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12.辺境の地と言うこと その4
しおりを挟むさすがにお貴族様ではなかったからか、それともウルゼン国に来てしまったからなのか、ルミアとサリは手際よく料理をしていた。調理場の確認をすると、エディエットは三階にある使用人部屋へと歩いた。
長らく使われていなかったから、空気が完全に澱んでいた。廊下の窓を順番に開けて、部屋を確認する。一番奥にあるのは通常なら執事が住まう部屋だ。
「ここなら広いかな?」
エディエットは部屋の中を確認した。執事が住まうように作られた部屋だから、二間続きでトイレと風呂がついていた。他の部屋には風呂は着いていない。使用人の風呂は地下に大浴場という形で設置するのが普通だ。
「生活魔法が使えれば問題ないかな?」
エディエットは部屋の設備を確認した。トイレには浄化の魔石があるから問題は無い。風呂は魔力を流すことによってお湯が出てくるように魔石がはめ込まれている蛇口だった。
「大浴場を使ってもらってもいいんだけどね」
屋敷自体は大して広くもないから、子どもたちにお手伝い程度にほうきを持たせてもいいだろう。いままで日中何をしていたのかは知らないが、何もしないより、なにかした方がいい。
エディエットが三階を軽く確認して二階に降りてくると、いい匂いがした。どうやらフィナの部屋に食事を運び込んだらしい。廊下で様子を伺うと、フィナの機嫌がよろしいのが分かる。
エディエットは顔を出さずにそのまま下に降りていった。フィナの食事が終われば必然的にエディエットの食事だ。一人だからずっと部屋で食べていたけれど、新しく雇った彼らから色々聞きたいから全員を集めて食堂で食べるのもいいだろう。一度も使われたことの無い食堂は、無駄に広く無駄に大きなテーブルが置かれているのだ。
「二人しかいないのに、椅子が五で十だから、十二?」
エディエットは今更ながらに驚いた。母であるフィナがグラハム辺境伯の称号を賜った際、この屋敷の内装を改装したはずだ。それなのに、食堂に椅子を十二も用意した意味がわからない。万が一にも国王が同席したとして、座れるのは王妃であるフィナとその息子であるエディエットぐらいだったはずだ。
「まぁ、おかげでみんなで座れるか」
エディエットは随分と長いこと使われなかったダイニングテーブルに浄化の魔法をかけた。空間を閉じていたからホコリなどはないけれど、気持ちの問題だ。
「エディ様、こちらでしたか」
背後から声をかけてきたのはリズだ。フィナの食事が終わったのだろう。
「うん。ここでみんなで食事ができるかな?」
「ここを、ですか?」
「そう」
「使用人用の食堂は別にございます」
「だって、使わないのは勿体ないだろう?」
「……エディ様がよろしいのでしたら」
そう言って、リズは廊下に行ってしまった。少し待っていると、本日採用した九人全員がやってきた。ワゴンを押すのを子どもたちが手伝っている。
「じゃあ、そこは好きに座って」
エディエットは主の席に座る。その向かいにリズが座った。
「本日は私もご一緒させていただきます」
リズがそう言うと、ルミアとサリが配膳の指示を出したので、子どもたちが皿を一つづつ並べた。パンの乗ったカゴをデオが持ち、エディエットとリズの皿に乗せてくれた。
「明日からは夕食だけは全員揃ってここで食べることにする。色々報告を聞きたいからね。いいかな、リズ?」
「エディ様がそうおっしゃるのでしたら」
昼食を食べながら、エディエットはアシュタイ国で起きた魔獣襲撃の話をさらに詳しく聞いたのだった。
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