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出会い編

不愉快な報告

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 レオナードは、父親が倒れてから、自分の執務だけでなく、溜まっている父親の執務の手伝いをしている。レオナードは、メルに会いに行きたいのだが、行く時間が取れない。
 レオナードは、メルが、優しくきれいなため、他の者に取られないか心配だった。レオナードは、信頼できる女性騎士のリサを隠れてメルの護衛をさせた。リサには、メルの様子も報告してもらっている。
 リサは、茶色の長い髪を一つに結び、目は青色で、細身だ。リサは、レオナードの母親の姪だ。レオナードの従妹だ。レオナードより、三つ年上で、剣術に長けており、女性騎士の道を選んだ。小さい頃は、剣術の練習を一緒にした仲だ。姉のような存在でレオナードは、リサを信頼している。リサもレオナードを可愛い弟のように見ている。レオナードの幸せを心から望んでいる。

 リサからは、街にいる時のメルの不愉快な報告が届く。

「メル様は薬の購入は、一人一つと決めています。それなのに売っているすべての薬をくれ、と貴族らしき男性が言いました。売値の五倍、いや一〇倍で買うからすべてくれ。としつこかったのです。 メル様は、素晴らしいですね。購入個数の制限は、変えないとはっきりと申してました。そこで、男性が怒り出してしまって……。隣にいた八百屋のハル様や肉屋のボブ様、並んでいた民たちがメル様の味方をしてくださって……。最後は、メル様の側にいる犬が威嚇して、男性はしぶしぶ一個だけ買って帰っていきました」

(メルの周りには、心強い味方がいるようだ。安心だ。クゥーは、きちんとメルの護衛をしているようだ。今度、お礼に肉でも持っていこう)
 レオナードは、安堵する。

「メル様は、薬の効果のお礼にと男性から、花とお菓子を頂いておりました。 花は、教会に飾り、お菓子は、教会に併設している孤児院の子供たちと食べたようです」
(男性から贈り物をもらうなんて……。メルは、その男性に好意を持たなかっただろうか……。子供たちとお菓子を食べるなんてメルらしいな。メルは、教会や孤児院に行っているのか……)
 レオナードは、不安になるが、メルが、子供たちとお菓子を食べている様子を思い浮かべ、レオナードの頬は自然と緩んだ。


「メル様は、孤児院の少年ダルと少年トムと一緒にメル様の森の家に行ったようです。森の中まではついてはいけませんでしたが、戻ってきたら、沢山の葉や藁、花を三人で持ってました。その後、メル様は、孤児院の少年ダルと孤児院の裏にある荒地を一緒に耕していました。そして、荒地に植える植物の相談をされていました」
(孤児院の少年たちとメルは親しいようだ。あの森の家まで行ったのか……。メルは、孤児院の少年を慕っていないだろうか……)
 レオナードは、不安を感じる。

「メル様は、孤児院の少年ダルに薬や孤児院の女児がつくったリースやバックや帽子を仲良く売りながら、計算を教えてました」
(また、孤児院の少年か……。ダルか……。仲が良いのか……。どんな男なんだ? メルは、ダルを慕っていないだろうか……)
 レオナードは、不安になる。ダルに嫉妬する。
(メルを誰にも渡したくない。私は、どうしたらいいんだ)
 レオナードは、頭を抱える。

「メル様の薬を買いに深緑のフードをかぶった同じ男性が毎回来ます。毎回こられるので私は気味が悪いです。メル様は、いつも苦笑しながら、売っています」
(この報告は気になる。そんなに薬が必要なのか? それともメル目当てか?)
 レオナードは心配になり、リサにメルから目を離さないよう指示を出した。

 ***

 デージーは王立貴族学園で、レオナード殿下の親友であり、側近のアレル・サイネリアから声を掛けられた。
(アレル様も背が高く、穏やかそうな方で素敵ね)

「デージー嬢、すまない。実は、アマリリス嬢について教えてほしいのだ。君は、アマリリス嬢と一緒に住んでいるだろう? なぜ、学園に来てないのだ? 一五歳の貴族で来てないのはアマリリス嬢だけだ」
「アマリリスですか。アマリリスは、病に臥せています。学園に来れる状態ではありません。学園長にも連絡済です」
 デージーは、自分でなく、アマリリスに関心があるアレルに小さな怒りを感じた。デージーは、アマリリスに嫉妬する。

「そうか。一度お見舞いをさせてもらえないだろうか?」
「アマリリスは、人と会うことを拒んでいるんです。申し訳ありません。多分、今の弱った自分を他人には見られたくないのだと思います。察してあげてください」
 デージーは、俯き、辛そうな声で言うが、俯いた顔の口元の口角は上がっている。

 デージーは、今、嘘をついた。これは、クレオナと考えた答えだ。本来の公爵の娘アマリリスは、二か月前に家出している。令嬢が家出して、生きていけるほど、この世は甘くない。家出したアマリリスがどうなったかはデージーたちには、わからない。
(私たちは知らないわ。自分から出て行ったんだもの)

 デージーは、入学時、学園を見回した。アマリリスは来ていなかった。ほっとした。デージーにとって、アマリリスは、従妹だが、好きではなかった。レオナードを取られそうだと思ったからだ。

 二年前、デージーは、王妃主催のお茶会の時、優しい瞳と笑顔でデージーの話を聞いてくれるレオナードに一目ぼれした。デージーは、侯爵令嬢として来ていた。従妹の公爵令嬢のアマリリスも来ていた。デージーは、アマリリスが母親似で、品があり綺麗な少女とわかっていた。そのため、レオナードがアマリリスを気に入るのではないかと不安だった。
 デージーは、アマリリスが気になっていたが、アマリリスは、席に座らず、勝手に草花をさがし、うろうろしていた。それが、レオナードの目をひいた。レオナードがアマリリスのところに行ったのだ。デージーは、悔しかった。アマリリスに怒りが沸いた。

 きっとアマリリスが殿下の気を引こうと考えたのね。ずるがしこいわ。とデージーは思った。二人の間に何があったのかは、デージーは知らない。しかし、メルローズ公爵家に住むようになったら、わかった。レオナードからアマリリス宛に手紙や花が届くのだ。アマリリスは、レオナードに気に入られているようだった。デージーは、悔しかった。デージーとクレオナは、それをアマリリスに渡さないでいた。
 デージーとクレオナは、アマリリスが家出したことを隠し、学園へは、病気で臥せていることにしていた。

 学園に来れば、レオナードと親しくなれるかと思っていたデージーだったが、この学園は、成績順でA、B、Cとクラス分けがされる。レオナードは、当然Aクラス。デージーは勉強が苦手だ。Cクラスだった。 レオナードとお会いする機会が今はまだない。

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