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楓奈 vs 白ENDの戦い

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『うわあぁぁぁぁ~~~~んっ!』


 まじっくどーむを突き破り、空中で停止したまま大泣きを続ける幼女。

「な、なんで?」
 
 見た目は、私が会った事のあるメルウちゃんに似ている。
 まるで、女神を模したような、そんな容姿をしている。

「メ、メルウちゃんっ! あれ、もしかして知り合いじゃないのっ!」

 容姿や背格好もそうだけど、雰囲気が酷似している。

「メルウちゃん?」

 ザザ

『…………………』

「メルウちゃん、聞こえないのっ?」

 ザザ―

『…………………』

「メルウちゃん?」

 ザザザ――

 何度呼んでも返事が帰ってこない。
 その代わりノイズのような雑音が脳内に響く。

 もしかして、あの女神もどきと関係があるの?
 あれが、出てきたから通信が出来なくなったの?


『うわあぁぁぁぁ~~~~んっ! うん? あなたは誰?』


 ピタと泣き止み、私を視界に映し声を掛けてくる。
 先ほどまで大泣きしていた目は、今は大きく開かれている。

 いや、そもそも泣いてはいたけど、涙は出ていなかった。

「っ!? 黒い、瞳?」

 私を見る開かれた目は、黒く、瞳孔が白かった。
 まるで、白と黒が逆転しているみたいに。


『あなたは誰?』

 子供らしい、少し甲高い声で話しかけてくる。

「わ、わたしは楓奈。あなたはENDなの?」

『我はエンドだよ。もしかしてあなたが我を開放したの?』

 首を傾げ、クリッとした目で聞いてくる。

「よ、良く分からないよっ! まじっくどーむが黒くなったら、あなたが出てきたんだもんっ! そ、それと、その格好は女神なの? それとも中身はドラゴンなのっ!」

 状況が飲み込めず、混乱したまま白いENDに聞いてみる。

『もういい』

 ヒュッ 

「え? 消えちゃったっ! て、いつの間にっ!?」

 姿が消えたENDは、突如目の前に現れた。
 そして感情の読み取れない、黒い瞳で私を見ている。

「ううっ」

『もうわかった』

「な、何がっ?」

『我がなぜここにいたのかを思い出したんだ』

「…………………」

『そして――――』

「そ、そして?」

『そして、あなたが我の敵だった事も思い出したよ』


 ENDは「ニコッ」と微笑み小さな片腕を上げる。

「えっ?」

 すぐさま、その小さな手が見る見るうちに変色し、変形していく。
 さっきまで見た何かに形を変えていく。


 その漆黒と巨大さと――

「な、な、なっ!」

 禍々まがまがしさと、おぞましさ――

「う、嘘でしょっ!」


 それは黒いENDの腕の部分だった。
 小さかった白い手は、鋭い爪を生やしたドラゴンの腕に形を変えていた。


「な、何それっ? ヤ、ヤバいっ! 『まじっくばりあー』っ!」 


 身の危険を感じ、すぐさま目の前に障壁を張る。


『我を怒らせた仕返しだよ』 


 白ENDの巨大な腕が、真上から振り下ろされる。

 ガィンッ!

 巨大な腕と障壁が衝突し、金属音にも似た効果音を発する。

「よ、よしっ! わたしの魔法で防げたっ!」 

 「グググ」と今まで経験した事ない重みがかかってくるが、何とか堪えられる。
 さすが女神さまがくれた力だ。

「い、いくら大きく、恐くしたって、そんなの効かないよっ! わたしにはメルウちゃんからもらった、凄い力があるんだからねっ!」

 障壁に魔力を込めながら、白いENDに高らかに宣言する。


『それで本気なの? フーナ』 

「え?」

 ガギィ

 巨大な腕を防いでいる障壁を鷲掴みにされる。 

『……………ふふ』

 そしてそのまま――――

 バリ バリ

「う、うそっ!?」

 バリィ ――ンッ!

 少しの抵抗で、容易く破壊された。

「きゃっ!」

 障壁を破壊したENDの腕は、そのまま拳を握り私を殴りつける。

 ドゴォッ!

「がぁっ!」

 私は飛ばされ、元々張っていた自分のマジックドームを突き破り

「うっわあぁぁ――――っ!!」

 ズドォ――――ンッ

 またもや地面にめり込み、そのまま停止する。


「う、ぐぐ、い、痛いっ」

 何とか地面から這いずり、上空に目を向ける。
 
 白いENDは、出現させた巨大な腕を振り回したり、
 拳を握ったり開いたりと、感触を確かめているようだった。


「な、なんで、わたしの魔法が負けちゃったのっ!?」
 白いENDを視界に収めながら自問する。


「そ、それと、今まで痛くなかったのにっ!」
 今は体中に痛みがある事がわかる。


「メ、メルウちゃんとも連絡取れないしっ」
 妨害する電波でも発生しているような。


「もしかして、これ全部が関係してるのっ!?」

 後から生まれ出てきたような、白いENDと。
 そして女神の出来損ないの容姿のドラゴン幼女と。


『も、もし、そうだったとして、考えられるのは――――』


 あの白いENDは、見かけ通りに女神の力を保有している危険性。
 その影響で、私の魔法も衣装も肉体の強さも通用しない可能性。


『で、でもそれじゃ、わたしの力はあいつには通用しないんじゃないのっ! だって相手が本物の女神だったら、わたしの力は全部もらい物――――』


 だったら、勝てるわけが無い。
 与えた方が、与えられた者より、絶対に弱いわけが無い。


「だ、だから何っ! そんなのやってみないと分からないじゃんっ! 今のはわたしが勝手に考えて怯えてるだけ。それにわたしはメドたちを守るって決めたんだからっ!」


 「ふんすっ」と気合を入れて白ENDを睨む。

 私には勝たないといけない理由がある。
 負けるわけにはいかない、なんて消極的な事ではない。

 五体満足無事で勝たなければならない。

「じゃないと、メドもアドも悲しんじゃうからねっ! ……そうだよね?」

 言ったはいいが、何故か疑問形になってしまう。
 特にアドを思い出してそう思う。

 それでも私のやる事は変わらない。
 メドとアドを笑顔にさせるのが目的なんだから。

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