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海の家に着き、早川は楽しそうにキョロキョロしている。


「わたし焼きそばは絶対食べたいです!
あと焼きとうもろこしと、かき氷も食べたいな~。
あ、でもかき氷はまた後で買ってもいいですか?」



「食べ物の話になったらまた元気になったな。」



そんな早川が愛おしくて、笑わずにはいられない。




海の家のレジに2人で並んでいると・・・






「すっげー良い女いる」と男の大きな声が聞こえた。




チラッと見ると、近くのテーブルで食事や酒を飲んでいる男数人のグループ。





そいつらがニヤニヤしながら、早川をジロジロと見ていた。






「本当だ、でも男連れじゃん。」


「見るだけならタダだからよく見ておくわ!」


「お前気持ち悪いな~!
でも、すげーエロい身体してんな!
顔は?」


「めっちゃ可愛かった!」





睨んでいる俺に気付かないまま、下品な笑い声が響く。
視界の隅に、早川が両手を胸の前に持ってきて、ほんの少しだけ俺に寄ってきたのが見えた・・・。




左腕を広げ、早川の腰に手を回し、ゆっくり早川を引き寄せる。





誰にも、見られたくなかった・・・。
俺が、何度も何度も思い浮かべた、いつか結ばれるその日が来ると信じて疑わなかった、早川のこんな裸みたいな姿を。





今日が終わったら、もう二度と見ることは叶わない、この姿を。





いつか、早川が好きな男に見せる、この姿を。





今は、俺以外の誰にも見られたくなかった。





今だけは・・・。





今だけは、俺の隣にいる・・・。





俺の左半身に早川の身体をピタリとつけ、早川の腰に回した手に力を込めた。





順番が来て注文しレジャーシートに戻る時は、男達の席は通らないよう歩いた。




海の家を出ても、俺の腕は早川の腰に回ったまま。
それを早川は黙って受け入れ、むしろ俺にどんどん身体をつけてきた。





そんな反応をされると、このまま早川を俺のものにしてしまいたい感情で出てきてしまう・・・。





レジャーシートに戻り、回っていた腕をすぐに放した。
さっきまで俺の左半身や左手に吸い付くようにくっついていた早川の身体は、離れた後もその感覚が抜けなかった。





「これ、掛けておけよ。」




バスタオルを広げ、ゆっくり肩に掛けた。
そして、さっき買っておいた物をビニール袋から取り出し渡す。




「これ買っといた。
そういえば結局塗れなかっただろ?」





ナンパ男達と話していた会話を思い出し、日焼け止めを買っておいた。
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