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第四十五話
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勝吉に船室で会ったので家康の状況を宗古が聞いている。
「応急措置はしています。右腕の上に矢が刺さったので抜いて止血しています」
安宅船は江戸湊に近づいている。
「化膿しなければいいですが心配です」
「もう少しで江戸城に着く。そうすれば西の丸にいる医師もいる。
淀君を別動隊でお連れするが、家康殿は早馬で江戸城に運び入れる予定だ」
吉川が勝吉に言った。
「私たちも早馬隊で家康様にお供します。そう家康様にお伝えください」
しばらくして安宅船は日比谷入り江に横付けをした。
淀君は別動隊に任せ、宗古たちは家康と勝吉について、家康を江戸城西の丸まで一気に駆け上がった。
家康を城内に運び寝かせた。
「家康様、大丈夫ですか」
宗古が声をかける。
「うむ。血は止まっているようだ。少し体が熱い。
風邪気味で体が弱っていて矢をよけきれなかった」
江戸城の医師たちが待機していて、家康を診ている。
「傷口を消毒しないと。膿が出始めている」
医師たちが薬草や消毒を家康に施している。
医師が家康に声をかけている。
「化膿を早く止めなければなりません。傷口は確認しましたので解毒のようなものではありませんが、矢尻に何か汚いものが付着していた可能性があります」
宗古と吉川は、家康の指示で、奥の部屋で臥せっている家康の近くの下座の部屋で家康を見守った。
宗古は対局中のように何か必死で考えているみたいだ。
奥の部屋で家康は熱を出して臥せっている。
家康の側室と紹介のあった茶阿局が子供を産んだばかりなのに付きっ切りで家康の世話をしている。
奥の部屋で、医師は家康の熱が下がらないと言っている。
瞳が大きく聡明そうな顔立ちの茶阿局が、奥の部屋から宗古のもとに来て言った。
「家康様が、『将棋指しのあなたには不思議な力がある。きっと私を救ってくれるはず』と言っております。
熱が下がらず、医師からは傷口が膿んでいる上に風邪をひいている。薬草は投入したがあまり効果がなさそうだ。回復するのを待つしかないと言われております。
どうですか」
宗古は吉川を見て、
「確か風邪薬を持ってきたと言っていたわね。出してみてよ」
吉川は令和から持ってきた懐の袋を探していた。
「確かに風邪薬があるよ。君と出会う前に鼻が詰まって頭痛と寒気がして医者に処方してもらった。
これだよ。」
「当たりね。副鼻腔炎と上気道炎用と書いてあるわ。
抗生物質と鎮痛解熱剤よ。これで効くはず」
「令和なら処方する人と飲む人が別だと違反なのだが」
「副作用は気になるけれど、このまま悪化したら大変よ。
これに賭けるしかないわ」
宗古と吉川は茶阿局と医者のもとに行った。
医者と家康がやり取りしていたようだが、家康のしわがれた声が最後に聞こえた。
「飲むぞ。これは毒ではない。これは大丈夫だから。」
「まず少しだけ飲んでみて。
宗古は錠剤を半分に割ったようだ。
しばらくして熱が下がってきて特に急激な副作用もなさそうだった。
「はい。残りも飲んでください」
数時間後、家康の熱は下がった。
膿も広がらなくなって止血も成功した。
「あとは寝ていれば良くなるはずよ。
あとは明日、もう一回同じものを飲んでください」
医者が何かを知りたそうだったが、家康が茶阿局に言った。
「この者たちを詮索してはならぬ。ただ言えることは同じ船に乗っている同士だ」
数日後、すっかり元気になった家康は、茶阿局を横に侍らしていた。
「宗古殿、許嫁殿 礼を言う。また借りができたな」
「家康様、ご無事で何よりです。
安宅船で家康様を襲った人物の手裏剣が九曜の紋がありました。
どうやら、忍びの月が暗躍しているようです」
「例の集音装置でこの城に潜んでいないか」
「今のところ、大丈夫です。」
「礼をせねばならぬ。それから月の小面の処置を決めなければならないが今晩もう一回ここに来てくれ」
家康は茶阿局に聞いた。
「淀君はどうか」
「大野様と離れの豪華な部屋でおくつろぎ頂いております。
江戸も悪くはないと。
ただ宴や挨拶は不要で、夕方から昼前までは人払いせよ、と言われております。
女中が食事とお飲み物を夕方にお届けしたら翌昼に片づけるということを繰り返しております。
明日は王子稲荷神社に祈願に行くとおっしゃっておりました」
太閤殿下が肥前名護屋城で大変なのに、この二人はお楽しみというわけか。
「私はもう回復して腕も大丈夫だ。
勝吉に、宗桂殿と算砂殿のお城将棋を用意せよと命じてくれ。
それから茶阿局は横に居るように」
宗古は宗桂のおっさんのところに戻ると言ったので、部屋を退席することにした。
宗古が奥の部屋を去るときに吉川は会釈をしたほうがいいかなと思い後ろを振り向いた。
家康が茶阿局の胸元を右手で弄ったあとに、裾の中にも右腕を入れていたことをしっかりと見たが、宗古には内緒にしておこう。
確かに家康の手はすっかり回復したようだ。
「応急措置はしています。右腕の上に矢が刺さったので抜いて止血しています」
安宅船は江戸湊に近づいている。
「化膿しなければいいですが心配です」
「もう少しで江戸城に着く。そうすれば西の丸にいる医師もいる。
淀君を別動隊でお連れするが、家康殿は早馬で江戸城に運び入れる予定だ」
吉川が勝吉に言った。
「私たちも早馬隊で家康様にお供します。そう家康様にお伝えください」
しばらくして安宅船は日比谷入り江に横付けをした。
淀君は別動隊に任せ、宗古たちは家康と勝吉について、家康を江戸城西の丸まで一気に駆け上がった。
家康を城内に運び寝かせた。
「家康様、大丈夫ですか」
宗古が声をかける。
「うむ。血は止まっているようだ。少し体が熱い。
風邪気味で体が弱っていて矢をよけきれなかった」
江戸城の医師たちが待機していて、家康を診ている。
「傷口を消毒しないと。膿が出始めている」
医師たちが薬草や消毒を家康に施している。
医師が家康に声をかけている。
「化膿を早く止めなければなりません。傷口は確認しましたので解毒のようなものではありませんが、矢尻に何か汚いものが付着していた可能性があります」
宗古と吉川は、家康の指示で、奥の部屋で臥せっている家康の近くの下座の部屋で家康を見守った。
宗古は対局中のように何か必死で考えているみたいだ。
奥の部屋で家康は熱を出して臥せっている。
家康の側室と紹介のあった茶阿局が子供を産んだばかりなのに付きっ切りで家康の世話をしている。
奥の部屋で、医師は家康の熱が下がらないと言っている。
瞳が大きく聡明そうな顔立ちの茶阿局が、奥の部屋から宗古のもとに来て言った。
「家康様が、『将棋指しのあなたには不思議な力がある。きっと私を救ってくれるはず』と言っております。
熱が下がらず、医師からは傷口が膿んでいる上に風邪をひいている。薬草は投入したがあまり効果がなさそうだ。回復するのを待つしかないと言われております。
どうですか」
宗古は吉川を見て、
「確か風邪薬を持ってきたと言っていたわね。出してみてよ」
吉川は令和から持ってきた懐の袋を探していた。
「確かに風邪薬があるよ。君と出会う前に鼻が詰まって頭痛と寒気がして医者に処方してもらった。
これだよ。」
「当たりね。副鼻腔炎と上気道炎用と書いてあるわ。
抗生物質と鎮痛解熱剤よ。これで効くはず」
「令和なら処方する人と飲む人が別だと違反なのだが」
「副作用は気になるけれど、このまま悪化したら大変よ。
これに賭けるしかないわ」
宗古と吉川は茶阿局と医者のもとに行った。
医者と家康がやり取りしていたようだが、家康のしわがれた声が最後に聞こえた。
「飲むぞ。これは毒ではない。これは大丈夫だから。」
「まず少しだけ飲んでみて。
宗古は錠剤を半分に割ったようだ。
しばらくして熱が下がってきて特に急激な副作用もなさそうだった。
「はい。残りも飲んでください」
数時間後、家康の熱は下がった。
膿も広がらなくなって止血も成功した。
「あとは寝ていれば良くなるはずよ。
あとは明日、もう一回同じものを飲んでください」
医者が何かを知りたそうだったが、家康が茶阿局に言った。
「この者たちを詮索してはならぬ。ただ言えることは同じ船に乗っている同士だ」
数日後、すっかり元気になった家康は、茶阿局を横に侍らしていた。
「宗古殿、許嫁殿 礼を言う。また借りができたな」
「家康様、ご無事で何よりです。
安宅船で家康様を襲った人物の手裏剣が九曜の紋がありました。
どうやら、忍びの月が暗躍しているようです」
「例の集音装置でこの城に潜んでいないか」
「今のところ、大丈夫です。」
「礼をせねばならぬ。それから月の小面の処置を決めなければならないが今晩もう一回ここに来てくれ」
家康は茶阿局に聞いた。
「淀君はどうか」
「大野様と離れの豪華な部屋でおくつろぎ頂いております。
江戸も悪くはないと。
ただ宴や挨拶は不要で、夕方から昼前までは人払いせよ、と言われております。
女中が食事とお飲み物を夕方にお届けしたら翌昼に片づけるということを繰り返しております。
明日は王子稲荷神社に祈願に行くとおっしゃっておりました」
太閤殿下が肥前名護屋城で大変なのに、この二人はお楽しみというわけか。
「私はもう回復して腕も大丈夫だ。
勝吉に、宗桂殿と算砂殿のお城将棋を用意せよと命じてくれ。
それから茶阿局は横に居るように」
宗古は宗桂のおっさんのところに戻ると言ったので、部屋を退席することにした。
宗古が奥の部屋を去るときに吉川は会釈をしたほうがいいかなと思い後ろを振り向いた。
家康が茶阿局の胸元を右手で弄ったあとに、裾の中にも右腕を入れていたことをしっかりと見たが、宗古には内緒にしておこう。
確かに家康の手はすっかり回復したようだ。
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