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Ⅱ 王都にて

38 祝賀舞踏会3

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翔・・・主人公、高1十五歳
彩音・・主人公の妹、中1十三歳

ファネル・・・元公爵の御婆ちゃん、翔の骨董仲間でこの国の実力者
メリッサ・・・第ニ王女、今年十五歳
キャル(キャロライン)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、金髪の妖精の様な超絶美少女
アミ(アルミナス)・・・スノートの王族に近い貴族の娘、銀髪でキャルと同じく妖精の様な超絶美少女。

カルナ・・・王命による地方から送られる少年少女の半強制移住者の呼び名、疫病の影響で減ってしまった都市部の少年少女を補充し、文化や技術を継承することを目的にしている。

ーーーーー
(カケル)

「盛り上がっている処で悪いがの、カケルを儂等年寄りに貸してくれんかの」
「あれっ?祖父ちゃん、今日招待されてないんじゃないの」
「いいんじゃ、儂等は自主参加じゃ」
「あら、あら、あら、またあなた方係りの方に迷惑掛けて来たの」
「毎度のことで向こうも慣れておるわい」

骨董仲間のお爺さん達だ、どかどかと若い連中を押し退けて椅子に座る、若い連中は当たり前の様に席を譲る。
凄く自然で慣れた動作だ、親しみも混じっているので、たぶん祖父と孫の関係がほとんどなのだろう。

「カケルちゃん、これから献上品の披露が始まるんだけどねー、この人達ここから鑑定して野次飛ばす積もりなの。だから王室でも招待したがらないのよ」
「無料で鑑定してやるんだから感謝されても良いくらいじゃい」
「そーよ、勉強不足の連中にアドバイスをするだけじゃい」
「でも心配なのよねー、この人達は口が悪いから。この間はねー、怒った献上者と殴り合いなったのよ、カケルちゃんは強いから大丈夫だと思うけど」
「がっ、は、は、は、心配するなファネル、今日は孫達も揃ってるしの、そうだろおまえ達」
『おー』

何か殴り合いを楽しみにしてる雰囲気がある、心配と言いながらファネルさんもなんかわくわくしてる雰囲気がある、好奇心の強いお婆ちゃんだ。

ダンスが終わって彩音が何人か女性を引き連れて戻って来た、この人だかりに皆驚いていた。
それでも若い連中の特権だ、シーツを何枚か調達してきて女性も混じって車座で飲み始めた。

中央に白布覆われた高い台が用意され、そこの上で献上品が一つ一つ紹介される。

「カケル、おまえの品評は最後じゃぞ、最初に答えを教えられたんじゃ詰まらないからのー」

若い連中が目を丸くしている、うん、この年寄りは確かにこの国のトップの鑑定者達だ。

献上品の紹介が始まった。

「宝物級、古代ミリタロス文明、王族使用の皿」
「こらー、司会、馬鹿な紹介するな。王族使用の皿が宝物級の筈がないじゃろ、もっと勉強しろ」
「もっと良く見せて見ろ」

司会者がびびりながら白い手袋した手でこちらに皿を掲げて見せる。

「ほう、品は良いな」
「うむ、意匠が上品じゃ」
「司会、その皿の使用者は判っておるのか」

司会者が鑑定証らしき物を改める。

「口伝での王属使用認定となっております」
「こらー、その鑑定者を連れて来い、説教してやる」
「そうだ、いい加減な鑑定証を書くな馬鹿者」

最初から爺ちゃん達はエンジン全開だ、一品目で紹介が終わってしまいそうだ。

「ねえ、カケルちゃんどうなの」
「はい、王族使用で正解です。材質は王属使用の品と同じですし、裏の縁に消えかかった文字が掘ってあるんですが、癖が四十七代皇帝メリウスの筆跡と一致します。皇帝が自らへらを取って焼かせた品ですから近親者への贈答品でしょう。間違いなく国宝級です」

贈り主だろうか、立ち上がって拳を振り上げて喜んでいる。

「献上者、ネルヘス伯爵」
「うむ、奴は目が良いからの」

爺ちゃん達も拍手してる。

その後もこんな調子で献上品の紹介は荒れながら進行した、良い品も有るし悪い品もあった。
爺ちゃん達が大騒ぎして最後に俺が裁定する、そんな感じになってしまった。

そして俺が絶句する品が紹介された。

「国宝級、キューラス博士鑑定証付メルケスの壺」
「どいつじゃ、そんなまがい物掴まされた馬鹿は、一目見れば判るだろうが」
「キューラスの名を騙るな、博士がそんな物に鑑定証を書く訳なかろう。故人だからばれないとでも思ったか大馬鹿者」
「なんか呆れるよりも悲しくなるわい」
「売り付けた奴は大喜びで雲隠れしてるだろうさ」
「ああ、詐欺じゃな。騙される奴が大馬鹿者じゃが、軍にでも売った奴を追って貰え」

「ふざけるな、貴様等、これは由緒正しき壺だぞ」

離れた場所の浮島から声が上がり、男が立ち上がって拳骨を振り回している。

「なんじゃ、ネロか、大馬鹿者は」
「貴様は目が腐っておるのか、情けない」
「ふん、貴様らしいわい、そこの池で顔でも洗って出直せ」
「貴様は何度紛い物を掴まされれば懲りるんじゃ」

「うるさい、これは絶対に由緒正しい壺じゃ、今度こそ儂の目に間違いは無い。白金貨二百枚も払ったんだぞ」

『ほー』

この額を聞いて会場から溜息がもれた、日本円で二億円だ。

「カケルちゃん、引導を渡してちょうだい」
「えっ、ファネルさん、良いんですか」
「構わないわよ」
「はい、作成日は半年前、河岸で売っているお土産の壺です」

『えー』

「献上者、ネロ公爵」

公爵が顔を真っ赤にして俺を睨みつけている。

再び紹介が始まって、爺ちゃん連中は絶好調、評価が下がった人達は皆俺を睨みつけている、うー、損な役回りだ。
そして最後の一品、なにやら丁重に箱から出している。
そして台の上に厳かに置かれた、ん!なんじゃありゃ。
爺ちゃん連中は惚けた様な顔で見ている。

「最後の一品です、伝説級、フェアリーの羽の聖水入れ、特筆すべきは一点の濁りも無く継ぎ目も判らない程精巧に作られ、しかも蓋はなんと白竜の軟骨で作られております。伝説級いや超伝説級と言える逸品であります」
「カケルちゃん、あれは」
「とある国で、中身が入って二トト以下で売っている品物です」
「?」
「献上者、東部下マナ原討伐指揮者、カケル殿」

うん、さっき捨てて貰おうと渡したペットボトルだ。
拍手されてしっまった、仕方が無いから両手を頭の上でぶんぶん振って愛想を振りまいた。

ーーーーー
(メリッサ)

「キャル、あの男は金持ちなの」
「いえ、カルナで都に出て来た山の民ですから金はないかと」
「アミ、何故あいつがあんな宝物持ってるの」
「女王蟻の巣には財宝が積んであったと聞いております」
「大方価値も判らず献上したのでしょう、忠心を汲んで歓迎してあげましょうか。ムラノス!」
「はい、姫様、何かご用でしょうか」
「次の私のダンスの相手はあの男を指名して頂戴」
「姫様、あ奴は平民ですぞ」
「構わないわ、あの男に少し恥をかかせたいの、良いでしょ」
「御意に」

ムラノスがあの男の元に向かって行った。

「姫様、あの男は強いですよ」
「そうです、油断されない方が」
「大丈夫よ、ぎゃふんと言わせてやるから」
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