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序章 透の告白
後戻りは選択肢に入れない決意
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ハンドルを握りながら私は、先程の透とのことを回想して思った。
物足りない身体を持て余し気味の私とは違い、部屋を出た彼は普段の表情に戻っていた。
年下で可愛いが甘えた考えは微塵も感じさせない頼れるタイプの男性。 私には過ぎた恋人と心底思っている。 何処とはなしに翳りを感じさせていたのは、こんな理由があったからかもしれない。
待ち合わせた改札口へと並んで歩くふたりは一言もそれの事には触れず、最近嵌まっているK-POPグループの話をし、今度ライブに行こうと盛り上がった。
が、コインロッカーの影でさよならのキスをした時に
「彩香様。愛してます」
と囁かれて体が再び熱くなるのを感じ、焦ってからだを放した。
(私が女王様だなんてそんなものに成れるかしら?)
信号待ちでバックミラーに目を遣ると、後の車の男が左手を女の肩に、不自然に廻しているのが見えた。
(普通なら、ああだよね)
つまらないものを見たような気がした。 そう思う自分に不思議な心持ちがする。
愛されているのだから不満は感じないにしても、全く知り得ない世界に身を置く事になる。 これからどうなっていくのか検討もつかない。 この様な事態に今までの私なら、気を重くしたに違いない。
でも何故だか気持ちが昂り、何かしら期待するかの様な、胸を騒がすものがあった。
(これってSMっていうものよね? アブナイ世界? 誰からも実際に聞いたこと無い世界。 誰にも言えないし訊けない。 私と透だけの秘密なの)
そう考えると口角が上がるのを禁じ得なかった。
(先ずは、どんな世界なのかをしらなくては。 どこかで本を物色しよう)
目に入ったブックショップへ入るべくウインカーを出した。
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――後書きとして――
先ずは、第一章の完結。
まだまだ続きます。
どの位の方に読んで頂けているのか定かでなく、【しおり】が付けていただけると心強くなり嬉しいです。
応援ありがとうございます!
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