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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中
158 村長との話
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昨夜決めた通り、道を知るアイガーが先頭になり、次にカズ最後がラスラの順に並び目的地の村まで走って向かう事になった。
ラスラは自分を含め、三人に身体強化の魔法を使った。
時折休憩しつつアイガーが道を確認して、三人は村へと向かい移動する。
そして日が暮れる頃には、村のある山の麓に来ていた。
昨日と同じく野宿をして過ごす事にして、三人は翌朝村へ入る事にした。
今夜はカズも見張りをすると言って、三人で交代にする事になった。(またアイガーが居眠りをするかもしれないからだ)
◇◆◇◆◇
翌朝は冷え込み、そのうえ曇天で今にも雪が降ってきそうな天気だった。
三人はスープで身体を温めてから、朝食もそこそこにして村へ向かった。
村から少し離れた場所に、獣やモンスターがよく現れ所があり、それを狙いに強力なモンスターが来るという事なので、万が一にも鉢合わせする可能性がある為、三人は村まで警戒しつつ歩いて向かう。
一時間程歩くと、細い道の先に目的の村が見えてた。
三人は村へ入ると、アイガーが近くに居た村人に村長の家を聞いた。
そして村長の家を訪ねると家の中に招き入れられて、そこで三人は村近くに現れる強力なモンスターの詳細を聞く事にした。
三人を代表して、アイガーが村長と話始めた。
「それで村長や村人達が見たモンスターってのは、どんな奴だったんだ?」
「わしが実際に見たのは、大きな影だけなんじゃが」
「じゃあその大きな影のモンスターを見たのは、いったい誰なんだ?」
「村の片隅で放牧をしている者達や、畑作業をしてる者達じゃったはずしゃ。この時期になってくると、食べる物を求めて山奥からイノボアが村の畑にやって来るんじゃが、それを追って『バンブースネーク』や『レッドヒヒ』の群れが現れるんじゃよ」
「どちらも凶暴な奴だな」
「ああ。それに少し離れた岩山からは、放牧の牛や山羊を狙って『ヘビーベア』が来るんじゃ」
「ヘビーベアもか! オレが以前に来た時は、そんな獣やモンスターは出なかったが、暖かい時期だったからか?」
「そうじゃ。暖かい時期だと山奥や森に、食べる物が多いんじゃが、寒くなるとその食べ物が少なくなるもんじゃから、獣やモンスターが村の近くに来るようになるんじゃ。だから今頃の時期になると冒険者を雇って、村の警備してもらってるんじゃ」
「じゃあ今、村に冒険者が居るのか?」
「いいや、今は来ておらん。あんた達が調べに来た大きな影のモンスターが、バンブースネークやヘビーベア等を捕食してくれるお陰で、最近は村の近くに現れないんじゃ」
「そうか。やはり事前に聞いていた情報通りか」
考えるアイガーの横から、ラスラが村長に尋ねた。
「前回大きな影を見たのは、いつ頃か覚えてますか?」
「えーっと、確か……九日前だったかのぉ」
「大きな影を何回見たか、覚えてますか?」
「わしが初めて大きな影を見たのが四十日程前で、この前のを合わせると三回は見たかのぉ」
「だとすると、そろそろ現れても良い頃ですねアイガーさん」
「そうだな。村長悪いが、どこか空き家があれば貸してくれないか?」
「構わんが、大きな影のモンスターを調査するだけで、討伐したりはしないんじゃろ?」
「それは場合によるな」
「討伐しないでもらえれば、ありがたいのじゃが。あの大きな影のモンスターは、不思議と牛や山羊は襲わないみたいなんじゃ」
「それは今までの話で、次来た時は村が襲われるかも知れないんだぞ!」
「……そうじゃな。すまぬ、今言った事は忘れてくれ。それと空き家ならこの先を少し行った所にある、小川の横に建つ家じゃから好きに使ってくれ」
「モンスター調査で村に居る間、ありがたく使わせてもらう。それとこれは別件なんたが、この近辺で盗賊や山賊は出たりしないか?」
「二十日程前に、ここよりも少し北に行った所にある、国境近い村に出たと聞いたのぉ。何でもその盗賊の中には、元冒険者だった者も居るとか」
「やはりか。盗賊の住み処らしき場所が、どこか聞いたことはないか?」
「すまんが聞いたことは無いのぉ」
「そうか、分かったありがとう」
村長と話を終え、三人は借りることの出来た空き家へと行く。
村長に言われ通り行くと小川があり、そのすぐ横にあるのが借りられた空き家だった。
空き家は部屋が三つあり、その内一部屋にベッドが一つとちょっとした棚があるだけで、他には何も無い。
野宿よりましなので、三人はありがたく使わせてもらうことにし、この後昼まで手分けして村人に、話を聞くことにした。
一時間程が過ぎ、昼頃になりカズとラスラが借りた家に戻ってきた。
「ラスラさん、何か大きな影の情報はありましたか?」
「残念なからありませんね。どの村人も大きな影が見えたら、すぐに家の中に入ってしまい、姿は見ていないと言ってました」
「俺の方も同じです」
「あとはアイガーさんが、有力な情報を聞けたかどうかですね」
「ではアイガーさんが戻るまで、少し待ちましょう。時間もお昼ですし、昼食の用意をします」
「何かお手伝いしましょうか? いつもカズさんばかりにやってもらっては」
「大丈夫です。支度と言っても、アイテムボックスから出すだけですから」
「昼食は何を用意してくれるのかしら?」
「パンと木苺のジャムで、軽い昼食にしようかと」
「木苺のジャムは嬉しいわ。それにカズさんの出してくれるパンは、焼きたてだから毎食楽しみよ」
「喜んでもらえて良かったです」
「やっぱりアイテムボックスを使える方を、仲間にしたいと思うのは当然ね。食事の事に関しても、すぐに温かい物を食べれるんですもの。この依頼が終わったら、私とパーティーを組まないかしら? カズさんが良かったらだけど」
ラスラがカズをパーティーに誘うと、カズが返答をする前に家の扉が開き、アイガーが戻って来た。
「二人共もう戻って来てたか。それで何か手掛かりはあったか?」
「それが俺やラスラさんが聞いた村人達は、大きな影が現れたらすぐに建物に入ってしまうようで、姿は見てないと言ってました。アイガーさんの方はどうでしたか?」
「少しだが情報があったぞ!」
「どんな事ですか?」
「村長の言っていた村の畑に行って、そこに居た村人に聞いたんだが、大きな影が現れる前に、冷たい風が吹いたらしい!」
「だとすると、やはり予測通り『ロックバード』でしょうか?」
「ロックバードが現れる前だと、風が吹いて気温が下がるんですか? ラスラさん」
「ロックバードが大きな翼で羽ばたくと、広範囲に風が巻き起こりますから、今の時期だとロックバードが羽ばたく事で、上空の冷えた空気が地上に下りくるので、村人が言っていた事と辻褄が合うと思います」
ラスラの言った事に、アイガーも同意した。
「ロックバードだとしたら、二人は戦った事はありますか?」
「討伐と言う訳ではないが、オレは数回戦闘した事はある」
「討伐じゃないのに戦ったんですか?」
「依頼の最中に現れたらから、倒さず追っ払っただけだが厄介だったぞ。相手は上空なうえにデカイし、翼で強い風を巻き起こすからな」
「ラスラさんはどうですか?」
「私は戦った事は無いけど、何度か見たことはあるわよ」
「襲っては来なかったんですか?」
「縄張りに入らなければ、襲ってくる事はそうないわ」
「縄張りなんて、どうやったら分かるんですか?」
「う~ん……知識と経験かしら」
「知識と経験ですか……(俺にはどちらも不足してるな)」
「とにかくだ、相手はロックバードの可能性が高いが、確定した訳じゃないから、そのつもりで気を引き締めてな」
「はい。油断大敵ですから」
「ええ、分かってるわ。もとよりそのつもりよ」
「良し。じゃあ昼食を済ませたら、一度そのモンスターが現れた現場に行ってみるか! 牛や山羊を放牧している村人にも、まだ話は聞いてないしな」
ラスラは自分を含め、三人に身体強化の魔法を使った。
時折休憩しつつアイガーが道を確認して、三人は村へと向かい移動する。
そして日が暮れる頃には、村のある山の麓に来ていた。
昨日と同じく野宿をして過ごす事にして、三人は翌朝村へ入る事にした。
今夜はカズも見張りをすると言って、三人で交代にする事になった。(またアイガーが居眠りをするかもしれないからだ)
◇◆◇◆◇
翌朝は冷え込み、そのうえ曇天で今にも雪が降ってきそうな天気だった。
三人はスープで身体を温めてから、朝食もそこそこにして村へ向かった。
村から少し離れた場所に、獣やモンスターがよく現れ所があり、それを狙いに強力なモンスターが来るという事なので、万が一にも鉢合わせする可能性がある為、三人は村まで警戒しつつ歩いて向かう。
一時間程歩くと、細い道の先に目的の村が見えてた。
三人は村へ入ると、アイガーが近くに居た村人に村長の家を聞いた。
そして村長の家を訪ねると家の中に招き入れられて、そこで三人は村近くに現れる強力なモンスターの詳細を聞く事にした。
三人を代表して、アイガーが村長と話始めた。
「それで村長や村人達が見たモンスターってのは、どんな奴だったんだ?」
「わしが実際に見たのは、大きな影だけなんじゃが」
「じゃあその大きな影のモンスターを見たのは、いったい誰なんだ?」
「村の片隅で放牧をしている者達や、畑作業をしてる者達じゃったはずしゃ。この時期になってくると、食べる物を求めて山奥からイノボアが村の畑にやって来るんじゃが、それを追って『バンブースネーク』や『レッドヒヒ』の群れが現れるんじゃよ」
「どちらも凶暴な奴だな」
「ああ。それに少し離れた岩山からは、放牧の牛や山羊を狙って『ヘビーベア』が来るんじゃ」
「ヘビーベアもか! オレが以前に来た時は、そんな獣やモンスターは出なかったが、暖かい時期だったからか?」
「そうじゃ。暖かい時期だと山奥や森に、食べる物が多いんじゃが、寒くなるとその食べ物が少なくなるもんじゃから、獣やモンスターが村の近くに来るようになるんじゃ。だから今頃の時期になると冒険者を雇って、村の警備してもらってるんじゃ」
「じゃあ今、村に冒険者が居るのか?」
「いいや、今は来ておらん。あんた達が調べに来た大きな影のモンスターが、バンブースネークやヘビーベア等を捕食してくれるお陰で、最近は村の近くに現れないんじゃ」
「そうか。やはり事前に聞いていた情報通りか」
考えるアイガーの横から、ラスラが村長に尋ねた。
「前回大きな影を見たのは、いつ頃か覚えてますか?」
「えーっと、確か……九日前だったかのぉ」
「大きな影を何回見たか、覚えてますか?」
「わしが初めて大きな影を見たのが四十日程前で、この前のを合わせると三回は見たかのぉ」
「だとすると、そろそろ現れても良い頃ですねアイガーさん」
「そうだな。村長悪いが、どこか空き家があれば貸してくれないか?」
「構わんが、大きな影のモンスターを調査するだけで、討伐したりはしないんじゃろ?」
「それは場合によるな」
「討伐しないでもらえれば、ありがたいのじゃが。あの大きな影のモンスターは、不思議と牛や山羊は襲わないみたいなんじゃ」
「それは今までの話で、次来た時は村が襲われるかも知れないんだぞ!」
「……そうじゃな。すまぬ、今言った事は忘れてくれ。それと空き家ならこの先を少し行った所にある、小川の横に建つ家じゃから好きに使ってくれ」
「モンスター調査で村に居る間、ありがたく使わせてもらう。それとこれは別件なんたが、この近辺で盗賊や山賊は出たりしないか?」
「二十日程前に、ここよりも少し北に行った所にある、国境近い村に出たと聞いたのぉ。何でもその盗賊の中には、元冒険者だった者も居るとか」
「やはりか。盗賊の住み処らしき場所が、どこか聞いたことはないか?」
「すまんが聞いたことは無いのぉ」
「そうか、分かったありがとう」
村長と話を終え、三人は借りることの出来た空き家へと行く。
村長に言われ通り行くと小川があり、そのすぐ横にあるのが借りられた空き家だった。
空き家は部屋が三つあり、その内一部屋にベッドが一つとちょっとした棚があるだけで、他には何も無い。
野宿よりましなので、三人はありがたく使わせてもらうことにし、この後昼まで手分けして村人に、話を聞くことにした。
一時間程が過ぎ、昼頃になりカズとラスラが借りた家に戻ってきた。
「ラスラさん、何か大きな影の情報はありましたか?」
「残念なからありませんね。どの村人も大きな影が見えたら、すぐに家の中に入ってしまい、姿は見ていないと言ってました」
「俺の方も同じです」
「あとはアイガーさんが、有力な情報を聞けたかどうかですね」
「ではアイガーさんが戻るまで、少し待ちましょう。時間もお昼ですし、昼食の用意をします」
「何かお手伝いしましょうか? いつもカズさんばかりにやってもらっては」
「大丈夫です。支度と言っても、アイテムボックスから出すだけですから」
「昼食は何を用意してくれるのかしら?」
「パンと木苺のジャムで、軽い昼食にしようかと」
「木苺のジャムは嬉しいわ。それにカズさんの出してくれるパンは、焼きたてだから毎食楽しみよ」
「喜んでもらえて良かったです」
「やっぱりアイテムボックスを使える方を、仲間にしたいと思うのは当然ね。食事の事に関しても、すぐに温かい物を食べれるんですもの。この依頼が終わったら、私とパーティーを組まないかしら? カズさんが良かったらだけど」
ラスラがカズをパーティーに誘うと、カズが返答をする前に家の扉が開き、アイガーが戻って来た。
「二人共もう戻って来てたか。それで何か手掛かりはあったか?」
「それが俺やラスラさんが聞いた村人達は、大きな影が現れたらすぐに建物に入ってしまうようで、姿は見てないと言ってました。アイガーさんの方はどうでしたか?」
「少しだが情報があったぞ!」
「どんな事ですか?」
「村長の言っていた村の畑に行って、そこに居た村人に聞いたんだが、大きな影が現れる前に、冷たい風が吹いたらしい!」
「だとすると、やはり予測通り『ロックバード』でしょうか?」
「ロックバードが現れる前だと、風が吹いて気温が下がるんですか? ラスラさん」
「ロックバードが大きな翼で羽ばたくと、広範囲に風が巻き起こりますから、今の時期だとロックバードが羽ばたく事で、上空の冷えた空気が地上に下りくるので、村人が言っていた事と辻褄が合うと思います」
ラスラの言った事に、アイガーも同意した。
「ロックバードだとしたら、二人は戦った事はありますか?」
「討伐と言う訳ではないが、オレは数回戦闘した事はある」
「討伐じゃないのに戦ったんですか?」
「依頼の最中に現れたらから、倒さず追っ払っただけだが厄介だったぞ。相手は上空なうえにデカイし、翼で強い風を巻き起こすからな」
「ラスラさんはどうですか?」
「私は戦った事は無いけど、何度か見たことはあるわよ」
「襲っては来なかったんですか?」
「縄張りに入らなければ、襲ってくる事はそうないわ」
「縄張りなんて、どうやったら分かるんですか?」
「う~ん……知識と経験かしら」
「知識と経験ですか……(俺にはどちらも不足してるな)」
「とにかくだ、相手はロックバードの可能性が高いが、確定した訳じゃないから、そのつもりで気を引き締めてな」
「はい。油断大敵ですから」
「ええ、分かってるわ。もとよりそのつもりよ」
「良し。じゃあ昼食を済ませたら、一度そのモンスターが現れた現場に行ってみるか! 牛や山羊を放牧している村人にも、まだ話は聞いてないしな」
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