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第9話
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「……お、王子! サイクロンが急に進行方向を変えて王都に向かってきています!!」
大臣が半べそとともに叫んできた。
……まったく、こいつは情けない。
「王都に来たのならば、結果的に良かったじゃないか」
「結果的に良かった、ですか!? 何も良くはありませんよ!」
「なんだと? 馬鹿か? 魔法結界を発動すれば、王都は守れるだろう?」
「そ、そうですが……王都全域を守れるほどの結界となると、魔石の貯蓄は良くて二回分です」
「ふん、二回もあればそうそう問題はないだろう。すぐに結界の準備を行え。このサイクロンをオレの采配で乗り切ってみせよう」
オレがそう指示を出すと、すぐに大臣は一礼をして去っていった。
……少し不服そうな顔をしていたのが気に食わないな。まったく、あの大臣は政治の面では有能だが、こういう土壇場の機転が利かないで困るな。
と、入れ替わりでネヨッタがやってきた。
ドレスの裾を掴んで一礼をしてきた彼女が、少し不安そうにこちらを見てきた。
「あ、あのブレイル王子……その、サイクロンが近づいているという話を聞きまして来たのですが……」
「ああ、安心しろ。先ほど大臣を見ただろう? これより結界を張り、王都全域を守る」
「そ、そうなのですね……よかったです」
不安そうにしていたネヨッタの頬に、オレは軽くキスをした。
「そう不安がらなくていいさ。オレがこの国を治める以上、この王都を傷つけさせるつもりはないさ」
「……はい、王子」
うるうるとした瞳でこちらを見てくるネヨッタを軽く抱きしめる。
「さて……それじゃあ結界がきちんと発動するかどうか、外に様子でも見にいくとしようか」
「……そうですね!」
ネヨッタとともに並んで歩き、オレは外に出た。
大臣や騎士があわただしく動き、準備を進めている。
そよ風が、王城に流れる。だんだんと風は強くなっていく。
……サイクロンが近づいてきているのだろう。
「お、おい急げ!」
「わ、わかっております!」
何をやっているんだ!?
騎士たちは慌てた様子で準備をしているが、どんどん風が強くなっていく。
「お、王子……大丈夫なのでしょうか!?」
「あ、ああああ安心しろ! おい! 何をしているんだ!」
「い、今やっと準備ができました!」
遅いだろ! まったく!
次の瞬間、風がやんだ。
うっすらと膜のようなものが王都全体を包んでいるのがわかる。その中を、サイクロンが突き進んできた。
すさまじい音だった。まるで結界が壊れてしまうのではないかというものだった。
……不安はあったが、やがてサイクロンは通り過ぎていった。
「まったく……結界の発動に手間取るな馬鹿者どもが」
「す、すみません……さ、災害なんて初めてでしたので」
「ふん、まあいい」
「王子、ひとまず被害のあった街には復興支援を行う必要があります」
「ああ、わかった。適当に予算を組んでおいてくれ。オレはネヨッタと少し出かけてくる」
「か、かしこまりました……」
さて、一仕事を終えたことだし、ゆっくり遊ぼうか!
____________________________________________________
あとがき
新作書きました! 気になる方は作者名をクリックして読んでくれたら嬉しいです!
『愛する人を国外追放された聖女は国を捨てました。だって、愛する人のために聖女になったんですもの』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/468674289/913384760
大臣が半べそとともに叫んできた。
……まったく、こいつは情けない。
「王都に来たのならば、結果的に良かったじゃないか」
「結果的に良かった、ですか!? 何も良くはありませんよ!」
「なんだと? 馬鹿か? 魔法結界を発動すれば、王都は守れるだろう?」
「そ、そうですが……王都全域を守れるほどの結界となると、魔石の貯蓄は良くて二回分です」
「ふん、二回もあればそうそう問題はないだろう。すぐに結界の準備を行え。このサイクロンをオレの采配で乗り切ってみせよう」
オレがそう指示を出すと、すぐに大臣は一礼をして去っていった。
……少し不服そうな顔をしていたのが気に食わないな。まったく、あの大臣は政治の面では有能だが、こういう土壇場の機転が利かないで困るな。
と、入れ替わりでネヨッタがやってきた。
ドレスの裾を掴んで一礼をしてきた彼女が、少し不安そうにこちらを見てきた。
「あ、あのブレイル王子……その、サイクロンが近づいているという話を聞きまして来たのですが……」
「ああ、安心しろ。先ほど大臣を見ただろう? これより結界を張り、王都全域を守る」
「そ、そうなのですね……よかったです」
不安そうにしていたネヨッタの頬に、オレは軽くキスをした。
「そう不安がらなくていいさ。オレがこの国を治める以上、この王都を傷つけさせるつもりはないさ」
「……はい、王子」
うるうるとした瞳でこちらを見てくるネヨッタを軽く抱きしめる。
「さて……それじゃあ結界がきちんと発動するかどうか、外に様子でも見にいくとしようか」
「……そうですね!」
ネヨッタとともに並んで歩き、オレは外に出た。
大臣や騎士があわただしく動き、準備を進めている。
そよ風が、王城に流れる。だんだんと風は強くなっていく。
……サイクロンが近づいてきているのだろう。
「お、おい急げ!」
「わ、わかっております!」
何をやっているんだ!?
騎士たちは慌てた様子で準備をしているが、どんどん風が強くなっていく。
「お、王子……大丈夫なのでしょうか!?」
「あ、ああああ安心しろ! おい! 何をしているんだ!」
「い、今やっと準備ができました!」
遅いだろ! まったく!
次の瞬間、風がやんだ。
うっすらと膜のようなものが王都全体を包んでいるのがわかる。その中を、サイクロンが突き進んできた。
すさまじい音だった。まるで結界が壊れてしまうのではないかというものだった。
……不安はあったが、やがてサイクロンは通り過ぎていった。
「まったく……結界の発動に手間取るな馬鹿者どもが」
「す、すみません……さ、災害なんて初めてでしたので」
「ふん、まあいい」
「王子、ひとまず被害のあった街には復興支援を行う必要があります」
「ああ、わかった。適当に予算を組んでおいてくれ。オレはネヨッタと少し出かけてくる」
「か、かしこまりました……」
さて、一仕事を終えたことだし、ゆっくり遊ぼうか!
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『愛する人を国外追放された聖女は国を捨てました。だって、愛する人のために聖女になったんですもの』
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