2.5次元の彼岸にて


人気Vチューバー「青鮫透」は、若くして若年性の白血病を患い、余命が僅かに迫っていた。

青鮫透の大ファンである豊島ブン太は、幼馴染の瀬名サツキが、まさか“青鮫透”であることには気づいていなかった。

サツキは青鮫透として、Vチューバーとして、誰かに夢に与えられる存在になりたいと思っていた。

ブン太はいじめられっ子だった。

宇宙マニアで、いつも“数学ノート”と呼ばれるノートを持ち歩いていた。

彼はホーキング博士に憧れていた。

ブラックホールの謎を解き明かし、いつか宇宙の秘密に迫ってみたい。

そう夢見ていた。


ブン太は学校には行かなくなっていた。

高校2年生の頃だった。

全国でも有数の進学校に通っていながら、いじめが原因で不登校になってしまっていた。

サツキは彼が学校に行かなくなっていることを友達から聞き、彼の家に行く。

ブン太とは対照的に偏差値の低い私立の学校に通い、ギャルとして高校生活を謳歌していた。

サツキの初恋の相手は彼だった。

今じゃ恋心も無くなっていたが、彼のことが気がかりだった。


「私がどうしてVチューバーになったか、ブン太は知ってるの?」


少年と少女。

最初で最後の夏が、2.5次元の狭間で動き始める。
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