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婚約破棄編

12.脳筋令嬢の不満爆発

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 はあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

「お嬢……」

「なに?」

「何回バカデカため息をついたら気が済むんですか?」

「何回しても気が済むつもりはないわ」

 私は鬱憤を晴らそうとバトラーを呼び出し、トレーニングを始めていた。

「お気持ちは分かりますが、そんなに高負荷なトレーニングを続けたらお体に障りますよ」

「知らん。むしろ悪くなって婚約破棄になればいい」

 クソ親父に呼びされてから、私の不機嫌さはマックスであった。
 
「なんであのダサ髭面はいつも勝手に決めてくるの!」

 修行用木人を殴りながら、愚痴をこぼす。

 昔からそうだ。
 あの人は家のことしか頭にない。

 私の意見なんて聞いたためしがない。

「フェランド様もお嬢のことを思っての――」

「私のことを思っているのなら事前に相談するのが筋だろうがっ!」

「まぁ……それもそうですけども」

 そもそも結婚とかしたくない。
 どこの馬の骨かも分からない男に嫁ぎにいくなど、ホラー以外の何ものでもない。
 
 私は何事にも縛られない自由な生活を満喫したいの。

 とはいえ、それが許されないことは分かっている。
 私は公爵令嬢だ。

 いずれは親が認めた良家と結婚をし、両家繁栄と国の為に尽力しなければならない。
 
 唯一の方法として、私が爵位を継げることになれば話は変わってくるが基本的には嫡男が継承者となる。
 つまりオリバーがいる限り、爵位継承は無理だということだ。

 まぁ仮に継げたとしても、私がそんな面倒くさいことできるわけがない。

 となると……

「もう家を出ていくしかないわね!」

「なに言ってるんですか」

「私がこの窮地から脱するには、お家追放しかないわ!」

「だから、なに言ってるんですか」

 なんか自分から出ていくのは癪なので、何かやらかして追放してもらえばいい。
 あれ、コレ名案なのでは!?

「とりあえず王家か公爵位を持つ人間を一発殴れば追放されるわよね」

「そんなことしたら、追放だけじゃ済みませんよ」

「じゃあ、どうしろっていうの!」

「そもそも追放されようというお考えを捨ててください。婚約の話は出たとはいっても正式に婚姻関係を結んだわけではないのでしょう?」

「そうだけど、ほぼ決まっているようなものよ。お見合いをセッティングしたのも、私の機嫌を伺ってのことだろうしね」

「でもどちらにせよパーティーには参加しませんと。向こうのメンツもあることですし、関係が拗れると厄介なことになるのはお嬢もご存じでしょう?」

「うっ……」

 それを言われると言葉が出ない。
 心の奥底に眠っていた嫌な思い出が蘇ってくるからだ。

「とりあえずフェランド様よりいただいた資料を見てみては? 何事にもまずは情報からです」

「貴方がそう言うなら、分かったわ……」

 私は渋々了承すると、キリのいいところでトレーニングを切り上げる。

「あ、私は食事とシャワーを済ませたいから先に戻っていてちょうだい。無糖の紅茶を部屋に用意しておいてもらえると嬉しいわ」

「承知致しました」

 そんなわけで私は早急にトレーニング後の食事を摂取し、汗を流すと自室に戻るのだった。
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