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外伝
外伝1−2.全員でのお出かけになった
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翌朝、準備が整った私は大きなツバの帽子を被り、ワンピース姿だった。向日葵模様なのよ。明るい黄色だけど、葉やオレンジの花びらも混じってて、全体に華やかな感じ。行き先が寒いと聞いて、上着も用意した。
帽子の上に、本物の向日葵を飾ってもらった。この世界の向日葵は、見上げる大きさじゃなくて鉢植えで育てる。ミニ向日葵なので、4本を束にして挿してもらった。
「さすがサラちゃんね、とても似合うわ」
「うむ、我が娘の愛らしさが際立っている」
……あれ? 全員で行く話だったっけ? リディとアゼスが駆けつけて、昨日から泊まり込みのエルが荷物を持って、私はアランと手を繋いでる。つまり聖獣全員集合だった。
「アゼス、お仕事はいいの?」
「そなたとの旅行以上に、大切な仕事はないぞ」
「そうよ。ここで仕事を選んだら羽根を引き抜いちゃうんだから」
笑顔で相槌を打つ妻に、引き攣る夫。これがこの世界最大の帝国を治める皇帝夫妻なのよね。いろいろと怖いわ。この会話って、もう国家秘密じゃないかしら。
「出かけよう! 遅くなるし」
エルの言葉で、慌てて全員が準備を始めた。ドラゴンの住処はアゼスが知ってる。今回は全員が小型化して、アゼスに運んでもらう。居場所が説明出来ないらしいのよ。転移の座標が取れないから、アランは黒猫サイズで私のお膝だった。左側に子狐リディ、反対側はテディベアなエルの配置よ。これなら安全だわ。
空の旅は非常に快適で、ここ数十年で慣れた私も酔うことはない。アゼスも上昇気流を上手に利用して、くるくると高度を上げた。魔法で冷気や強風を遮るので、危険はほぼゼロなの。のんびりと飴を舐めながら、遊覧飛行と洒落込んだ。
麦畑の上を飛び越え、緑の森を覗きながら山へ向かう。連なる高い山脈が見える頃には、下に民家は無くなっていた。
「この先は人が住まない地域よ」
リディが説明を入れる。今は夏なのに、はるか下の木々は凍っているみたい。針葉樹っぽい木が多くて、うっすら白く見えた。
「白い毛が生えた葉なのですよ」
アランによれば、凍りつくのを防ぐために産毛のような葉の木々が生えるのだとか。表面に水滴や氷がついて枯れないよう、自衛してるのね。産毛の先で凍れば銀色に光って見える、それが今の状況だった。
きらきらした銀色の森を抜けて、その先はいきなり樹木が消えた。森林限界って聞いたことがあるけど、それかな。ここより上は木々が育てない環境なんだと思う。山の頂上は真っ白だった。
「凍ってるの?」
「ええ。ドラゴンが住んでるのはこの先ね」
「ドラゴンって爬虫類じゃないのね」
爬虫類なら寒い場所は嫌いで住まない。その分類は初めて聞いた、とエルが驚いた顔であれこれ尋ねてきた。説明している間に住処が近づいたのか、アゼスが警告する。
「下降するぞ、寒さ対策と落下防止をしっかり行え」
私に対しては「下降するぞ」だけね。あとは残る3人向けだった。リディがサイズを変更して、ふわふわの尻尾で私を守るように包む。がっちりと私の腕を掴んだエルが、身を伏せた。
ふわっとお腹の辺りが持ち上げられたような感覚が襲い、私も上体を倒す。ジェットコースターで落下する瞬間みたいな、お腹の中を掻き回される感覚と鳥肌。降下するアゼスの羽が一部凍っていく。
「アゼス、寒くないの!?」
「平気だ、飛び込むぞ」
山肌に向かってる。このままじゃ激突しちゃう!! 冷や汗がどっと出た。
帽子の上に、本物の向日葵を飾ってもらった。この世界の向日葵は、見上げる大きさじゃなくて鉢植えで育てる。ミニ向日葵なので、4本を束にして挿してもらった。
「さすがサラちゃんね、とても似合うわ」
「うむ、我が娘の愛らしさが際立っている」
……あれ? 全員で行く話だったっけ? リディとアゼスが駆けつけて、昨日から泊まり込みのエルが荷物を持って、私はアランと手を繋いでる。つまり聖獣全員集合だった。
「アゼス、お仕事はいいの?」
「そなたとの旅行以上に、大切な仕事はないぞ」
「そうよ。ここで仕事を選んだら羽根を引き抜いちゃうんだから」
笑顔で相槌を打つ妻に、引き攣る夫。これがこの世界最大の帝国を治める皇帝夫妻なのよね。いろいろと怖いわ。この会話って、もう国家秘密じゃないかしら。
「出かけよう! 遅くなるし」
エルの言葉で、慌てて全員が準備を始めた。ドラゴンの住処はアゼスが知ってる。今回は全員が小型化して、アゼスに運んでもらう。居場所が説明出来ないらしいのよ。転移の座標が取れないから、アランは黒猫サイズで私のお膝だった。左側に子狐リディ、反対側はテディベアなエルの配置よ。これなら安全だわ。
空の旅は非常に快適で、ここ数十年で慣れた私も酔うことはない。アゼスも上昇気流を上手に利用して、くるくると高度を上げた。魔法で冷気や強風を遮るので、危険はほぼゼロなの。のんびりと飴を舐めながら、遊覧飛行と洒落込んだ。
麦畑の上を飛び越え、緑の森を覗きながら山へ向かう。連なる高い山脈が見える頃には、下に民家は無くなっていた。
「この先は人が住まない地域よ」
リディが説明を入れる。今は夏なのに、はるか下の木々は凍っているみたい。針葉樹っぽい木が多くて、うっすら白く見えた。
「白い毛が生えた葉なのですよ」
アランによれば、凍りつくのを防ぐために産毛のような葉の木々が生えるのだとか。表面に水滴や氷がついて枯れないよう、自衛してるのね。産毛の先で凍れば銀色に光って見える、それが今の状況だった。
きらきらした銀色の森を抜けて、その先はいきなり樹木が消えた。森林限界って聞いたことがあるけど、それかな。ここより上は木々が育てない環境なんだと思う。山の頂上は真っ白だった。
「凍ってるの?」
「ええ。ドラゴンが住んでるのはこの先ね」
「ドラゴンって爬虫類じゃないのね」
爬虫類なら寒い場所は嫌いで住まない。その分類は初めて聞いた、とエルが驚いた顔であれこれ尋ねてきた。説明している間に住処が近づいたのか、アゼスが警告する。
「下降するぞ、寒さ対策と落下防止をしっかり行え」
私に対しては「下降するぞ」だけね。あとは残る3人向けだった。リディがサイズを変更して、ふわふわの尻尾で私を守るように包む。がっちりと私の腕を掴んだエルが、身を伏せた。
ふわっとお腹の辺りが持ち上げられたような感覚が襲い、私も上体を倒す。ジェットコースターで落下する瞬間みたいな、お腹の中を掻き回される感覚と鳥肌。降下するアゼスの羽が一部凍っていく。
「アゼス、寒くないの!?」
「平気だ、飛び込むぞ」
山肌に向かってる。このままじゃ激突しちゃう!! 冷や汗がどっと出た。
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