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第一章 遭遇
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「……あれ?」
固まったまま目が離せずにいた陽介は、ゆらゆらとしたその影を見ていて気づいた。
「木ノ芽さん?」
おそるおそる声をかけると、陽介と同じ歳くらいの女性がゆっくりとこちらを向いた。わずかに、その目が見開かれる。
「あ、やっぱり。2組の木ノ芽さんでしょ? 俺、4組の宇都木。宇都木陽介。同じ保健委員の。こんな時間に何やってんの?」
安心した反動で、少しわざとらしいほどに明るく声をかける。心臓がバクバクしているのを知られるのは、なんとなく恥ずかしかった。
木ノ芽と呼ばれたその女性は、陽介の問いかけに応えることもなく、ふいと背を向けて歩き出した。その方向を見て、陽介はあわてて追いかける。
「あの、ちょっと、木ノ芽さん!? どこ行くの?」
彼女の歩き始めた方向は、霊園のさらに奥に続く道だ。夜も遅い時間に女子高校生が一人で行く場所ではない。
追いかけてくる陽介を、その女性は振り向きもしない。
「こんな遅くに一人で危ないよ? 誰か一緒にいるの?」
走って追いつくと、陽介は彼女の前に回りこむ。
あらためて見れば、彼女の着ていたのは、すとんと足元までおちている飾りも何もないシンプルな白いワンピースだけ。見るからに寒そうだ。
軽く息を切らせている陽介を見あげて、その女性は無表情のまま言った。
「ほっといて」
「そういうわけにはいかないよ。もし一人なら、危ないから一緒に」
「あれ」
彼女は振り返ると、置き去りにされた陽介の望遠鏡を指さした。
「置いといていいの?」
「え、いや」
大枚はたいて購入した望遠鏡だ。誰かがくる可能性は限りなく低いが、絶対に来ないとは言い切れない。
「あっ、ちょ……!」
陽介がためらっているうちに、その女性はさっさと行ってしまった。
「木ノ芽……だよなあ」
思わず名前を呼んでしまったが、もしかして人違いだっただろうか。第一、陽介の知っている木ノ芽藍とは、あまりに様子が違いすぎる。
(まあ、あの格好なら出会った方がビビるか)
陽介は、せめて見えなくなるまで、と、望遠鏡を気にしながらその背を見送った。
☆
固まったまま目が離せずにいた陽介は、ゆらゆらとしたその影を見ていて気づいた。
「木ノ芽さん?」
おそるおそる声をかけると、陽介と同じ歳くらいの女性がゆっくりとこちらを向いた。わずかに、その目が見開かれる。
「あ、やっぱり。2組の木ノ芽さんでしょ? 俺、4組の宇都木。宇都木陽介。同じ保健委員の。こんな時間に何やってんの?」
安心した反動で、少しわざとらしいほどに明るく声をかける。心臓がバクバクしているのを知られるのは、なんとなく恥ずかしかった。
木ノ芽と呼ばれたその女性は、陽介の問いかけに応えることもなく、ふいと背を向けて歩き出した。その方向を見て、陽介はあわてて追いかける。
「あの、ちょっと、木ノ芽さん!? どこ行くの?」
彼女の歩き始めた方向は、霊園のさらに奥に続く道だ。夜も遅い時間に女子高校生が一人で行く場所ではない。
追いかけてくる陽介を、その女性は振り向きもしない。
「こんな遅くに一人で危ないよ? 誰か一緒にいるの?」
走って追いつくと、陽介は彼女の前に回りこむ。
あらためて見れば、彼女の着ていたのは、すとんと足元までおちている飾りも何もないシンプルな白いワンピースだけ。見るからに寒そうだ。
軽く息を切らせている陽介を見あげて、その女性は無表情のまま言った。
「ほっといて」
「そういうわけにはいかないよ。もし一人なら、危ないから一緒に」
「あれ」
彼女は振り返ると、置き去りにされた陽介の望遠鏡を指さした。
「置いといていいの?」
「え、いや」
大枚はたいて購入した望遠鏡だ。誰かがくる可能性は限りなく低いが、絶対に来ないとは言い切れない。
「あっ、ちょ……!」
陽介がためらっているうちに、その女性はさっさと行ってしまった。
「木ノ芽……だよなあ」
思わず名前を呼んでしまったが、もしかして人違いだっただろうか。第一、陽介の知っている木ノ芽藍とは、あまりに様子が違いすぎる。
(まあ、あの格好なら出会った方がビビるか)
陽介は、せめて見えなくなるまで、と、望遠鏡を気にしながらその背を見送った。
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