ブライダル・ラプソディー

葉月凛

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 もうどれ程の時間、こうしているのだろう。後孔で蠢く指は2本に増やされ、注ぎ足されたローションは滴り落ちてシーツを濡らしていた。

「奈津。ほら、勃ってる」

 成瀬の左手が、その昂りをなぞり上げる。いつの間にか、奈津の欲望はあられもなく勃ち上がっていた。

(……そんな……いやだ……)

 後ろをいじられて、勃つなんて。奈津は泣きたい気持ちになった。

「あぁ……」

 それでも奈津の体は、確実に快感を拾い上げていった。体の中にある成瀬の指は、たまらなく気持ち良かった。……もっと、強くして欲しい、と思う程に。

「奈津……気持ち、いいか?」
「………」

 奈津の薄く開いた目から、涙が落ちる。
 ──もういいから、早く終わりにして欲しい。そんな諦めの気持ちが強くなってきた頃、気が遠くなる程に蠢き続けた指がようやく引き抜かれた。

「んんっ」

 長い間入っていた異物がなくなったそこは、妙な喪失感に捉われる。奈津は、ぼんやりと成瀬を見つめた。

 成瀬は体を起こし、自分の下半身から下着ごとスウェットを脱ぎ捨てた。その時、奈津の太ももに、ぱたぱたと何かが零れて落ちた。

(あ……)

 ドキリとした。
 成瀬の、先端から滴り落ちた先走りだ。

 奈津は自分ばかりが翻弄されているだけのように感じていたのだが、そうではない。

(──我慢、してるんだ……)

 自分の欲望を満たすだけなら、とっくにそうできた筈だ。なのに、そうしなかった。

「………」

 見上げた成瀬の表情に、余裕など微塵もなかった。唇は苦しげに歪み、潤んだ瞳に明らかな欲情を湛えている。

(我慢してたんだ。僕が、受け入れられるようになるまで……僕が傷付かないように)

 つきりと痛んだ奈津の心に、ふいに熱いものが込み上げてきた。

 成瀬の体の中心にある昂りは、力強い芯を持っていきり立ち、脈打つ筋が浮いて見えた。自分のものとは比べものにならない圧倒的な雄の風貌に、息を呑む。自分を求める成瀬の想いの強さに、目が眩む。

「奈津──」

 押し殺した声が、自分を呼んだ。

「………」

 成瀬は奈津の両足を抱え上げ、腰の下に枕を差し込んだ。欲望の切っ先が、後孔にひたりと当たる。

 最後の迷いが一瞬奈津の脳裏を掠め、消えていった。

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