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第三十四話 わたしは決断する

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 今日の朝、わたしはまず、ジゼルアさんのわたしに対する意識を変えてもらう努力をした。

 まだまだわたしの変化が信じられないところはある様子。

 しかし、その内、信じられるようになるだろう。

 わたし付の侍女に、十二歳の時になってから、最初はドジが多かったのだけれど、今では優秀な侍女に成長してきている。

 わたしと心が通じ合うようになれば、「悪役令嬢」ではなく、ボードリックス公爵家にふさわしい令嬢になろうとしているわたしの力になってくれるはず。

 わたしは、朝食をとった後と昼食をとった後の時間で、これからの行動について、検討を重ねていった。

 まずしなければならないのは、ルシャール殿下とわたしの婚約を、オディナティーヌとの婚約に変更することだ。

 正式には、婚約者候補ということになる。

 しかし、ボードリックス公爵家で選定された婚約者候補は、よほどのことがない限り、ルシャール殿下の婚約者になっていく。

 一度目の転生の時のことを思い出してからは、すぐにでもしなければならないと思った。

 しかし、検討を重ねていく内に、逆に、ルシャール殿下との結婚を進めてもいいのでは? という気持ちも湧いてくるようになってきた。

 お父様が推進した結婚であるということが大きな理由だ。

 もともと、王室の方は、リディテーヌでもオディナティーヌでも、ボードリックス公爵家の令嬢ということであれば婚約者候補はどちらでもいいと言っていた。

 二人とも妃にふさわしいと言う評価は、王室より受けているということだった。

 わたしからすると、オディナティーヌは、礼儀作法について、わたしが厳しく指導したとはいっても、まだまだ足りないところが多かった。

 オディナティーヌは意外と堅苦しいことを嫌がるタイプだ。

 その点では、妃にふさわしいと言えるかどうかは、難しいところがあると思っている。

 でも王室の方では、そこのところはどうにかなると思っているようだ。

 今回の婚約は、王室とボードリックス公爵家の家どうしのものだ。

 ルシャール殿下は特にリディテーヌやオディナティーヌに思い入れがあるわけではない。

 今の時点では、わたしがボードリックス公爵家の婚約者候補になっている。

 それをオディナティーヌに変更しても、王室としては気にすることはない。

 ただ、それはそれで、わたしたちの人格の違いを重んじてはいない気がするので、わたしとしては、あまりいい気持ちはしないのだけれど……。

 しかし、お父様の方は、リディテーヌとしての記憶になるのだけれど、リディテーヌがルシャール殿下の妃になることを、リディテーヌの幼い頃から強く望んでいた。

 その望みに逆らうことになるので、わたしとしては言いづらいところはどうしてもある。

 これからの人生は、わたしが「悪役令嬢」的な態度を取らなければ、ルシャール殿下から婚約を破棄されたり、処断をされたりすることはないはずだとは思っていた。

 その為、このままルシャール殿下の婚約者候補になり、婚約してもいいのでは、という方向に気持ちが傾きかけた。

 しかし、わたしはすぐに思い直す。

 ゲームでは、ルシャール殿下とオディナティーヌが結婚することが、ハッピーエンドルートの一つになっている。

 わたしが、「悪役令嬢」にならなかったとしても、オディナティーヌの魅力によって、ルシャール殿下は心を奪われてしまい。結局のところ処断はされないにしても、婚約を破棄される可能性は強いのでは?

 そういう思いがどんどん大きくなっていく。

 それにわたしは、オクタヴィノール殿下の方が好みだし、より強く推してきた。

 オクタヴィノール殿下と結婚して幸せになりたい気持ちの方が強い。

 お父様の意志には逆らうことになる。

 しかし、オディナティーヌがルシャール殿下の婚約者になれば、継母も喜ぶし、オディナティーヌも喜ぶ。

 わたしがルシャール殿下の婚約者になるよりも、はるかにボードリックス公爵家の中は安定すると思う。

 そして、お父様は娘であるわたしの幸せを願っているはず。

 わたしがルシャール殿下と婚約することを強く断ろうとする意志があることを認識すれば、いくらなんでもそれ以上は勧めてくることはないだろう。

 嫌々ながら婚約するとなれば、わたしが幸せになれる可能性が小さくなる。

 お父様は、そのことを理解できると思うからだ。

 わたしは決断をした。

 今日の夕方、お父様に、二人だけで会う時間を作ってもらい、

「ルシャール殿下との婚約者候補は、わたしではなくて、オディナティーヌにしてもらう」

 という提案をする。

 お父様は、それを断るかもしれない。

 しかし、わたしが一生懸命説得すれば、きっと受け入れてくれると思う。

 いや、説得しなければ、今後のわたしの人生は開けてこない。

 なんとしてでも、説得しなければならない!

 わたしは、そう思うのだった。
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