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序章
prologue
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母は強い人だった。そして、誰よりも優しい人だった。
「いいか、幸大。お前がオメガであることは、隠したほうが身のためになるんだ」
俺がオメガであるということが発覚した際、母は俺の肩を震える手で掴んでそう言った。……その目はとても揺れていた。それは、未だによく覚えている。
「……僕みたいになるから。僕は、幸大には幸せに生きてほしい」
震えた声で、母はそう言った。そして、母は俺が高校生になってすぐの頃に、この世を去った。病死だった。
病気が発覚したときにはすでに手遅れで。治療を望まずに、母は残りの人生を楽しく生きることを選んだ。
「いいか、幸大。……本当に、秘密は守り通せ。……この人だったら絶対に信頼できる。そういう人に、出逢うまでは――」
それが、母の最期の言葉。……頭の中に今も、残っている。
母の最期の言葉通り、俺がオメガであるということは隠し通している。知っているのは、親友の男だけだ。
その親友はいつも俺に小言をぶつけてくる。
『幸大は、優しすぎるんだよ。あと、お人好し。ちょっとは困っている人を見捨てたほうがいい』
親友は笑ってそう言っていた。……多分、それは親友の経験に基づいたものなのだろう。
それに、オメガである以上は警戒心を人よりも強く持たなくてはならない。わかっている。わかっているんだけれど――。
どうしても、困っている人を見捨てられないのは、俺の悪い癖なのかもしれない。
――大学生のある日。俺は、きれいな金髪の男を、拾った。
「いいか、幸大。お前がオメガであることは、隠したほうが身のためになるんだ」
俺がオメガであるということが発覚した際、母は俺の肩を震える手で掴んでそう言った。……その目はとても揺れていた。それは、未だによく覚えている。
「……僕みたいになるから。僕は、幸大には幸せに生きてほしい」
震えた声で、母はそう言った。そして、母は俺が高校生になってすぐの頃に、この世を去った。病死だった。
病気が発覚したときにはすでに手遅れで。治療を望まずに、母は残りの人生を楽しく生きることを選んだ。
「いいか、幸大。……本当に、秘密は守り通せ。……この人だったら絶対に信頼できる。そういう人に、出逢うまでは――」
それが、母の最期の言葉。……頭の中に今も、残っている。
母の最期の言葉通り、俺がオメガであるということは隠し通している。知っているのは、親友の男だけだ。
その親友はいつも俺に小言をぶつけてくる。
『幸大は、優しすぎるんだよ。あと、お人好し。ちょっとは困っている人を見捨てたほうがいい』
親友は笑ってそう言っていた。……多分、それは親友の経験に基づいたものなのだろう。
それに、オメガである以上は警戒心を人よりも強く持たなくてはならない。わかっている。わかっているんだけれど――。
どうしても、困っている人を見捨てられないのは、俺の悪い癖なのかもしれない。
――大学生のある日。俺は、きれいな金髪の男を、拾った。
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