元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第4章 おっさん、祭りに参加する

第51話 模索


「次!」
「はい!」

 俺の闘争心は激しい煉獄の炎のように燃えていた。

 なぜか? 当たり前だ。
 手の届く所に至高の自由が存在するからだ。

 賞金さえ貰えば他はどうでもいい。
 名誉、地位、勲章や称号。こんなものを貰っても何の価値にもならない。
 だから俺はすべてを捨てたのだ。当時は金でさえそんなにほしいとは思わなかった。

 しかしだ。ひきこもり生活を始めてから理解したことが一つある。
 
 それは金が無ければなにもできないということだ。

 当たり前だと思うかもしれないが、当時の俺は当たり前どころか金なんて勝手にわいて出てくるものだと思っていた。

 実際にそうだったのだ。
 英雄として時を過ごしていくにつれて名誉や誇りなどというくだらないものと共に金も一緒についてきた。
 だが、英雄という名を捨て名誉も誇りも失った時、お金も自然と出てくることはなくなった。

 まぁ当たり前だ。俺は死んだことになっているんだからな。
 代わりに増えたのは墓前に大量に置いてある花束だけだ。

 普通の人間は金がなければいきていけない。
 これを知った時には既に俺は金の亡者になっていた。

 だがこれは俺にとって初めてと言っても過言ではない確固たる目標だった。
 
 あの至福のひとときを取り戻したい。その欲求が俺を駆り立てるのだ。
 
 本当のところ、魔王退治よりもよっぽどやる気が出る。
 だからこそ掴みたいのだ。今まで感じたことのなかった夢ってやつを……

「あの……レイナード先生?」
「ん? あ、ああ……どうした?」
「い、いえ。なんだかぼーっとされていたみたいだったので」

 レーナの一言で俺は想像の世界から連れ戻された。
 俺は彼女に問題ないとだけ伝える。

「そうですか。疲れているのでしたら無理はしないでくださいね」

 レーナは少し微笑んだ表情を俺に向ける。

 無理か……正直無理をしなければ自由など手に入らないことが分かった。
 ついこの間、金融機関から貰った給与明細を見れば一目瞭然だ。

 全然給与が上がっていない。
 最初にロリババアが言っていた出来高制とは一体なんなのかを問いただしたいくらいだ。
 
 長いスパンをかければ可能かもしれない。しかし俺はそんな甘ったるい考えはしたくないのだ。
 一秒でも早く欲しいものを手にする。
 今の俺にはこういう考え方があった。

 悪いが無理をさせていただくぞ。

 俺は重い腰を上げ、

「さて……とりあえず成すべきことをするか」

 無駄な考えから一度脱し、いまやるべきことを優先する。

「ハルカ、調査はどうだ?」
「あ、レイナード先生! 今の所順調にデータが取れていますよ」

 データ。
 なんのデータかと言うと1年A組全員の総合的な力を図るべく俺が独自に考えた試験方法で力量を測り、それを数値化してまとめたものだ。

 今の魔術講師は目視だけで相手の力量を図ろうとするがそれは俺から言わせれば無能の所業だ。
 どれだけ天才とはいえ、目視だけで力を図れるほど魔術は浅くはない。

 潜在的能力も含めるため、数値ですら怪しい所ではある。
 しかし現状、人類が相手の能力をより近いレベルまで測定できる最も有効的な方法が数値化である以上仕方がないことなのだ。

 だが今の教え人はこれすらしない。
 理由は簡単。面倒だからだ。

 こういうことも相まって今の世の中は自分の力量すら図れない無能な魔術師が増えていく。
 平和ボケなのか昔と比べて随分劣化した世の中になってしまったわけだ。

「そうか。続けてくれ」
「あ、はい! あ、あの……せんせい?」
「ん? どうかしたか?」

 去ろうとする俺にハルカは、

「えっと……この後時間はございまするでしょうか?」
「は……?」

 何をモジモジしているんだ?
 てかなんだございまするって。

 疑問点が多いが、俺は特に何もないと彼女に話す。
 すると彼女の表情は一気に明るくなる。

「本当ですか!? あの、えっと……よろしければこの後、街へ行きませんか?」
「街? 何か用でもあるのか?」
「いや、特にないんですけど散策してみたいなーなんて……」

 なるほど……そういえばハルカはこっちに来てからそんなに経っていないな。
 多少この街の事を知ってないと色々と不便なのは理解できる。
 
 要するに案内をしてほしいというところか……

「分かった。この後街へ行こう」
「い、いいんですか!?」
「ああ、問題はない」
「あ、ありがとうございますっ!」
(やった! これでレイナードせんせいと一緒にいれる!)

 ハルカは満面の笑みで応対する。

 こんなに喜ぶとは……よほど王都の事が知りたかったのだな。
 勉強熱心な所はこういう所にも反映してくるということか。

 俺は少し関心しながらその場を去った。

 その後、各グループごとで試験を受けている生徒たちを順に見て回った。

「ふむ……彼女は空術の魔術に少し能力があるな。逆に剣術に関しては壊滅的なようだな」

 独り言を挿みながら一人一人の能力を見ていく。
 そして数値化されたデータと照合して最終的な判断を下すわけだ。

 ふふふ、我ながら好調な滑り出しだな。

 自己評価に浸る。
 今の所順調だ。データも抜かりなく取れている。

「さてと……ここからどう編成していくかだな」

 俺は脳内で勝利の方程式を編み出すべく、模索を続ける。
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