上 下
4 / 10

4

しおりを挟む
次のお茶会の日。

私はお茶菓子にと街でマドレーヌを買った。

ローゼリアの記憶にユーリ様はこのお店のマドレーヌが好きだとあったからだ。

実際それは事実らしくマドレーヌを渡したらとても嬉しそうな顔をした。

なんだそういう顔もできるじゃないか。

と思ったがやはりお茶会では通常運転。

何故だろう?

どうしても分からない私はユーリ様に尋ねた。

「ユーリ様はどうしてそんなに無愛想なのですか?」

と。

するとユーリ様が一瞬目を見開きすぐに下を向いて

「別にそんなつもりはない」

と言った。

聞き方を間違えたのだろう。

この日は前回以上に会話もなくお茶会が終わってしまった。

溺愛どこ?

溺愛プリーズ!!



帰宅後再び私は難しい顔をしていた。

やはりどんなに考えてもこの世界が舞台の小説が思い当たらないからだ。

一度はまあいいやと開き直ったがユーリ様攻略の為にはやはり思い出すべきだろうと思い直したのだ。

だけどいくら考えても分からない。

まるでユーリ様の塩対応のようだ。

いや、塩ではなく単なる無愛想か。

さてどうしたものか?

ふとマドレーヌを渡した時のユーリ様の顔が頭をよぎる。

嬉しい時はちゃんと嬉しい顔はするんだよなぁ…

あの顔は素敵だったな…

気付けば私の顔が熱くなっていた。

私は両手で顔を扇いで熱を逃す。

これは一体?

ふとローゼリアの記憶が流れてきた。

幼いユーリ様の笑顔だ。

とても可愛い。

ユーリ様は本当はこんな風に笑うのか。

私は今のユーリ様の笑顔を想像する。

こ、これは…

それは想像でしかないのにとても素敵な笑顔だった。

心臓の鼓動が速くなりユーリ様の生の笑顔が見たいと思った。

そしたら急にいてもたってもいられなくなる。

よし、ユーリ様を笑顔にしよう!

こうして私は自分の気持ちには気付かないまま小説のことも忘れてそう心に決めたのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

彼女を悪役だと宣うのなら、彼女に何をされたか言ってみろ!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:12,370pt お気に入り:107

ヘタレ女の料理帖

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:133

虐げられた公爵令嬢は辺境の吸血伯に溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:476

ざまぁされちゃったヒロインの走馬灯

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,224pt お気に入り:58

わたしたち、いまさら恋ができますか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,131pt お気に入り:379

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28,081pt お気に入り:11,874

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,485pt お気に入り:6,131

なんで元婚約者が私に執着してくるの?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:15,216pt お気に入り:1,876

処理中です...