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愛してるぜご主人様
悪魔の名
しおりを挟む悪魔は人間に己の真の名を教えてはいけない。
名を知った人間は意のままに悪魔を操ることができるからだ。
召喚された時、俺は拷問されるのかと覚悟をしていた。無理矢理俺の名を聞き出そうとするのかと思ったからだ。
だがテオはそれをしなかった。
俺に仮の名をつけて使い魔として契約したのだ。
「今からお前の名はルビーだ。」
「ルビーだぁ?舐めてんのかガキ。俺様のような高貴な悪魔に名をつけるなんて500年早いんだよ。賢者になって出直してこい。」
「また電流を流されたいのか?」
「そ、それは、勘弁してくれ。」
あの電流は凄まじかった。後10秒、体に電流を流されていたら心臓が破裂していたことだろう。本当に容赦のないガキなのだ。
「なんでそんな可愛らしい名前なんだぁ?誰もが恐れおののき、口にするのさえ勇気のいるような名前にしてくれよ!」
「お前をみた瞬間、脳裏に浮かんだ。その綺麗な瞳に合う名だと確信した。」
口説かれているのかと勘違いしそうになるほど、テオは真剣な眼差しで述べた。
この時は思いもしなかったんだ。こんなガキに振り回され続けるなんて、ガキのつけた名前でもっと呼ばれたいなんて、こんなに愛してしまうなんて。
過去の俺様は想像すらしなかったんだ。
懐かしい過去を思い出しながら夢から覚める。小鳥の囀りが聴こえる。今日も世界は平和だなと悪魔らしからぬ考えが浮かぶ。
これも全て、道徳心のあるご主人様と過ごしているせいだな。
昨日はソファで寝ていた気がするがいつの間にかベットに来たのだろうか。まぁ細かいことは気にせずに起き上がる。
寝ぼけたまま鏡の前に行き、己の全身を見る。いつみても美しい姿がそこにはあった。
「さすが俺様。寝起きも美しい。だが、足りない。」
体に力を加えしまっているものを解放する。
鋭く尖った立派なツノ。気分良く揺れる尻尾。そして背中から現れたカラスの様な翼は光沢を帯びていた。
普段、性行為をする際はしまっているが出していた方が開放感があっていい。
己の姿を堪能した後、朝食の席についた。
「おはようテオ。愛しいご主人。今日も無表情だな。今日は快晴の広がる空なんだからもっと顔の筋肉使って晴れやかな表情しろよ。」
「おはようルビー。今日は昼から魔物の討伐だ。」
「はぁ?魔物の討伐なんて下っ端の仕事だろうが。」
「数が増えてきたんだ。それに普段よりも強い個体が多い。一気に討伐するぞ。」
「はいはい。了解しましたよ。」
いつもなら書類仕事や魔術の研究がメインのテオまで魔物退治に呼ばれるなんて。
そうとう厳しい状況なんだろうな。
めんどくさい。酒を飲みながらダラダラとしていたい俺からすれば非常にめんどくさい。
昼頃。
怠い足を動かしテオの後ろをついて行く。
一緒に討伐に向かう隊と合流する。
「テオ様。お待ちしておりました。今日は力をお貸し下さりありがとうございます。」
テオは隊の隊長から歓迎されながら今回の討伐の作戦を話し合う。
俺は暇なので周りで待機している奴らのコソコソ話に耳を立てた。
「最強の魔法使いテオ様だぞ。」
「みろよ。使い魔の悪魔だ。悪魔を従わせるなんて最強は一味違うな。」
「あれが悪魔のルビーか。噂で聞いていたよりも美しいな。」
ふふん。俺様のご主人はこの国で1番強い魔法使いだからな。もっと褒め称えろ。あと俺様が美しいのはわかっているから一々口に出すなよ。もっとテオについて話せや。
俺がコソコソ話を聞いていると、テオが話終わっていた。
移動を開始する。
今回担当する場所に着くとイノシシやクマの様な形をした魔物があっちこっちにいた。
魔物の体には魔力が溢れ出ていた。
「ここら一帯の魔物を片付ければいいんだろう?」
「ルビーやれ。」
ご主人に命令されるのと同時に身体中が魔力でみなぎってくる。
ゾクゾク、、
テオの魔力だ。あいつの魔力が俺の中に入ってくる。身体中に染み渡っていくのがわかる。あぁ、軽くイきそうだぜ。
めんどくさいと思っていたが、テオの魔力をこんなにも感じることができたことは思いもよらぬ報酬だった。
指先に力を込め魔力を集める、集まった魔力は丸くなる。そして魔物たちに向かってそれは放出された。
攻撃された魔物たちは灰となる。
指先からでた煙を吹き払い、テオに声をかける。
「あんな奴らに手こずっていたのか?」
「終わりだ。帰るぞルビー。」
最強の魔法使いと最恐の使い魔はすぐさま来た方向へと引き返した。
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