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6話 リガインの失態 その2
しおりを挟むその日はジーノ様が屋敷に来てくれた日だった。最初に屋敷に来てくれた日から、彼は時々来てくれている。正直、王子殿下に来てもらうのは気が引けるんだけれど、ジーノ様は全く気にしている素振りがなかった。
「毎回、本当に申し訳ありません……本来なら、私の方が出向かないと行けないのに」
「そんな心配は無用だ、フォルナ。私が君の様子を見に来ているだけだからな」
「あ、ありがとうございます……」
「あ、いや……」
お互い顔が赤くなってしまった。思わず視線を逸らしてしまう。ジーノ様の気持ちを聞かされているからだ。彼は以前に、私に会えたことを嬉しいと言ってくれた。その後に私のことが好きだとも言ってくれている。
私は非常に戸惑ってしまったけれど、とても嬉しいことだと返したのだ。マリーヌ様と新たに婚約したリガイン様なんかを気遣うつもりはないけれど、まだ完全な答えを出せてはいない。現在は保留状態になっているのだった。
「しかし……私が変なタイミングで告白してしまっただけに、こういう風に妙な空気になることが増えたな。その点に関しては申し訳ない」
「いえ、ジーノ様は悪くありません! 私が答えを出せなかったのが悪いんです……!」
「いや、婚約破棄をされて時間の経っていない女性に対して、告白はするものではなかった。その部分は確実に、私の反省点だよ」
「ジーノ様……」
ジーノ様は本当に優しい言葉を口にしてくれた。私のことを第一に考えてくれているようだ。とても申し訳ないことだけれど、これを否定するのは逆に失礼に当たってしまうだろうか。だから私はそれ以上言わないことにした。
「ジーノ様、必ずお返事は行いますので、もう少しだけ待っていただけますでしょうか?」
「ああ、分かっている。私はいつでも待っているよ」
「ありがとうございます、ジーノ様」
「失礼致します。フォルナ様、ジーノ様……少し宜しいでしょうか?」
「アリーシャ? どうかしたの?」
「アリーシャ嬢か……なんだろうか?」
突然、私の部屋を訪ねて来たのはメイドのアリーシャだった。彼女にしては少し焦っているように感じられるけど、何かあったのかしら?
「リガイン・ブローフェルト公爵とマリーヌ・セドラ侯爵令嬢がお見えになっております」
「ええっ!? あの二人が……?」
「はい」
なんで今頃になって訪ねて来るのかしら……私に用事なんてないだろうに。
「アッバース家が、ブローフェルト公爵家の事業から撤退したことへの抗議みたいですね。今、旦那様がお相手をしていらっしゃいます」
「あ、そういえば……」
そんな話を兄さまから聞いた気がする。ブローフェルト家の事業に、私の家が多額の出資をしているって。まあ、私との婚約が破棄になったのだから、出資が打ち切りになるのは普通よね。義理もなくなったわけだし。
それに対しての抗議って……リガイン様はどれだけ非常識なのかしら。
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