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人助けをしましょう
追い詰められていました
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リュシアンに強い獲物を取られて、しぶしぶ離れの屋敷にいるセヴランと合流しようとしたときに感じた強者の気配。
耳と鼻をピクピクと動かしながら、強い気配を辿り見つけたその気配の元である男の周りには、仲間だったろうゴロツキ共が血に塗れて倒れて呻いている。
「?」
ルネは立ち止まって首を傾げる。
強い者と戦える。
戦えば自分はもっと強くなって、ヴィー様に認めてもらえる。
そう思って目的地を外れ、男爵邸の庭の奥、林の中に足を運んだのに。
倒れている男たちはナタンの仲間の男たち。
じゃあ、この男は味方?
ずんぐりとした体に太い首。
浅黒い肌にゴツゴツとした顔に細い眼。
短い手足に大きい爪。
「・・・獣人?」
でもなんの種族だろう?
ルネが知っている獣人は、みんなしなやかな筋肉を持つ体で猫目の愛嬌のある顔だった。
「・・・セヴランは糸目だけど・・・」
でもセヴランの細い目は嫌いじゃない。
この男の細い目で見られると、お腹の中がグルグルと気持ち悪くなっていく・・・気がする。
「なんで?」
それは・・・この男の気配のせいかも。
死臭がする。
鼻をつくほどの、匂い。
こんな男は本当に、町民で味方なのか?
ブルブルルと頭を振って、ルネは真っ直ぐにその男を見て、問うた。
「お前は、誰?」
ニヤーッと笑うその男は、問いに答えることもなく、ルネに向かって攻撃をしてきた。
アルベールとヴィーと一緒に、悪い奴らがいる屋敷まで来た。
先にリュシアンが着いてるから、もう強い奴は倒されちゃったかも。
キョロキョロと周りを見回しても、弱い人に縄で縛られているもっと弱い人しかいない。
ヴィーはここまで走っただけで、息を荒くして膝を付いてるし。
あ、ルネにヴィーには優しくするように、て言われていたけど・・・忘れてた。
ギルドというところで、走って殴って蹴って、爪でひっかいて、と思うままに暴れるのに夢中ですっかり忘れてた。
・・・怒られるから黙っていよう。
ルネはとっても優しくて暖かい人だけど、怒ると怖い。
うん、黙っていよう。
さて、どうしようかな?
アルベールは、悪い奴の親玉がいる所へ移動するだろう。
そこにはリュシアンがいるから、一番強い奴とはもう戦えない。
んー、セヴランのいる所には強い奴はいない。
そんな危ない所にセヴランは、行かない。
だって、弱いから。
つまんないけど、アルベールに付いていこうかな。
なんとなく、その場をぶらぶらと歩いてみる。
ヴィーはまだ座り込んだまま、アルベールと何か言い合っている。
・・・!
あれ?この匂い。
クンクン。
これって・・・血の匂い?
ここら辺には至る所から血の匂いがするんだけど、これは・・・。
「・・・ルネ?」
これは、ルネの血の匂い?
なんで?怪我しているの?
ルネが危ないっ!
リオネルは、血の匂いを辿って走り出した。
「だめですね」
「そんな、簡単に、言うなよっ!」
この爺さんは!
俺は鎖男の攻撃を、今にも折れそうな大剣で右に左にと弾きながらアルベールに悪態を吐く。
「だって、鉄壁の防御すぎて剣も矢もダメ。魔法も殺傷能力を抑えた威力では、風魔法も水魔法も、あの鎖の防御に阻まれて怪我ひとつ負わせられない・・・。ダメでしょう?」
そりゃ、そうだけど・・・そこをなんとかするのが、アンタの仕事だろうが!
俺は眉間にシワを刻んだまま、大剣を振るい続ける。
隣に立つアルベールは鎖を自ら弾くことなく、お嬢の造った魔道具に頼りきりである。
「貴方も無駄な努力をせずに、魔道具に任せればいいでしょうに」
「うるせーっ。性分なんだよ、しょうがないだろう」
こう、攻撃されると無意識に剣を振るってしまうんだから。
「もう、ヴィーに内緒で殺りますか?」
「いや・・・俺はそれでもいいけど・・・。ルネやリオネルの教育に悪くないか?」
アルベールは片眉だけ器用にひょいと上げて、俺を見た。
「驚いた。貴方でもそんなことを気にするんですね?」
・・・あんまり良くないだろうよ、子供にそんな殺伐とした所を見せるのは。
まあ、冒険者になったからには、ルネもリオネルもそんな甘いことは言ってられないのだが・・・。
「お嬢が、気にすんだろ」
「そうですね」
だから、あいつを殺さずに倒して、その男の後ろに隠れているナタンを捕縛しなきゃいけないんだが・・・剣もダメで魔法もダメ。
「どうしたらいいんだ!」
しかも鎖男は何もしていないから体力が削られることもなく、魔道具に流す魔力も必要が無いみたいで魔力切れも起こさない。
「こっちにヴィーが来ればよかったですね」
アルベールは何かを企んだ顔でニッコリと笑って見せた。
ゾクゾク。
あれ?俺、味方と一緒にいるのになんで背中に悪寒が?
「・・・さて、リュシアン。ここで魔法の特訓といきましょうか」
は?
なんて?
耳と鼻をピクピクと動かしながら、強い気配を辿り見つけたその気配の元である男の周りには、仲間だったろうゴロツキ共が血に塗れて倒れて呻いている。
「?」
ルネは立ち止まって首を傾げる。
強い者と戦える。
戦えば自分はもっと強くなって、ヴィー様に認めてもらえる。
そう思って目的地を外れ、男爵邸の庭の奥、林の中に足を運んだのに。
倒れている男たちはナタンの仲間の男たち。
じゃあ、この男は味方?
ずんぐりとした体に太い首。
浅黒い肌にゴツゴツとした顔に細い眼。
短い手足に大きい爪。
「・・・獣人?」
でもなんの種族だろう?
ルネが知っている獣人は、みんなしなやかな筋肉を持つ体で猫目の愛嬌のある顔だった。
「・・・セヴランは糸目だけど・・・」
でもセヴランの細い目は嫌いじゃない。
この男の細い目で見られると、お腹の中がグルグルと気持ち悪くなっていく・・・気がする。
「なんで?」
それは・・・この男の気配のせいかも。
死臭がする。
鼻をつくほどの、匂い。
こんな男は本当に、町民で味方なのか?
ブルブルルと頭を振って、ルネは真っ直ぐにその男を見て、問うた。
「お前は、誰?」
ニヤーッと笑うその男は、問いに答えることもなく、ルネに向かって攻撃をしてきた。
アルベールとヴィーと一緒に、悪い奴らがいる屋敷まで来た。
先にリュシアンが着いてるから、もう強い奴は倒されちゃったかも。
キョロキョロと周りを見回しても、弱い人に縄で縛られているもっと弱い人しかいない。
ヴィーはここまで走っただけで、息を荒くして膝を付いてるし。
あ、ルネにヴィーには優しくするように、て言われていたけど・・・忘れてた。
ギルドというところで、走って殴って蹴って、爪でひっかいて、と思うままに暴れるのに夢中ですっかり忘れてた。
・・・怒られるから黙っていよう。
ルネはとっても優しくて暖かい人だけど、怒ると怖い。
うん、黙っていよう。
さて、どうしようかな?
アルベールは、悪い奴の親玉がいる所へ移動するだろう。
そこにはリュシアンがいるから、一番強い奴とはもう戦えない。
んー、セヴランのいる所には強い奴はいない。
そんな危ない所にセヴランは、行かない。
だって、弱いから。
つまんないけど、アルベールに付いていこうかな。
なんとなく、その場をぶらぶらと歩いてみる。
ヴィーはまだ座り込んだまま、アルベールと何か言い合っている。
・・・!
あれ?この匂い。
クンクン。
これって・・・血の匂い?
ここら辺には至る所から血の匂いがするんだけど、これは・・・。
「・・・ルネ?」
これは、ルネの血の匂い?
なんで?怪我しているの?
ルネが危ないっ!
リオネルは、血の匂いを辿って走り出した。
「だめですね」
「そんな、簡単に、言うなよっ!」
この爺さんは!
俺は鎖男の攻撃を、今にも折れそうな大剣で右に左にと弾きながらアルベールに悪態を吐く。
「だって、鉄壁の防御すぎて剣も矢もダメ。魔法も殺傷能力を抑えた威力では、風魔法も水魔法も、あの鎖の防御に阻まれて怪我ひとつ負わせられない・・・。ダメでしょう?」
そりゃ、そうだけど・・・そこをなんとかするのが、アンタの仕事だろうが!
俺は眉間にシワを刻んだまま、大剣を振るい続ける。
隣に立つアルベールは鎖を自ら弾くことなく、お嬢の造った魔道具に頼りきりである。
「貴方も無駄な努力をせずに、魔道具に任せればいいでしょうに」
「うるせーっ。性分なんだよ、しょうがないだろう」
こう、攻撃されると無意識に剣を振るってしまうんだから。
「もう、ヴィーに内緒で殺りますか?」
「いや・・・俺はそれでもいいけど・・・。ルネやリオネルの教育に悪くないか?」
アルベールは片眉だけ器用にひょいと上げて、俺を見た。
「驚いた。貴方でもそんなことを気にするんですね?」
・・・あんまり良くないだろうよ、子供にそんな殺伐とした所を見せるのは。
まあ、冒険者になったからには、ルネもリオネルもそんな甘いことは言ってられないのだが・・・。
「お嬢が、気にすんだろ」
「そうですね」
だから、あいつを殺さずに倒して、その男の後ろに隠れているナタンを捕縛しなきゃいけないんだが・・・剣もダメで魔法もダメ。
「どうしたらいいんだ!」
しかも鎖男は何もしていないから体力が削られることもなく、魔道具に流す魔力も必要が無いみたいで魔力切れも起こさない。
「こっちにヴィーが来ればよかったですね」
アルベールは何かを企んだ顔でニッコリと笑って見せた。
ゾクゾク。
あれ?俺、味方と一緒にいるのになんで背中に悪寒が?
「・・・さて、リュシアン。ここで魔法の特訓といきましょうか」
は?
なんて?
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