王子を身籠りました

青の雀

文字の大きさ
上 下
4 / 7

4.

しおりを挟む
 ザルツブルグ王国でのサバンドルの執務室をノックした。

 「セレンティー、どうした?アランに何かあったのか?」

 「ゲランが見つかりました。実は、アランのなじみの食堂で、ゲランが働いていたようです。ゲランは自分の素性などを一切忘れているようでしたが、連れて帰っていいかどうかを、ご相談にきました。」

 「なんだとぉ!ゲランが見つかった?ゲランを連れて帰ろう。早速手配をする。」

 サバンドル様は、そう言って、執務室からあれこれ、指図されました。

 隣国で、アランにゲランのことをどう話そうか迷っていた時、王族関係者だということだけ知らせて、父上が迎えに来られるので、それまでは、所在確認だけしていて欲しいと伝えた。

 一週間後、隣国で、ゲランを迎えに来たと言っても、帰ろうとしない。セレブさんいわく、

「ザルツブルグ王国で、自分は罪を犯したのか?」

 「もし、罪人でないのなら、このまま、ここにいたい。」

 セレンティーが目線の高さを合わせて、屈みこみ、「ゲラン、本当に私のことを覚えていないのかしら?アランのことも?わたくしたちは、幼い時からの婚約者で、学生時代もずっと一緒にいたのよ。あなたが、断崖から身を投げたと聞いた時は、びっくりして探したけど、遺体として上がらなかったわ。遺書もあったわよ。」

 遺書を見せたが、何も思い出せないようなそぶり。本当に忘れているのかどうかもわからない。

 とりあえず、着るものを着替えさせ、馬車に乗せた。

 「あなた、毒殺されそうになったことも覚えていないの?セレンティーとアランを殺そうとしてことさえも、忘れたふりをしているの?」

 そこまで言うと、わずかながら、ゲランは反応したが、毒殺、殺そうとした、という言葉に反応しただけかもしれない。

 「もういいわ。とにかく続きは、帰ってからにしましょう。」

 抵抗するゲランを、騎士団が押さえつけて、馬車に乗せた。
 ゲランが最初に持っていた身の回りの荷物とともに、ザルツブルグ王国へ戻ってきた。
 国王陛下と会わせたが、無反応であったので、やはり何も覚えていないというのは、本当のようだ。

 アランが立太子の礼を済ませているから、王太子で、ゲランは、前の王太子で王位継承権をアランに譲るという遺書を残して自殺した。アランから見ると、国王の息子ゲランは、実の父ではあるが、育ての父の兄の子になり、従兄妹になる。

 アランには、王族関係者と説明したことは、あながち間違えでないと言えるだろう。

 それからというもの、セレンティーは、ゲランが正気を取り戻すまで、懸命に看病した。もし、正気を取り戻したら、引っ叩いたぐらいでは、収まり切れない怒りがあるが、今は記憶を取り戻す手助けをしている。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:731pt お気に入り:581

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,043pt お気に入り:37

疑う勇者 おめーらなんぞ信用できるか!

uni
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:639pt お気に入り:247

極悪チャイルドマーケット殲滅戦!四人四様の催眠術のかかり方!

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:695pt お気に入り:35

転生チートは家族のために~ ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:41,323pt お気に入り:2,439

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:76,702pt お気に入り:2,054

処理中です...