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 「陛下!陛下!大変でございます!」

 「おぅ!そなたの締め付けは絶品じゃのう!吸い込まれるようじゃ!中のザラザラした感触が堪らんのう……おっふ……」

 「陛下!陛下!お聞きください!大変な事態が起こっているのです……」

 「無粋な奴じゃ!お前には気遣いという言葉がないのか?もう半刻してから来い!すぐに出て行け!」

 「半刻も猶予はありません。民衆がこの王城に迫って来ているのです。民衆が手に武器を取り、この王城を目指しているのです!」

 「軍はどうした?宰相は何をしている?」

 「軍のほとんどは、しばらく前から聖女様に付いて行きましたよ?この国を守る兵士はほとんど居ません……宰相は公爵様に軍の権限が渡ってからは病気と称して一切国政の場に現れておりません。」

 「軍が居ない?公爵は何をしていたのだ?公爵を呼べ!今すぐにだ!宰相も叩き起こして来い!」

 「公爵様は、傍若無人に振る舞っていましたよ……陛下の後ろ盾を得たと言い……軍が瓦解した原因も全て公爵様に及ぶものです……宰相様が陛下に忠告に何度も参られた筈でしたが、讒言ざんげんと撥ね付けられたとかで……」

 「お前は、我にも原因があると申しているのか?家臣の分際で?」

 「ふん、家臣?まあ最期の忠義は果たしましたよ。煮られるなり、焼かれるなり、陛下のお好きになさいなせ!」

 報告に来た男は、後ろ足で砂を掛ける様に出て行った。

 「おい、待て!」

 出て行け!と言った側から待てと言う。陛下の指図といえば一事が万事この様な感じであった。

 「おい、女いつまで乗っかっておるのじゃ!早よう退かんか!」

 女を払いのけ、国王陛下は着る物も着ず、部屋を出て行く。

 ベランダから外を見ると、夜間にも関わらず、街の方向が明るい。燃えているのだ!

 下を見ると、松明を持った民衆が王城の近くまで押し寄せている。かなりの人数が居る!早く逃げなくては……

 「おい、誰か!誰かおらぬか?」

 国王陛下の必死な呼び掛けにも、応答する者は居ない……

 王城は、民衆の手によって火に包まれるのであった。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 「サラ様、大変です!フェリカ王国の宰相が参られております。」

 夜間突然の訪問であった。

 「宰相様が?通して!それと私の父ギルバートも呼んでください。急いで!」

 宰相が到着する前に、父ギルバートが駆けつけて来た。

 「どうした?サラ!こんな夜更けに何事だ?」

 「お父様ごめんなさい。フェリカ王国の宰相が突然来られたみたいなの!何の用かはまだ分からないわ!お父様は宰相と面識あるでしょう?私は初めてなんで、急いでお父様を呼んだの。」

 
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