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第35話【元勇者、ギルドの依頼板に絶句する】
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「――王都の外壁が見えて来ましたのでもう少しですよ」
これからの予定のすり合わせを済ませた俺たちの馬車はポンドール王都の巨大な門のすぐそばまで無事にたどり着いていた。
「止まれ。旅の行商人だな? 規定の通行料を支払ったら入ってもいいぞ」
大きな門のでは多くの人々が出入りしていると思っていたが実のところ商隊の馬車が数台いるだけで旅人でごった返すということも無かった。
「思ったよりも出入りする人たちが少ないんだな」
「隣町からでも結構な距離がありますからね。単独で歩いてくる人なんてほとんど居ないと思いますよ」
「それもそうか、わざわざ大変な思いをして歩いてくるより少しばかりお金を出して乗り合い馬車に乗ったほうが楽だし便利だもんな」
「そういう事ですね。人数が少ないと私たちも審査が早くて助かりますよ」
マリーはそう言って係の者に規定の通行料を支払ってから馬車を街に入れた。
「それじゃあ先にアルフさんの用事を片付けておきましょう。えっと、冒険者ギルドで良かったのですよね?」
「ああ、場所は分かるのか?」
「さっき、門で街の主な施設の場所について教えてもらいましたので把握はしています」
「それは助かる。見た目はだいたい何処の国でも似たような建物だから見れば分かるが流石にどこの地区に建てられるかまでは分からないからな」
「どういたしまして。あ、そこの角を曲がったところにあるようですね」
「意外と近いところにあって良かったよ。馬車はギルドのそばに停めて一緒に入るとしよう」
「わかりました。では、そうしますね」
マリーはそう答えるとギルドのそばに併設されている小屋に馬車を停めて一緒に冒険者ギルドの入口へと歩いていった。
――からんからん。
冒険者ギルドのドアを開くとドア鐘の音が鳴り近くにいた受付嬢が声をかけてくる。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「行商人の護衛依頼中に立ち寄ってみたんだが、今しがた
ギルドへの依頼はどんなものが多いかを知りたいと思ってな。元々はエンダーラで活動をしていたが冒険者ランクも上がったのでそろそろ他の国にも活動の範囲を広げたいと思ってるんだ」
「それはそれは、現在のランクをお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ランクBだ」
俺はそう言ってギルドカードを受付嬢に提示した。
「そちらの方とパーティーを組まれているのでしょうか?」
俺のすぐ後ろに控えていたマリーを見て彼女がそう聞いてきたので「いや、彼女は先ほど言った行商人の護衛依頼の依頼主が彼女なんだ」と答えた。
「え!? お若い商人さんなのですね。いえ、失礼しました。冒険者ギルドに依頼主と共に来られる方は珍しいので少しばかり驚いただけです。えっとランクBで受けられる依頼についてでしたね。主なものはそちらに掲示されているものになりますが、今現在は特殊な依頼はありません。常時依頼に関してはこの限りではありませんが割の良い依頼のものは少なくなっています」
「そうか、まあ現在は護衛の依頼中だから受けられるものが無いとは思うが一応掲示板の方も見てもいいか?」
「はい、ご自由にご覧ください。もしも受けたい依頼があればカウンターへお持ち頂ければ受付処理はさせてもらいますのでよろしくお願いします」
受付嬢はそう言うとお辞儀をして自らの仕事へと戻って行った。
「じゃあ見させてもらってから帰るとしよう。えっと、こっちの板は常時依頼になるのか……ホーンラビットにボアの討伐か、食用肉の依頼が結構あるんだな。そのほかの依頼は……うーん、ランクの低い者が受けるような雑用依頼ばかりだな。そういえば受付でもランクに見合う依頼は無いと言ってたな」
俺はぶつぶつと小声で独り言を言いながら依頼の内容を見て行った。
「なにか良い依頼はありましたか?」
難しい顔をする俺を見てマリーがそう声をかけてくれる。
「いや、これといって受けられそうな依頼は無かったよ。まあ、もっとも今はマリーさんの依頼中だから新たに受けるつもりは無いんだが、王都のギルドでこの程度の依頼しか無いとなるとこの先冒険者としてやっていけるかが心配になってくるよ」
「まあ、今の時間だからそうなのかもしれませんし結論を出すのはまだ早いと思いますよ」
俺の弱気にマリーが励ましの言葉をかけてくれる。
「そうだよな。このギルドでは良い依頼は見つからなかったけどマイルーンに行けばまた違ったものがあるかもしれないからな。よし、それじゃあ次はマリーさんの用事を済ませに商業ギルドに行くとしようか」
「え? もう冒険者ギルドは大丈夫なんですか?」
あまりの早さにマリーが心配して俺の顔を見ながら聞いてきた。
「ああ。常時依頼の内容が分かっただけでも収穫はあったからな。とりあえず金が無くなりそうなら肉を納品すれば良いらしいからな」
「お肉ですか? でもそんなに大量には運べな……」
マリーはそう言いかけて俺のマジックバックをちらりと見て「なるほど」と理解したようにうなずいた。
これからの予定のすり合わせを済ませた俺たちの馬車はポンドール王都の巨大な門のすぐそばまで無事にたどり着いていた。
「止まれ。旅の行商人だな? 規定の通行料を支払ったら入ってもいいぞ」
大きな門のでは多くの人々が出入りしていると思っていたが実のところ商隊の馬車が数台いるだけで旅人でごった返すということも無かった。
「思ったよりも出入りする人たちが少ないんだな」
「隣町からでも結構な距離がありますからね。単独で歩いてくる人なんてほとんど居ないと思いますよ」
「それもそうか、わざわざ大変な思いをして歩いてくるより少しばかりお金を出して乗り合い馬車に乗ったほうが楽だし便利だもんな」
「そういう事ですね。人数が少ないと私たちも審査が早くて助かりますよ」
マリーはそう言って係の者に規定の通行料を支払ってから馬車を街に入れた。
「それじゃあ先にアルフさんの用事を片付けておきましょう。えっと、冒険者ギルドで良かったのですよね?」
「ああ、場所は分かるのか?」
「さっき、門で街の主な施設の場所について教えてもらいましたので把握はしています」
「それは助かる。見た目はだいたい何処の国でも似たような建物だから見れば分かるが流石にどこの地区に建てられるかまでは分からないからな」
「どういたしまして。あ、そこの角を曲がったところにあるようですね」
「意外と近いところにあって良かったよ。馬車はギルドのそばに停めて一緒に入るとしよう」
「わかりました。では、そうしますね」
マリーはそう答えるとギルドのそばに併設されている小屋に馬車を停めて一緒に冒険者ギルドの入口へと歩いていった。
――からんからん。
冒険者ギルドのドアを開くとドア鐘の音が鳴り近くにいた受付嬢が声をかけてくる。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「行商人の護衛依頼中に立ち寄ってみたんだが、今しがた
ギルドへの依頼はどんなものが多いかを知りたいと思ってな。元々はエンダーラで活動をしていたが冒険者ランクも上がったのでそろそろ他の国にも活動の範囲を広げたいと思ってるんだ」
「それはそれは、現在のランクをお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ランクBだ」
俺はそう言ってギルドカードを受付嬢に提示した。
「そちらの方とパーティーを組まれているのでしょうか?」
俺のすぐ後ろに控えていたマリーを見て彼女がそう聞いてきたので「いや、彼女は先ほど言った行商人の護衛依頼の依頼主が彼女なんだ」と答えた。
「え!? お若い商人さんなのですね。いえ、失礼しました。冒険者ギルドに依頼主と共に来られる方は珍しいので少しばかり驚いただけです。えっとランクBで受けられる依頼についてでしたね。主なものはそちらに掲示されているものになりますが、今現在は特殊な依頼はありません。常時依頼に関してはこの限りではありませんが割の良い依頼のものは少なくなっています」
「そうか、まあ現在は護衛の依頼中だから受けられるものが無いとは思うが一応掲示板の方も見てもいいか?」
「はい、ご自由にご覧ください。もしも受けたい依頼があればカウンターへお持ち頂ければ受付処理はさせてもらいますのでよろしくお願いします」
受付嬢はそう言うとお辞儀をして自らの仕事へと戻って行った。
「じゃあ見させてもらってから帰るとしよう。えっと、こっちの板は常時依頼になるのか……ホーンラビットにボアの討伐か、食用肉の依頼が結構あるんだな。そのほかの依頼は……うーん、ランクの低い者が受けるような雑用依頼ばかりだな。そういえば受付でもランクに見合う依頼は無いと言ってたな」
俺はぶつぶつと小声で独り言を言いながら依頼の内容を見て行った。
「なにか良い依頼はありましたか?」
難しい顔をする俺を見てマリーがそう声をかけてくれる。
「いや、これといって受けられそうな依頼は無かったよ。まあ、もっとも今はマリーさんの依頼中だから新たに受けるつもりは無いんだが、王都のギルドでこの程度の依頼しか無いとなるとこの先冒険者としてやっていけるかが心配になってくるよ」
「まあ、今の時間だからそうなのかもしれませんし結論を出すのはまだ早いと思いますよ」
俺の弱気にマリーが励ましの言葉をかけてくれる。
「そうだよな。このギルドでは良い依頼は見つからなかったけどマイルーンに行けばまた違ったものがあるかもしれないからな。よし、それじゃあ次はマリーさんの用事を済ませに商業ギルドに行くとしようか」
「え? もう冒険者ギルドは大丈夫なんですか?」
あまりの早さにマリーが心配して俺の顔を見ながら聞いてきた。
「ああ。常時依頼の内容が分かっただけでも収穫はあったからな。とりあえず金が無くなりそうなら肉を納品すれば良いらしいからな」
「お肉ですか? でもそんなに大量には運べな……」
マリーはそう言いかけて俺のマジックバックをちらりと見て「なるほど」と理解したようにうなずいた。
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