鷹と幽霊
“今”が楽しければそれでいい。そんな楽天的性格を持つ大学三年の春川零史(はるかわ れいじ)には、誰にも知られていないある秘密があった。それは大人気女性向けBL小説の「ハニー&マスタード」通称ハニマスの作者のゴーストライターとして密かに作家活動をしていること。ある出来事がきっかけでゴーストライターとして誰にも口外せずに人気作品を執筆し続けていた零史だったが、どんなに作品が売れたところでその対価が自分に返ってくるわけじゃない理不尽な今の仕事をいつまで続けたらいいのか、生活そのものに諦めていた。
そんなある日、零史の家に見知らぬ男が現れ、突然、借用書を見せると今は亡き零史の父が多額の借金をしていると告げられた。そしてあろうことか、父は零史の名前で金を借りていたと言う。
「ハア? 俺は関係ねえだろ!」
「この名前はお前のものだろう。まあ……筆跡は明らかに父親のものだって分かるけどな。ヤクザはそういう細かいことは気にしねー。金さえ、きっちり耳揃えて返してもらえればな?」
返済に応じることはできないと抵抗する零史だったが、やがてヤクザの男に部屋に強引に上がり込まれ死を覚悟したその時。零史の家の本棚に並べられた本を見て、男は人が変わったように驚きの声を上げた。
「これ……霞レイの『ハニマス』か?すげー……全巻あんのかよ!お前もファンなのか、霞レイの!」
まさか借金取りのヤクザが、ガチファンで。
零史はこの場を逃げ切るためだけに切り札を使うのだった。
「お、おれ!実は、もう何年も霞レイのゴーストライターやってて!」
イチかバチかの生死を賭けた告白。
しかしこの迂闊な告白が、思いもよらなかった選択を迫られることに。
「ゴーストか……面白いな。なら、これからは俺の家で書けよ」
「……は?」
「借金800万。お前の小説と、お前自身のカラダで俺に返す。いいな?」
その日から零史に与えられることになったのは、普通とは程遠い、非日常の日々。
退屈は塗り潰され、かわりに知らなかった毒のような痺れる快楽を心とカラダに刷り込まれてゆく。
「――あと五百万。そういう約束だ。ちゃんと返せたらいつでもやめてやるよ。それまでは……しっかり働いてもらうぜ、ゴーストライター先生」
父の残した借金返済のため、強制的に龍桜会の若頭・柴山鷹斗(しばやま たかと)の子飼い、愛玩人形としての役割をするようになった零史は果たして、この鳥籠を抜け出し、無事に元の生活を取り戻せるのか――。
そんなある日、零史の家に見知らぬ男が現れ、突然、借用書を見せると今は亡き零史の父が多額の借金をしていると告げられた。そしてあろうことか、父は零史の名前で金を借りていたと言う。
「ハア? 俺は関係ねえだろ!」
「この名前はお前のものだろう。まあ……筆跡は明らかに父親のものだって分かるけどな。ヤクザはそういう細かいことは気にしねー。金さえ、きっちり耳揃えて返してもらえればな?」
返済に応じることはできないと抵抗する零史だったが、やがてヤクザの男に部屋に強引に上がり込まれ死を覚悟したその時。零史の家の本棚に並べられた本を見て、男は人が変わったように驚きの声を上げた。
「これ……霞レイの『ハニマス』か?すげー……全巻あんのかよ!お前もファンなのか、霞レイの!」
まさか借金取りのヤクザが、ガチファンで。
零史はこの場を逃げ切るためだけに切り札を使うのだった。
「お、おれ!実は、もう何年も霞レイのゴーストライターやってて!」
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しかしこの迂闊な告白が、思いもよらなかった選択を迫られることに。
「ゴーストか……面白いな。なら、これからは俺の家で書けよ」
「……は?」
「借金800万。お前の小説と、お前自身のカラダで俺に返す。いいな?」
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退屈は塗り潰され、かわりに知らなかった毒のような痺れる快楽を心とカラダに刷り込まれてゆく。
「――あと五百万。そういう約束だ。ちゃんと返せたらいつでもやめてやるよ。それまでは……しっかり働いてもらうぜ、ゴーストライター先生」
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