43 / 102
第四十三話 ルクディアさん
しおりを挟む
今、オクタヴィノール殿下と一番確実に会えそうなところ。
それは、わたしが十八歳になって以降に開催される王室の舞踏会。
わたしは今の三月時点で十七歳。
五月で十八歳になる。
わたしは、もともと十八歳からの参加予定だった。
わたしが参加しようと思っているのは、七月開催の舞踏会、
後四か月を切っているところだ。
この間に、この学校内での評判を良くしておかなくてはいけない。
今の状況では、これから努力しても間に合うかどうか、わからない。
わたしの出発点である人生を振り返ってみても、やや短気な性格なところがあった。
心穏やかな性格とまではいえなかった。
体が弱かったことが、心を穏やかにする上での妨げになっていたことが、理由としてはあげられる。
もちろん、転生一度目や、今までの人生よりはましだとは言える。
ただ、これからの人生においては、もともとわたしがもっているやや短気な性格が、表面に出てくると、
「結局リディテーヌ様は傲慢で怖い人」
と思われてしまい。評判を良くしようとする努力が無駄になってしまう可能性がある。
そう思うと、前途は厳しいもののように思える。
気が滅入りそうになってくる。
しかし、わたしはすぐに思い直す。
わたしは今を生きている人間だ。
今までの転生、そして今、までの人生がどうであっても、これからは、心穏やかな人生を歩んでいかなくてはならない。
わたしがそう思っていると、
「リディテーヌさん、ごきげんよう」
という声が聞こえてくる。
ブルトフィーノ公爵家令嬢ルクディアさんだ。
取り巻きの女性を二人従えている。
「あら、今日も一人でここに座っておられますの? 周囲の方々は楽しそうにおしゃべりをしているというのに。相変わらず人望がなくお気の毒な方ですわ。わたしはこうして、いつも二人を連れておりますのに」
ルクディアさんはそう言うと、わたしをあざ笑った。
取り巻きの二人も、
「ルクディア様に比べて、なんとかわいそうなことでしょう」
と一緒になって笑う。
それだけではなく、ルクディアさんは。
「わたしはあなたの何倍も美しい。この王国でも指折りの存在と言っていいわ。そのことをきちんと認めなさい。そ
して、今すぐにわたしの軍門に降りなさい」
と言ってくる。
二人も
「ルクディア様は誰よりも美しいお方。そのお方とあなたを比べること自体、おそれ多いこと。ルクディア様がおっしゃるように、今すぐ軍門に降るべきだわ」
と言ってきた。
学校では毎日、朝、こうしてルクディアさんたちはリディテーヌに嫌味を言いにきていた。
今までのリディテーヌだと、
「わたしは一人でいるのが好き。それで毎日十分満足している。それをあなたに言われる筋合いはないわ。それに、美しさはわたしの方がはるかに上なの。わたしほどの美しさを持った女性は、そう多くはないでしょうね」
と言い返し、ルクディアさんたちをあざ笑っていた。
その度に、ルクディアさんたちは腹を立てる。
そして、ルクディアさんは、
「わたしこそ美しい!」
と言い返すのだけれど、それに対しリディテーヌは、
「わたしの方こそ美しい!」
と言い返して、応戦するということを続けてきた。
今までのリディテーヌであれば、言い返すことをしなければ、ルクディアさんに負けてしまうという意識がいつもあった。
それはルクディアさんの方も同じだったのだろう。
もともとボードリックス公爵家とブルトフィーノ公爵家は家格がほぼ同格。
家どうしはライバル関係にあった。
リディテーヌとルクディアさんの仲が悪いのも、この関係が影響していると言っていい。
リディテーヌも嫌味を言うタイプの人間だったのだけれど、ルクディアさんも嫌味を言うタイプの人間だ。
しかし、違いもある。
今までのリディテーヌの方は、周囲の多くの人たちに嫌味を言っていたのに対して、ルクディアさんの方は嫌味を言う人間はリディテーヌと数人程度で、それほど多くはなかった。
これが、学校内での評判の差につながっていた。
ルクディアさんの評判は、リディテーヌほどは悪くなかったのだ。
とにかく、ここで、今までのように言い返してはいけない。
ルクディアさんとわたしが言い返し続けても、どちらが勝利するということはない。
むなしいだけだ。
穏やかに、穏やかに接していこう。
わたしはそう思うのだった。
それは、わたしが十八歳になって以降に開催される王室の舞踏会。
わたしは今の三月時点で十七歳。
五月で十八歳になる。
わたしは、もともと十八歳からの参加予定だった。
わたしが参加しようと思っているのは、七月開催の舞踏会、
後四か月を切っているところだ。
この間に、この学校内での評判を良くしておかなくてはいけない。
今の状況では、これから努力しても間に合うかどうか、わからない。
わたしの出発点である人生を振り返ってみても、やや短気な性格なところがあった。
心穏やかな性格とまではいえなかった。
体が弱かったことが、心を穏やかにする上での妨げになっていたことが、理由としてはあげられる。
もちろん、転生一度目や、今までの人生よりはましだとは言える。
ただ、これからの人生においては、もともとわたしがもっているやや短気な性格が、表面に出てくると、
「結局リディテーヌ様は傲慢で怖い人」
と思われてしまい。評判を良くしようとする努力が無駄になってしまう可能性がある。
そう思うと、前途は厳しいもののように思える。
気が滅入りそうになってくる。
しかし、わたしはすぐに思い直す。
わたしは今を生きている人間だ。
今までの転生、そして今、までの人生がどうであっても、これからは、心穏やかな人生を歩んでいかなくてはならない。
わたしがそう思っていると、
「リディテーヌさん、ごきげんよう」
という声が聞こえてくる。
ブルトフィーノ公爵家令嬢ルクディアさんだ。
取り巻きの女性を二人従えている。
「あら、今日も一人でここに座っておられますの? 周囲の方々は楽しそうにおしゃべりをしているというのに。相変わらず人望がなくお気の毒な方ですわ。わたしはこうして、いつも二人を連れておりますのに」
ルクディアさんはそう言うと、わたしをあざ笑った。
取り巻きの二人も、
「ルクディア様に比べて、なんとかわいそうなことでしょう」
と一緒になって笑う。
それだけではなく、ルクディアさんは。
「わたしはあなたの何倍も美しい。この王国でも指折りの存在と言っていいわ。そのことをきちんと認めなさい。そ
して、今すぐにわたしの軍門に降りなさい」
と言ってくる。
二人も
「ルクディア様は誰よりも美しいお方。そのお方とあなたを比べること自体、おそれ多いこと。ルクディア様がおっしゃるように、今すぐ軍門に降るべきだわ」
と言ってきた。
学校では毎日、朝、こうしてルクディアさんたちはリディテーヌに嫌味を言いにきていた。
今までのリディテーヌだと、
「わたしは一人でいるのが好き。それで毎日十分満足している。それをあなたに言われる筋合いはないわ。それに、美しさはわたしの方がはるかに上なの。わたしほどの美しさを持った女性は、そう多くはないでしょうね」
と言い返し、ルクディアさんたちをあざ笑っていた。
その度に、ルクディアさんたちは腹を立てる。
そして、ルクディアさんは、
「わたしこそ美しい!」
と言い返すのだけれど、それに対しリディテーヌは、
「わたしの方こそ美しい!」
と言い返して、応戦するということを続けてきた。
今までのリディテーヌであれば、言い返すことをしなければ、ルクディアさんに負けてしまうという意識がいつもあった。
それはルクディアさんの方も同じだったのだろう。
もともとボードリックス公爵家とブルトフィーノ公爵家は家格がほぼ同格。
家どうしはライバル関係にあった。
リディテーヌとルクディアさんの仲が悪いのも、この関係が影響していると言っていい。
リディテーヌも嫌味を言うタイプの人間だったのだけれど、ルクディアさんも嫌味を言うタイプの人間だ。
しかし、違いもある。
今までのリディテーヌの方は、周囲の多くの人たちに嫌味を言っていたのに対して、ルクディアさんの方は嫌味を言う人間はリディテーヌと数人程度で、それほど多くはなかった。
これが、学校内での評判の差につながっていた。
ルクディアさんの評判は、リディテーヌほどは悪くなかったのだ。
とにかく、ここで、今までのように言い返してはいけない。
ルクディアさんとわたしが言い返し続けても、どちらが勝利するということはない。
むなしいだけだ。
穏やかに、穏やかに接していこう。
わたしはそう思うのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
470
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる