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目まぐるしく急速に展開されて行く展開に俺の頭は既に考える事を放棄している

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 ドンドンとドアを叩く音が聞こえて来た。
 それに怯える海華。
 カッチーン。俺キレちゃいました。

「あの! いい加減にいいい!」

 ドアを開けると、抱えられて車に無理矢理乗せられた。
 ちなみに妹2人ものうのうとついて来た。

「おい、これは誘拐だぞ。てか、なんで二人共警察呼ばかなかったの?」

「お兄ちゃん、家に固定電話及び携帯があると思う?」

 すまん。お兄ちゃんが間違ってた。

「黒服のおじさんがついて来るとお兄ちゃまが喜ぶって言って」

 純粋! だけどそこが良い! いや今は良くない!

 それから車で揺らされる事数分、大きな御屋敷の前で降ろされた。

「⋯⋯どこ?」

「お兄ちゃん⋯⋯」

「お兄ちゃま」

 黒服の人が「こちらです」と言って来たので拒否して帰ろうと思ったけど、流石に負けるのでついて行く。
 大きな御屋敷に似合う大きな扉を黒服の2人が開ける。
 中にからトントンと足音が聞こえ、近づいて来る。

「拓海君!」

 飛び付いて来たので受け止める。
 胸の辺りに当たる柔らか感触、鼻で息を吸わなくても匂ってくる柔らかな匂い。
 サラサラでフワフワな銀髪。
 ま、何となく分かっていたけど。

「西園寺さん。なんですか?」

「だーかーらー雪姫と呼んでください! 何って、今日から一緒に住むんですよね?」

「お兄ちゃん!」

「お兄ちゃま!」

「あら、可愛らしい。お2人が私の義妹になる2人ね」

「お兄ちゃん何言ってるのこの子?」

「ねえ、愛海さん」

「何故名前を!」

「貴女のお兄さんと私の交際を認めて、一緒にここで住むって覚悟を決めたら、借金も何もかもを精算してあげる」

「え、⋯⋯それでも認めません! で、ですが、その話が本当なら、少しは考えても良いですが、絶対に結婚までは行かせません!」

「ふふ。海華ちゃん。お兄さんの事、好き?」

「うん!」

「私の言う通りにすると、お兄さんとても助かって、たっくさん笑顔が増えるよ。それに、沢山遊べるようになるよ。バイト辞めさせるから」

「ほんと!」

「ほんと。だから、お兄さんの説得手伝ってくれない?」

「うん!」

 やばい。
 何かがやばい!
「お兄ちゃま」「お兄ちゃん、ごめん」と言って、俺の弱点である妹2人のオネダリ的な目で見詰めて来る。
 ぐぬぬ。俺別に西園寺の事好きな訳じゃないんだけど。あれ? 何かがまた、引っかかったような。
 つか、どうしてこうなったんだ!

「無言、つまり肯定、今日から私達は家族ですね」

「え!」

「あ、荷物とか全部運ばせてますので今から住んで良いですよ。お部屋に案内しますね」

「いや、ちょっと」

「お2人は同じ部屋で良いですか?」

「海華、私と同じ部屋で良い?」

「うん! こんな広い所に1人部屋とか寧ろ怖いよ」

「お願いします」

 え、待って。
 ついて行けてないの俺だけ? ねぇ、俺だけ?
 助けて、この疎外感。ねぇってば!

 つんつんと肩をつつかれたので振り向くと、そこには神威が居た。

「よ! なんか、よく分かんないけど、結婚おめでとう。パチパチパチ」

「ねぇ! この状況何! つか、なんでいるのさ!」

「俺ここの使用人として働いてんだよ。清掃人だけどな。さて、経緯を教えてやろう。まず、西園寺雪姫様はお前に何故か好意を持っていた。相談されたので、面白そうだったし手伝った。果たし状を選択したのも俺な。そして、お前がクフ⋯⋯雪姫さ、グフ、に告白して、こうなった」

 まず、殴っていいか?

「お兄ちゃん凄いよここ! とっても大きなキッチンだった!」

「うんうん!」

 ⋯⋯2人の笑顔には勝てんな。
 神威が去って行き、隣に西園寺が立つ。

「お試しでも構いません。貴方の現状を聞いて、いち早くこうしたかったので、こうしました。強引だった事、深くお詫びします。試しで構いません。12年間のお試しでも構いません。一緒に、ひとつ屋根の下で過ごしては、頂けませんか? きっと、思い出してくれると思います。」

 12年間ってのに疑問と驚愕を隠せんが、まぁ良いかな。⋯⋯思い出す?
 あの二人も乗り気だし。

「まぁそもそも、もう拓海君の帰る場所、ここしか無いんですが」

「さっきの謝罪を返してあげよう」

 それから西園寺に案内されて俺も自分の部屋に行った。
 結論から言おう。広い。
 それに机に椅子にベットにと、必要な物は全て揃っている。
 俺の右隣の部屋が妹2人の部屋で、左隣の部屋が西園寺らしい。

「それでは次に行きましょう。色々と部屋の位置を確認しませんと」

「うん」

 ごめん。部屋を見て感動して頭真っ白に成ってる。
 しかも、母親の仏壇まである。
 これは、本当に嬉しかった。部屋に仏壇ってのは流石にアレだと思うが、西園寺曰く後々移動するらしい。

「さて、皆さんには私の父様と母様にお会いして貰います」

 うん。スウウウフウウウ⋯⋯なぜ!

 現在客間? だと思われる広い空間に案内された。
 その場所には厳しい顔立ちをしているおじさんと、キリッとした凛々しいお姉さんが居た。
 対面に海華、俺、西園寺、愛海、の順で座る。

「そうか、君が雪姫が認めた男か」

 お前が父親か。こっっわ。

「そう。貴方が。あ、私は雪姫の母です」

 お姉さんじゃないんだ。見た目わっっか。
 さて、一体何言われるんだろう。
 てか、これってこの2人とこれからここに一緒に住むって事?
 肩身狭い気がするんだけど。

「拓海君と言ってたね」

「は、はい」

 父親からのオーラの圧が凄い。
 冷や汗がながらてしまう程に凄い。
 その父親が立ち上がり、俺を見詰めて来る。
 そして、頭を下げた。体を90度に曲げている。

「うちの娘をよろしくお願いします!」

「えええ!」

「こちらからも、よろしくお願いしますね」

「ええ、それだけですか?」

「いやね」

 ソファーに座り、出された紅茶を1口飲んで父親が喋り出す。

「雪姫は盲信するタイプでな。1度決めた事は突き通すんだよ。だからちょっと、かなり、物凄く強引な所があると、思うが許して欲しい。わしは自分の人を見る目を信じている。だから君なら問題ないと判断した。ま、そもそも雪姫はわしよりも人を見る目はいいんだがな。ガハハハ」

「雪姫は体も見た目も良いですし、ある程度の家事なども出来ます。きっと尽くすタイプですよ。いやー楽しみですね、これから雪姫をよろしくお願いしますね。それでは私達はこれで。あ、子供は計画的に」

「何言ってるんですか! え、何処かに行かれるんですか?」

「もう、お母様ったら」

「え、家に帰るんですよ」

「ここは?」

「ここは雪姫に渡した別荘の1つで雪姫の家だぞ? 聞いてなかったのか?」

 聞いてねえええよ!
 なんだよその金持ち!
 どこの金持ちだよ!

「お兄ちゃん、私、薄々思ってたけど、西園寺さんって、あの有名な財閥、西園寺グループの創設者、じゃないんですか?」

「⋯⋯」

「ガハハ。若いのに良く知っているな」

 まじかー。
 俺、これからどうなるの?
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