77 / 131
18歳になりました
しおりを挟む微笑んだジァルデの銀煤色の角が、輝いた。
「ジア、今、力を使ったら──!」
あわてる僕に、ジァルデは首を振る。
「……やりたくて堪らないだけだから。
大丈夫だ」
ちいさく笑ったジァルデに、隣のゼドが噴火した。
ジァルデの銀煤色の長い爪が、ねじれた角とともに、ゆるやかに光を放つ。
描かれた銀に輝く魔紋が、僕の身体に、重なった。
「時よ、我が手に。
ロロ・ルルの時を18年進め、その肉体を、ここに現せ」
ドクン────!
血が、震えた。
骨が、軋む。
「う、ぁ、あ────!」
「ルル────!!」
抱きしめてくれるレトゥリアーレの腕のなか、僕の身体が、脈打った。
熱い痛みが、銀の光が、早められた時が、僕のなかを駆け抜ける。
腕が、足が、肌が、みりりと、伸びる。
流れ落ちた黒髪は、さらに長く、伸びてゆく。
銀煤色の角が輝き、柘榴の瞳が、閃いた。
時を操るジァルデの指が、僕の額に触れる。
パァアアアア────!
輝く光に、包まれる。
僕のなかを、18の時が、駆け抜けた。
とさりと倒れる僕を、レトゥリアーレの腕が、抱きとめてくれる。
魔紋が、ゆうるり、力を失くした。
ジァルデの放つ銀の光がおさまると、熱い痛みが引いてゆく。
ちょこっとおっきくなった僕が、レトゥリアーレを見あげた。
「……闇夜に瞬く、星のようだ、ルル」
うっとり蒼の瞳を細めて、レトゥリアーレが微笑んでくれる。
「ほんとに、ひめさまだね」
キュトが笑って
「ひめ、かわい」
グィザが、ぽふぽふ拍手してくれた。
「おっきくなったな、ろー」
ゼドのおっきな掌が、僕の頭を撫でてくれる。
「合法だ」
息を切らしたジァルデが、笑ってくれた。
僕のために魔力を放出してくれたジァルデの我慢が、臨界を迎えたらしい。
「……ぜど……」
抜けない催淫剤のためだろう、うるうるの瞳で、抑えきれない、熱い吐息で、きゅ、とジァルデがゼドの手を握る。
ジアをおひめさま抱っこしたゼドは、爆速で部屋に入った。
ゼド、ジアをたすけたくて、堪らなさそうだったからね。
めちゃめちゃ営んでると思う。
ジァルデの色っぽい声が聞こえないから、防音も完璧だと思う。
グィザとキュトは、物凄く複雑そうな顔で、吐息した。
「僕らは、ここで、万一酷いことになった時のために、待機してるから。
レトゥリアーレは、殺されそうになったら、出て来て」
目を見開くレトゥリアーレに、キュトは続ける。
「レトゥリアーレができないなら、僕が、ひめを殺す。
ひめに、レトゥリアーレを殺させたりなんて、絶対しないから。
安心して、行っておいで」
キュトの手が、頭を撫でてくれる。
「……キュトたん……ありがとう」
ぎゅうう。
抱きついたら、紅い頬で笑ってくれた。
「元気になったら、僕としようね」
耳朶に注がれた囁きに、噴火した。
ガキィイイ────!!
繰り出されたレトゥリアーレの剣を、双剣で見事に防いで、キュトが笑う。
「……ひめさま」
ぎゅうぎゅう、グィザが手を握ってくれる。
「たすけ、なれなかた。
ごめん」
びっくりした僕は、ぶんぶん首を振る。
「めちゃくちゃたすけてくれたよ!
グィザがいなかったら、ここには来られなかった。
ほんとうに、ありがとう」
ぎゅうう。
グィザを抱き締めたら、真っ赤になったグィザは囁いた。
「ひめさま、したい」
噴火する僕を引き剥がしたレトゥリアーレの拳が、グィザの腕に阻まれる。
ぱたりと尻尾を揺らしたグィザは、ふくれた頬でレトゥリアーレを見おろした。
「ひめさま、なかす、殺す」
紅くなったレトゥリアーレが、目を伏せる。
「…………そ、れは、ちょ、っと…………」
「うわあああ!! この人、すっごい清らかな顔しといて、頭のなか、えろいことでいっぱいだ──!!」
指されたレトゥリアーレは、紅い眦を吊りあげた。
「最愛と、するんだぞ!
当たり前だ!!」
……………………え…………
…………え?
もしかして、僕、ぴんち?
ぎゅうう。
僕を抱きあげてくれるレトゥリアーレの腕が、熱い。
「できる限り、やさしくする」
真っ赤なレトゥリアーレの言葉に、発火する。
ちょっと紅い頬で、クロが尻尾を振ってくれた。
596
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる