綺麗に進むんだと思います。」
「まあ、お前の身体は実際綺麗なままにしてくれてたから、そこはもう俺的にはめちゃくちゃ安心したし“ほぼ家族”の俺からすると感謝までしてる。
それにしても、俺に何であんな嘘ついたんだよ!!
あの怪談話は全部嘘だったってことか!?
・・・いや、バイト中に知った望のこと以外は“お兄ちゃん”からの研修通りだったか。」
青さんが難しい顔をしながら考えている様子になった。
だから私も考え付くことを言葉にしていく。
「青さんも知ってる通り、増田財閥は崩壊に向かってた。」
「あのまま崩壊させておけば良かったんだよ。
他の分家の秘書の奴ら、もっと本気で攻めてこいよ、な!?」
「その秘書達からの裏での攻撃を対処してくれてたのは、青さんもでしょ?」
「それはやるだろ、バイトだったし。
指導員の“お兄ちゃん”から指示されたらやるのが普通だろ。」
「青さんはそれが出来る人だとお兄ちゃんは判断したんだと思う。
分家の“主”達は自分達が財閥のトップに立とうとした。
本家では一人娘しか生まれず、増田ホールディングスの一般社員が婿養子になったことにより、それまで心の奥底に沈めていた“望み”が溢れ出てしまった。」
「俺の“望み”も今はソレに近い。
どの財閥にも俺には到底理解出来ない決まりが多すぎる。
その普通じゃない決まりのせいで自分の身体も人生も自分のモノではないとか、おかしいだろ・・・っ。」
青さんが昔と同じように怒った顔でその言葉を言う。
「そんなの、俺には到底理解出来ない・・・!!!」
「私が可哀想ですか?」
「可哀想だよ!!!」
「一平さんが可哀想ですか?」
「可哀想だろ・・・!?
あんな変な決まりのせいであいつは・・・」
言葉を切った青さんが何かを思い出したかのような顔になり、その視線が私の胸の辺りに動いた。
「お前、ボタンは・・・?
捨てた・・・?」
ボタンの所在を聞かれて私も思い出した。
私のおマ○コから抜き取った一平さんの第2ボタンは私の手の中に強く握られていた。
「望、あいつとケツでやった・・・?」
「するわけないじゃん・・・。」
「じゃあ、前戯は?」
「ないよ。」
「キスは?」
「ないよ。」
「頬にも?」
「うん。」
答えた私に青さんは苦しそうに笑った。
「バカだな、あんな決まりを守り続けて。
他の秘書達も分家の奴らも、異性の秘書がいる家はセックスしまくってただろ。
それでも秘書として働き続けてただろ。」
「だから今はもう秘書ではなくなった。
譲社長も社長になってからは他の分家も他の秘書も全員増田財閥から離された。」
「お前の“家”もその時に離れれば良かっただろ。
そしたら、俺は・・・俺は・・・」
「もう掃除の仕事は終わりにするのに?」
苦しそうな青さんの代わりに私が続けた。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる