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1章.嘘つきたちの想い。
08.マヌケヅラオブザイヤー受賞
しおりを挟む飼い慣らされているわたしは、セキの舌に反応して、じゅわりと唾液をわかせてしまう。くすぐられるところ、さすられる場所エトセトラ、エトセトラ。セキの舌と体温が心地よくて応じてしまう。
口の中をかき混ぜるキスが、裏切られてムカついていた怒りを消してゆく。
甘え媚びた息がどうしようもなく零れる。
相手はセキなのに。お兄ちゃんの匂いをさせた、他人なのに。
舌と唇を貪っているあいだ、セキはわたしのアソコにそれをぐりぐりと押しつける。すっかり勃ち上がったクリは、無情にも押しつぶされて歓喜する。
「……ん、くぅ……っ」
「これだときゆのおっぱいが可愛がれないね」
知るかボケ。と言いたいのだが、わたしから出るのはふうふうと上がる息だけだ。
「破いちゃおうか」
「や、ぶ……?」
セキは軟弱なガリガリではないが、細身である。そう思うのは比べる相手がお兄ちゃんだからだ。ゴリラと人類を比べてはならない。いや、たとえお兄ちゃんがゴリラだとしても心優しき男前ゴリラだ。そして、わたしの愛は変わらない。
引っ張られたV字カットの襟首は、キッキッと軋む音がした。歯で切ろうとしてる? え、セキ? げっ歯類? それともオバチャン?
人類ならば文明の利器、はさみを使いたまえよ、きみ。はさみもまた、車輪と同じくカガク的な発明であり文明の御物だ。
カリッと大きく音を立てた後、ビリリリリッと布が破れる音が盛大にした。体温より低い空気がわたしの腹部をさあっと撫でる。
セキの力強さを見せられて(アイマスクをしているから見えないのだけど)、わたしはポカーンと口をあけた。マヌケヅラオブザイヤー受賞できる自信がある、ポカンっぷりだ。
「譲には新しいのを買ってあげよう」
「えっ、ていうか、は? え? 破いたの? ほんとに?」
確かにそんなに音もしました。衣服に守られていない現生人類のような気もします。けれどもね、セキ。あんたのどこにそんな力を隠していたんだ。
腕力で布を裂くって、何者? 隠れゴリラ?
「破いたよ。だから、こうしてきゆのおっぱいを触ってあげられる」
横乳のまるみをそっと押した骨ばった手は、愛でるよう円を描き、わたしの胸と気持ちを揺さぶりこねる。
「乳首もツンツンだね。触って舐めてあげようか」
触るな。もちろん舐めるな。そして噛むな。この言葉は、股をぐりぐりされながら、胸を触られ舐められ、しゃぶられて、消失してしまった。
「あ……、も、する、なぁっ!」
2年。セキとオナニーを頻繁にするようになって、たった2年。その短い間、セキによって感じるようにされてしまった。
どうすれば感じるか、ではない。セキが触ったところはわたしの性感帯になる。
「イッちゃいそうなんだ? きゆ、かわいい」
「よ、ば……ない、でぇ……っ」
きゆって呼ばないで。もちろん、歯の浮くような言葉を抜かすな。
「挿れてって、おねだりできたらあげるよ。でもどうしようかな。俺もそろそろ出したい。きゆの股を精液でベタベタにしたい気分」
よくわからない欲求だ。精液でベタベタにするのは股間の内部であって、外じゃない。
などと考えているが、そのぶっといのをぶち込まれて、早くイキたい。
おねだりするのもやぶさかでないが、相手は裏切り者のセキだ。
「い……いれ……。……ハァッ。だれが、言うもんか。入れたきゃ入れれば?」
身体は反して快楽に震えている。セキがきゅうっと指で乳首をつまみながら、肉の棒をショーツの隙間から差し込んできた。
「……──あ……、はっ。…………ぃ、っ、くぅ……っ」
乳首を噛まれた瞬間、目蓋の裏で火花が散る。一気に熱が噴き上げて、拘束された手首と足首の先が丸くなる。
絶頂にいるわたしをセキは揺さぶる。濡れて膨らんでいるであろう肉びらを使い、おのれの肉をぬちゅぐちゅ扱く。
素股であるにもかかわらず、わたしは絶頂と余韻を繰り返し、メス猫のようにただ声を上げる。
「…………っ、ふ……ぅっ」
切なげな低い声とともに勢いよく噴き出した精液は、股間をベタベタにすると宣言したにも関わらず、わたしの顎にびちゃっとかかった。
「……は。すっごい飛んだ」
そーですね。おかげでやたらと精液の匂いがします。
ムスッとしたい。怒鳴りたい。だが、繰り返した絶頂から急速に落ちたわたしになにが言える?
はひはひとした変な声しか出ていない。
セキがわたしの顎を拭くどころか、精液を首に塗りたくる。
「ちょ……、拭いてよ」
「俺の匂いがしてるの、いいでしょ?」
「よくない」
よくないオブよくないだ。今年のベストよくないザイヤーを受賞する勢いでよくない。
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