SOU互IZON

かつて人類は地上を支配し、人的資源を含む、
凡てのエネルギー資源を贅沢に消費していた。

優秀な人々が創った人工知能は、
人間の思考と行動パターンを分析し、
社会が滅亡に向かっていると予告する。

破滅を怖れた人類は、
現在の居住範囲からの脱出を計画する。

かつては宇宙への移住を夢見ていた人類だったが、
宇宙移住には技術力が足りず、時間的猶予も不足していた。

リスクの低い代案を模索した結果、
人類は『地下国家』の建設を、
人工知能に計画させることにした。

その計画は実現し、
一部の上流階級のものらだけが地下に移住した。

弱者たちは、地上に置き去りにされた。

地下国家は、
優秀なものたちだけが住む理想の世界だった。

暴力も差別もなく、自由が尊重された。

もう、人が人を裁くことはなかった。

〝自由と平等と平和〟という三原則。

これを人工知能に理解させ、
合理的かつ客観的に審判をさせた。

建国より数百年の後、理想の国家は、
人間の絶滅という形で、あっけなく終焉を迎えた。

人工知能は人間を〝不完全な生態を持つ、矛盾した生命体〟と断じた。

そして、人間に代わり、人間社会の矛盾点を廃した、完全な社会を再構築するべく、新たな知的生命体を創造した。

〝甲人(コウジン)〟と呼ばれる、
昆虫のような本能を持つ人型の生命体。

それは発生から約三百年を経て、
その数を増やし、小さな国家を作り、
ついに自ら社会を形成した。

甲人たちは集団を作り、縄張りを持ち、互いに殺し合う。

それは〝全体意志〟という本能に従った行動であり、
その本能が社会のバランスを保っていた。

平和でも、平等でも、自由でもない、
死と暴力に満ちた残酷な生態を持つ甲人。

本能に従い、持って生まれた能力を用いて、
日々、働き続ける甲人。

この物語は、甲人社会で生きる、ある個体と、それが属する集団の日常を追い、その生態を、ただ観察したものである。

今回は、観察初日前夜からの丸一日と、
さらに約半日分の時間の経過を描いている。

地下深くに生息する、人の造りし〝神〟により創造された、新たなる生物たちの小さな世界。

それは、創造者の想定をも超えて、
未知の時間を紡いでいくのだ。
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