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18歳になりました
しおりを挟む微笑んだジァルデの銀煤色の角が、輝いた。
「ジア、今、力を使ったら――!」
あわてる僕に、ジァルデは首を振る。
「……やりたくて堪らないだけだから。
大丈夫だ」
ちいさく笑ったジァルデに、隣のゼドが噴火した。
ジァルデの銀煤色の長い爪が、ねじれた角とともに、ゆるやかに光を放つ。
描かれた銀に輝く魔紋が、僕の身体に、重なった。
「時よ、我が手に。
ロロ・ルルの時を18年進め、その肉体を、ここに現せ」
ドクン――――!
血が、震えた。
骨が、軋む。
「う、ぁ、あ――――!」
「ルル――――!!」
抱きしめてくれるレトゥリアーレの腕のなか、僕の身体が、脈打った。
熱い痛みが、銀の光が、早められた時が、僕のなかを駆け抜ける。
腕が、足が、肌が、みりりと、伸びる。
流れ落ちた黒髪は、さらに長く、伸びてゆく。
銀煤色の角が輝き、柘榴の瞳が、閃いた。
時を操るジァルデの指が、僕の額に触れる。
パァアアアア――――!
輝く光に、包まれる。
僕のなかを、18の時が、駆け抜けた。
とさりと倒れる僕を、レトゥリアーレの腕が、抱きとめてくれる。
魔紋が、ゆうるり、力を失くした。
ジァルデの放つ銀の光がおさまると、熱い痛みが引いてゆく。
ちょこっとおっきくなった僕が、レトゥリアーレを見あげた。
「……闇夜に瞬く、星のようだ、ルル」
うっとり蒼の瞳を細めて、レトゥリアーレが微笑んでくれる。
「ほんとに、ひめさまだね」
キュトが笑って
「ひめ、かわい」
グィザが、ぽふぽふ拍手してくれた。
「おっきくなったな、ろー」
ゼドのおっきな掌が、僕の頭を撫でてくれる。
「合法だ」
息を切らしたジァルデが、笑ってくれた。
僕のために魔力を放出してくれたジァルデの我慢が、臨界を迎えたらしい。
「……ぜど……」
抜けない催淫剤のためだろう、うるうるの瞳で、抑えきれない、熱い吐息で、きゅ、とジァルデがゼドの手を握る。
ジアをおひめさま抱っこしたゼドは、爆速で部屋に入った。
ゼド、ジアをたすけたくて、堪らなさそうだったからね。
めちゃめちゃ営んでると思う。
ジァルデの色っぽい声が聞こえないから、防音も完璧だと思う。
グィザとキュトは、物凄く複雑そうな顔で、吐息した。
「僕らは、ここで、万一酷いことになった時のために、待機してるから。
レトゥリアーレは、殺されそうになったら、出て来て」
目を見開くレトゥリアーレに、キュトは続ける。
「レトゥリアーレができないなら、僕が、ひめを殺す。
ひめに、レトゥリアーレを殺させたりなんて、絶対しないから。
安心して、行っておいで」
キュトの手が、頭を撫でてくれる。
「……キュトたん……ありがとう」
ぎゅうう。
抱きついたら、紅い頬で笑ってくれた。
「元気になったら、僕としようね」
耳朶に注がれた囁きに、噴火した。
ガキィイイ――――!!
繰り出されたレトゥリアーレの剣を、双剣で見事に防いで、キュトが笑う。
「……ひめさま」
ぎゅうぎゅう、グィザが手を握ってくれる。
「たすけ、なれなかた。
ごめん」
びっくりした僕は、ぶんぶん首を振る。
「めちゃくちゃたすけてくれたよ!
グィザがいなかったら、ここには来られなかった。
ほんとうに、ありがとう」
ぎゅうう。
グィザを抱き締めたら、真っ赤になったグィザは囁いた。
「ひめさま、したい」
噴火する僕を引き剥がしたレトゥリアーレの拳が、グィザの腕に阻まれる。
ぱたりと尻尾を揺らしたグィザは、ふくれた頬でレトゥリアーレを見おろした。
「ひめさま、なかす、殺す」
紅くなったレトゥリアーレが、目を伏せる。
「…………そ、れは、ちょ、っと…………」
「うわあああ!! この人、すっごい清らかな顔しといて、頭のなか、
えろいことでいっぱいだ――!!」
指されたレトゥリアーレは、紅い眦を吊りあげた。
「最愛と、するんだぞ!
当たり前だ!!」
……………………え…………
…………え?
もしかして、僕、ぴんち?
ぎゅうう。
僕を抱きあげてくれるレトゥリアーレの腕が、熱い。
「できる限り、やさしくする」
真っ赤なレトゥリアーレの言葉に、発火する。
ちょっと紅い頬で、クロが尻尾を振ってくれた。
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