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174.いっぱい呼んで応援して
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「カリス様の最初の応援を、天使に取られるとは何という不覚」
アガレスがぶつぶつと呟く声に、僕は首を傾げた。応援が欲しいの? だったらいっぱいあげるのに。
「パパもアガレスも、ベロも皆! 悪魔全員頑張って!!」
僕の担当は応援なの。だから欲しい人は言って欲しい。そう伝えたら、周りを囲んでる悪魔が一斉に名前を口にした。パパを見たら笑ってるから、名前を呼んで応援するよ。
「ダンダリオン、ゼパル、アイム、えっと……フォカロル、デカラビア、アンドロマリウスも。頑張れ!! でもケガしないでね」
僕に聞こえた名前は全部呼んだ?
「私も呼んで欲しかったわ」
「ごめん、アモンもケガしないように頑張って」
「うふふ、ありがとう」
アモンはパパとアガレスを応援した時に、声に出したと思ったけど……違ったみたい。パパが不満そうだから、ほっぺにキスした。ちゅっと音をさせてキスすると、パパの顔がぱっと明るくなる。僕のキスで元気になったかな。
上昇する途中で、片方の羽の天使が出てきた。その横に顔だけの天使もいる。耳のところから羽だけ生えてるの。大きいお顔だな。
「ここからは僕が守るね」
「ガブリエルだ、頑張れ」
頑張れって言うのが、僕の大切なお役目だ。それで皆がケガしないなら、僕は何回だって言うよ。パパの腕の中から叫んだら、ガブリエルが両手を振ってくれた。後ろから顔だけの天使が攻撃するけど、ミカエルの時みたいに消えちゃう。
「ありがとう、もっと上でウリエル達も待ってるぞ」
「うん、いってきます」
顔だけ天使と戦うガブリエルを見送り、まだ上へ飛ぶ。空の色が黄色くなった。僕の知ってる空はいつも青や灰色で、たまに白なのに。朝と夕方は赤くなったりするよね。でも黄色は初めてだった。
「綺麗」
「っ、俺はもう無理です」
「おれも。すみません」
数人の騎士の人が離脱した。苦しそう。だから下に戻る間にケガしないように、応援する。
「気をつけて帰ってね、頑張って」
僕は苦しくないけど、パパは少し顔色が悪い。アガレスも真っ青だった。アモンは両腕で自分を抱き締めてる。どこか痛いのかな。
「具合悪いの?」
「違う。カリスは何ともないか?」
「うん」
具合悪くないけど苦しそうなパパの頬を撫でる。痛いのも苦しいのも消えますように。皆一緒に上まで行けるといいな。そう願ったら、パパが驚いた顔をした。
「すごいな……カリスの効果か」
「楽になりました」
「ありがとうね、カリス様」
お礼を言うアガレスとアモンに笑って、僕はパパを見つめる。パパも僕をじっと見ていた。まだ羽は動いて飛んでいる。上へ上へ。何があるのかな。
「アザゼルの力にそっくりだ」
僕を見て目を細めたパパの言葉に首を傾げる。アザゼルって誰?
*********************
新作のお知らせ
【獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ】
魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。
「私ね、皆を守りたいの」
幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/470462601/368598742
アガレスがぶつぶつと呟く声に、僕は首を傾げた。応援が欲しいの? だったらいっぱいあげるのに。
「パパもアガレスも、ベロも皆! 悪魔全員頑張って!!」
僕の担当は応援なの。だから欲しい人は言って欲しい。そう伝えたら、周りを囲んでる悪魔が一斉に名前を口にした。パパを見たら笑ってるから、名前を呼んで応援するよ。
「ダンダリオン、ゼパル、アイム、えっと……フォカロル、デカラビア、アンドロマリウスも。頑張れ!! でもケガしないでね」
僕に聞こえた名前は全部呼んだ?
「私も呼んで欲しかったわ」
「ごめん、アモンもケガしないように頑張って」
「うふふ、ありがとう」
アモンはパパとアガレスを応援した時に、声に出したと思ったけど……違ったみたい。パパが不満そうだから、ほっぺにキスした。ちゅっと音をさせてキスすると、パパの顔がぱっと明るくなる。僕のキスで元気になったかな。
上昇する途中で、片方の羽の天使が出てきた。その横に顔だけの天使もいる。耳のところから羽だけ生えてるの。大きいお顔だな。
「ここからは僕が守るね」
「ガブリエルだ、頑張れ」
頑張れって言うのが、僕の大切なお役目だ。それで皆がケガしないなら、僕は何回だって言うよ。パパの腕の中から叫んだら、ガブリエルが両手を振ってくれた。後ろから顔だけの天使が攻撃するけど、ミカエルの時みたいに消えちゃう。
「ありがとう、もっと上でウリエル達も待ってるぞ」
「うん、いってきます」
顔だけ天使と戦うガブリエルを見送り、まだ上へ飛ぶ。空の色が黄色くなった。僕の知ってる空はいつも青や灰色で、たまに白なのに。朝と夕方は赤くなったりするよね。でも黄色は初めてだった。
「綺麗」
「っ、俺はもう無理です」
「おれも。すみません」
数人の騎士の人が離脱した。苦しそう。だから下に戻る間にケガしないように、応援する。
「気をつけて帰ってね、頑張って」
僕は苦しくないけど、パパは少し顔色が悪い。アガレスも真っ青だった。アモンは両腕で自分を抱き締めてる。どこか痛いのかな。
「具合悪いの?」
「違う。カリスは何ともないか?」
「うん」
具合悪くないけど苦しそうなパパの頬を撫でる。痛いのも苦しいのも消えますように。皆一緒に上まで行けるといいな。そう願ったら、パパが驚いた顔をした。
「すごいな……カリスの効果か」
「楽になりました」
「ありがとうね、カリス様」
お礼を言うアガレスとアモンに笑って、僕はパパを見つめる。パパも僕をじっと見ていた。まだ羽は動いて飛んでいる。上へ上へ。何があるのかな。
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僕を見て目を細めたパパの言葉に首を傾げる。アザゼルって誰?
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「私ね、皆を守りたいの」
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