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最終話 離したくないな

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「今日も騒がしいわね」

 後日譚というやつだ。
 セモツとの戦いを終え、六ヶ国協定をより深く結んだ後、私は諸島リッケリで領主をすることになった。現在、絶賛領主生活を満喫している。

「ディーナお嬢さ……いえ奥様。お茶はいかがされます?」
「お願い」

 ソフィーが変わらずおいしいお茶を淹れてくれる。諸島リッケリは多くの国の人たちが係留し人々が行き交う。商売の拠点であることも多く、相変わらず活気がある場所だ。

「結局、スローライフとは程遠いなあ」
「リッケリ領はお気に召しませんか?」
「ううん、すごく気に入ってる」
「よかったです」

 バーツがソッケ王国に工芸品の素材をとりにいってしばらく、なんとそのままソッケに移住してしまった。
 しかもエーヴァと婚約してあっちの領地でうまくやっていくとか。その話は後後詳しくきくからよしだけど、一時的な臨時領主をしていた私はそのまま本ちゃんの領主になってしまった。
 大ウケしてたテュラが記憶に新しい。

「まあ結局性分ってやつなのよねえ」

 お茶を飲みながら遠くを見る。目的の方々が来た。
 同時、扉がノックされ入ってくる。

「ディーナ」
「うん、見えた。行こう、ヴォルム」
「ええ」

 今ではエスコートも当たり前になった。

「俺達が直接案内するということで、船内でお待ち頂いてます」
「ありがと」

 にしても、とヴォルムが私を見下ろして笑う。

「まさか本当に実現するとは思いませんでした」
「ここが始まりだよ」

 まだ私だけに会うのだから先がある。
 まあ七ヶ国会談もそう遠くないと思うけどね。

「セモツと外交対談なんてディーナにしか出来ない」
「そ?」

 国なんだから当然できるでしょというと「そう言うと思った」と笑われる。
 対六ヶ国戦後から今まで二度相対し、いずれも拳を交えるだけの戦闘しかなかった。三度目でやっと会談ができそうなんだから、それなりに苦労してると思う。

「仕事はほどほどに」
「そうね」
「仕事ばっかで俺に構ってくれないと辛いんで」
「この会談が終わったら時間とるわ」

 めいっぱい甘やかすと張り切っている。
 充分毎日いちゃついてると思うんだけどな? 毎日気持ち伝えてるし、抱きしめるし、キスもしてるよね?

「では前払いを」
「前払いってなに?」
「我慢する俺にご褒美の前払いをお願いします」

 いつの間にそういう制度になった。
 するとヴォルムはほんの少し見上げる様にして屈み、私に視線を合わせる。

「駄目?」
「……」

 ずるい人。私が許すって分かってやってるわね。

「……もう」
「ディーナ?」
「……いいよ」
「では」

 念の為、人がいないことを確認してヴォルムが屈む。
 近づく姿に瞳を閉じた。
 なんだかんだ言って私もヴォルムからの口付けを待っている。
 触れるととてもあたたかくて気持ち良いんだもの。

「ああ、離したくないな」
「し・ご・と」
「仕方ない」

 満足そうにしちゃって。
 そういうとこも好きになってる私も私かなあ。

「ヴォルムと一緒だと色んなものが倍ね」
「え?」
「一人でも幸せだけど、ヴォルムがいると何倍も幸せってこと」
「!」

 ヴォルムの顔が赤くなった。

「ディーナ!」

 こんな時に口説かないで下さいと切実に早口で怒られた。
 会談後、結局ご褒美にふんだんに甘やかされたのだから矛盾してると思う。
 なんてね。
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