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クロのこだわり
しおりを挟む昼飯を食べ終わり、カット屋へ向かう。
クロにはどんな髪型が似合うだろうか。
オスだし、短髪かな。
髪が長い子は、短くなり過ぎるとストレスを感じるとショップで言われたし、少し長いショートタイプか・・・。
髪の量も減らさないと、洗うのに手間取っていたし。
「いらっしゃいませー、予約はされてますか?」
「ああ、ヒト売り屋・ラヴィで予約してある」
「はい、確認しますね。ラヴィさん、ラヴィさん・・・はい、ありがとうございます、確認とれました。今日はカットの予約ですね。髪型はお決まりですか?」
「いや、サンプルを見せてもらえるか?」
「かしこまりました。こちらのお席でお待ちください」
案内された席に座り、クロの髪を梳く。
長いのも悪くないが・・・肩に当たらないぐらいが理想だな。
店員が持ってきてくれた雑誌を受け取りパラパラと捲る。
この髪型いいな・・・こっちも悪くない。
「ん、んー」
クロがバシバシと雑誌を叩く。
「クロ、どうした」
コレと言わんばかりに指で1つの髪型を指す。
「これがいいのか?」
確かにこの髪型も悪くない。
後ろ髪より横髪が長く、前髪は斜めで・・・耳がちゃんと見えるのもいいな。
「これにしよう」
「はーい、こちらですね。カットだけの予約ですが、良ければ爪切りや垢擦りなんてどうですか?」
「爪切りは助かる。アカスリとはなんだ?」
「爪切り承りました。垢擦りは、ヒトの古い皮膚をとる事です。古い皮膚が付着したままだと、かなり臭いがきつくなってきます。また、病気のリスクがありますね。特に痒くなりやすく、掻きむしってしまう子も居ますよ」
「そうなのか。じゃぁ、それも頼む。時間はかかるか?」
「かしこまりました。そうですね、1時間ほどですが。あと、爪の形はどうしましょう?尖った形や丸まった形が有りますよ」
「そうか、分かった。形か・・・」
渡された紙には、爪の形が絵で書かれていた。
尖りきったこの爪はなしだな。
少し長いぐらいがいいだろうし、この少し尖った爪にしようか。
「んん~」
そう鳴きながらクロが指さしたのは丸くて短い爪だった。
「これか?爪は少し長い方が・・・」
頭を傾げて、また同じ丸くて短い爪を指さす。
どうやらこれがいいみたいだし、これにするか。
髪も爪もどうせ伸びるしな。
好きにさせてやるか。
「この爪で頼む」
「了解しました。じゃ、こちらに来て貰えますか?カット台に乗せて欲しいのですが」
そう言ってカット台に案内された。
カット台と言っても椅子なんだな。
拘束具が付けられるようになっているし、暴れるヒトは結構いるんだろう。
手置きの所がボロボロなのが証拠だろう。
「クロ、ここに座れ」
ポンポンと椅子を叩くと、素直にその椅子に座るクロ。
「よし、じゃ、よろしく頼む」
「あ、はい、わかりました」
驚いた顔で俺とクロを交互に見る店員。
クロの大人しさと利口さに驚かれるのはこれで何度目か・・・だいぶその反応に慣れてきたぞ。
それにしても、クロはちゃっかりしているな。
まさか髪型も爪の形も決めてしまうとは。
まぁ、俺自身がなる訳でもないし、構わないが・・・1時間何をしようか。
とりあえず、エミュウになにか投稿するか。
応援ありがとうございます!
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