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5. 希望の糸
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翌朝、私は公爵家の馬車に揺られて学院に向かっていた。
逃げなきゃいけない。
でも、私一人では何も出来ない。
それなのに、頼れる味方はいない。
それに気付いてしまった今、私は何も考えられなくなっていた。
「リーシャ様、到着いたしました。……リーシャ様?」
「ごめんなさい、考え事をしていましたわ……。送ってくれてありがとう」
「どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」
御者さんに見送られて学院に入る私。
普段通りホームルームに入ると、先に来ていたミランダ様に声をかけられた。
「お久しぶりですわ」
「ええ、お久しぶりです。ご心配をおかけしました」
「一体何がありましたの……?」
「それは……まだ言えませんわ……」
本当のことを話せばミランダ様は手を貸してくれるはず。
そうと分かっていても、迷惑はかけられないし人目のあるこの場で話すわけにはいかないから。私は何も言えなかった。
でも、隠し事をしているのは辛くて。
「少し、人気のないところに来ていただけませんか?」
気が付けばそう口にしていた。
「分かりましたわ」
何かを察したような表情を浮かべ、頷くミランダ様。
私達はそのまま屋上へと繋がる階段へと向かった。
「それで、何がありましたの?」
「実は……あのイスティア公爵様と結婚させられそうなのですわ……」
「何ですって⁉︎ それはなんとしても無かったことにしないといけませんわ!
他には何かありませんの?」
「あとは家で使用人のような扱いをされていたくらいですわ……」
私がそう口にすると、ミランダ様は口をおさえて涙を浮かべていた。
「そんなことがありましたのね……。良かったら家に来ませんか?」
「そんなことしたらご迷惑なので……」
「公爵家の財力を舐めないで頂きたいですわ!」
ミランダ様が腰に手を当てて胸を張った時だった。
「リーシャ嬢、今の話は本当か?」
「レオン殿下……⁉︎ ええ、本当ですわ」
突然現れた殿下に一瞬驚いた声を上げてしまった私。殿下はそれを気にせず、こう呟いた。
「そうか……。私と婚約するというのはどうだ?」
「そんな……殿下にそこまでご迷惑をおかけする訳にはいきませんわ」
「私は君に焦がれているのだが?」
「えっ……?」
思わぬ告白に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
ミランダ様に助けを求めようと視線を向けたけれど、彼女は微笑んでいるだけで助けてくれそうになかった。
「殿下、私のどこが気に入ったのですか……?」
「まずは容姿だ。綺麗な赤い髪も、ブルーサファイアのように美しい瞳も、容姿全てに惚れた。
そして生徒会で一緒に仕事をしているうちに性格にも惚れてしまったようだ」
そして少し間をおいて、跪いたレオン殿下はこんなことを口にした。
「これ以上、この気持ちは言葉には出来ない。だがこれだけは言える。
ずっとそばにいたいんだ」
紛れもない告白。
切なくて。でも、嬉しくて。
不意に、瞼の奥が熱くなった。
この人ならきっと私のことを幸せにしてくれる。どうしてか分からないけど、そんな気がして。
「私も、側にいたいです……」
私はそんなことを口にしていた。
逃げなきゃいけない。
でも、私一人では何も出来ない。
それなのに、頼れる味方はいない。
それに気付いてしまった今、私は何も考えられなくなっていた。
「リーシャ様、到着いたしました。……リーシャ様?」
「ごめんなさい、考え事をしていましたわ……。送ってくれてありがとう」
「どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ」
御者さんに見送られて学院に入る私。
普段通りホームルームに入ると、先に来ていたミランダ様に声をかけられた。
「お久しぶりですわ」
「ええ、お久しぶりです。ご心配をおかけしました」
「一体何がありましたの……?」
「それは……まだ言えませんわ……」
本当のことを話せばミランダ様は手を貸してくれるはず。
そうと分かっていても、迷惑はかけられないし人目のあるこの場で話すわけにはいかないから。私は何も言えなかった。
でも、隠し事をしているのは辛くて。
「少し、人気のないところに来ていただけませんか?」
気が付けばそう口にしていた。
「分かりましたわ」
何かを察したような表情を浮かべ、頷くミランダ様。
私達はそのまま屋上へと繋がる階段へと向かった。
「それで、何がありましたの?」
「実は……あのイスティア公爵様と結婚させられそうなのですわ……」
「何ですって⁉︎ それはなんとしても無かったことにしないといけませんわ!
他には何かありませんの?」
「あとは家で使用人のような扱いをされていたくらいですわ……」
私がそう口にすると、ミランダ様は口をおさえて涙を浮かべていた。
「そんなことがありましたのね……。良かったら家に来ませんか?」
「そんなことしたらご迷惑なので……」
「公爵家の財力を舐めないで頂きたいですわ!」
ミランダ様が腰に手を当てて胸を張った時だった。
「リーシャ嬢、今の話は本当か?」
「レオン殿下……⁉︎ ええ、本当ですわ」
突然現れた殿下に一瞬驚いた声を上げてしまった私。殿下はそれを気にせず、こう呟いた。
「そうか……。私と婚約するというのはどうだ?」
「そんな……殿下にそこまでご迷惑をおかけする訳にはいきませんわ」
「私は君に焦がれているのだが?」
「えっ……?」
思わぬ告白に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
ミランダ様に助けを求めようと視線を向けたけれど、彼女は微笑んでいるだけで助けてくれそうになかった。
「殿下、私のどこが気に入ったのですか……?」
「まずは容姿だ。綺麗な赤い髪も、ブルーサファイアのように美しい瞳も、容姿全てに惚れた。
そして生徒会で一緒に仕事をしているうちに性格にも惚れてしまったようだ」
そして少し間をおいて、跪いたレオン殿下はこんなことを口にした。
「これ以上、この気持ちは言葉には出来ない。だがこれだけは言える。
ずっとそばにいたいんだ」
紛れもない告白。
切なくて。でも、嬉しくて。
不意に、瞼の奥が熱くなった。
この人ならきっと私のことを幸せにしてくれる。どうしてか分からないけど、そんな気がして。
「私も、側にいたいです……」
私はそんなことを口にしていた。
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