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王都に行きましょう

王都へ出発しました

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今日の予定。
アルベールは、カミーユさんと冒険者ギルドで今後の王都までの旅程のお話し合い。
リュシアンとリオネルは、カヌレとブリュレの散歩とついでに食用の魔獣を狩ってくる。
ルネとセヴランは市場へ買い物。

私?
私は馬車の中で料理三昧ですが、なにか?

カミーユさんに誘われた王都への護衛依頼は、反対意見も出たが結局受けることにした。
改めてカミーユさんが冒険者ギルドに依頼を出して、私たち冒険者パーティーが受諾した形で。

んで、サン・ブルージュの町から王都まで・・・実は約1ヶ月の長旅なんだよねぇ。
だからその準備をしっかりとしておこうと、それぞれが得意分野を活かしているのです。
って、私は料理ばっかりだよっ。
あ、おやつも作っておこう。

なんせ、この馬車にカミーユさんも乗せることになったしね。
馬車の空間魔法のことは秘密にしてたけど、そんなに長旅で誤魔化せる訳ないし、だからと言って普通の馬車の状態で長旅なんてしたくないとリュシアンたちに泣かれてしまったし。

とりあえずカミーユさんに「カリスマ(種)」スキルが見事「カリスマ」になりましたよと伝えて、畳みかけるように「獣化」もできるようになりましたよ、と教えてあげた。
そのショックを受けて動揺しているうちに、馬車の話やリュシアンたち希少種族の話もしたから、なんたがよくわからない状態になっていたが、最後にアルベールが綺麗な顔に微笑みを浮かべて口止めしていた。

これで、王都までほとんど野営で進むことになったよ・・・。
みんな、馬車の居心地が良すぎて、宿屋に泊まるの嫌がるんだもん。
食事もそうだし・・・、あ、混ぜご飯作っておにぎりも大量に用意しておこう。

ま、冒険者ランクを上げるのに護衛依頼は受けなきゃいけなかったから、丁度良かったと言えるんだけどね・・・。
ちなみに部屋割りで揉めました。
カミーユさんはリオネルと同室で、と主張をしたけど、リオネルはルネと同室だからね。
「慎みが・・・」とカミーユさんは訴えていたけど、まだ子供じゃん。
リュシアンたちに聞いても「まだ平気」ってお許しが出てるし。
最終的にはリオネルの目が据わってきて、「ガルルルッ」と唸って終わった。

「リオネルが・・・僕に威嚇・・・。くすんくすん」

あー、ウザイ!
なのに、昨日はそのブラコンのカミーユさんに相談を持ち掛けられて。
いやいや、馬車の部屋割りの件は譲りませんけど?

「違う違う。それはしょうがないと諦めるよ・・・。それよりね・・・僕、リオネルともっともっと仲良くなりたいんだけど・・・。あの子は、ほら照れ屋だし・・・」

はて?リオネルが照れ屋さん?
あの子に羞恥心なんてないと思うけど?
どうやら、ブラコンスキルは対象をとことん歪めて見てしまうものらしい。

「仲良くって・・・。一緒にいたら仲良くできると思いますよ。あとは、食べ物で釣ってください」

漏れなく、絶対に釣れますから!
だいたい、あの子に策を講じても無駄です。
直感で生きてるもの。
カミーユさんは私の言葉にもじもじと乙女のように恥じらいながら、「協力してほしい」と頼んできた。

「えーっ」

やだよ、めんどい。
どう断ろうかと言い淀んだその一瞬、アルベールがひょいと顔を出して。

「いいですね。協力しますよ」
「ええっ!アルベールが?」
「兄弟が仲良くするのはいいことでしょう?」

はい、そうですね。
アンタも持ってたもんね、ブラコンスキル。

「いいけどさ・・・。過剰なスキンシップや過干渉は嫌われるよ?」

そこっ、ガーンと見てわかるほどにショックを受けない!

「ど・・・、どうすれば?リオネルはまだ幼いので抱っこも添い寝も一緒にお風呂も、あーんも、チュッチュッも許されると思ってたのにぃぃぃぃっ」

・・・犯罪者ですか?

「うーん、お互いのことをよく知るのがいいと思うけど・・・」

あ、そうだ。
ついでにリオネルの情操教育も行おう。
あの子、ちょっと感情が単純すぎるのよねぇ。
文字を教えてルネはたまに読書をしたり、セヴランにいろいろと教えてもらって勉強を続けているけど、リオネルは覚えたら終わりになってしまった。
リュシアンが言うには、「あいつ、冒険者ギルドの依頼ボードに貼ってある依頼書が読めればいいと思ってんだろ」とのこと。
でも本を読みなさいって注意しても読まないし・・・。
やっぱり、文字は読んで書いて読んで書いての繰り返しよね!

「あの・・・こういうのはどうですか?」

私の提案にカミーユさんは顔を輝かして、スキップする勢いで外出していった。
雑貨店でノートとお揃いのペンを買ってくるんだって。

「問題はリオネルが大人しく言うことをきくかどうか。どう思うアルベール?」

「・・・言うことを聞かせればいいのですよ」

ニッコリ。











「これ、なに?」

カミーユさんが満面な笑顔で差し出したのは、ファンシーな絵柄のノートとペン。
ニコニコと自分も同じペンを手に、リオネルに「交換日記」なるものの説明をしている。
つまり交互に日記を書いて親睦を深めようという作戦だ。
リオネルはカミーユさんの説明に段々と不機嫌になっていく。

「や!めんどう」

でしょうね。
カミーユさんは焦りながらなんとかリオネルを懐柔しようとしている。
そこへ、スッとアルベールが間に入り、リオネルの丸い耳にこしょこしょと何かを囁く。

そうそう、ここでは白虎族はカミーユさんで見慣れているので、リオネルも魔道具を外して白虎族の耳と尻尾のあるがままの姿で過ごしてます。
アルベールが何を言ったのか、煩悶するリオネル。

「お嬢。あれ・・・なんの意味があんだよ?」

「ないわよ。あれで仲良くなるかどうかなんて知らないわ。でもカミーユさんはリオネルとやりとりができるし、リオネルには勉強になるでしょう」

「そうですね。リオネルは文字しか覚えてないので、慣用句とか言い回しとか不慣れなままですし」

臨時の先生だったセヴランもうんうんと頷いて、日記を書くことを賛成してくれる。

「・・・?リオネル・・・泣きそう」

アルベールが何を言ったのかは想像できるが、その取引がリオネルにとってはギリギリの範囲なのか、すっごい顔してる。

「ぐぬぬぬぬ」

「どうします?リオネル」

「リオネル。お兄ちゃんと日記を書こうよ。お願い!」

・・・リオネルが耳も尻尾もだらーんと下げて、渋々頷くのが見えた。
そんなに日記を書くのが嫌なの?
それともカミーユさんと交換日記するのが嫌なの?

いい仕事しましたー!とばかりにスッキリした顔で、アルベールがこちらに歩いてきた。

「だいたい何を言ったかわかるけど・・・何を言ったの?」

「もちろん、おやつ禁止です」

アルベール・・・。
結局、食べ物で釣ったのね・・・。

そうして、私たちは王都に向かうビーストを運ぶ冒険者ギルドの馬車に遅れること数日、サン・ブルージュの町を出発するのだった。
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