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3話
しおりを挟む「ええと、お父様……私は凄く緊張しているんですが……」
「まあ、それは仕方ないだろうな。それでも、幼馴染と会うだけなんだ。そこまで緊張しても仕方ないと思うぞ?」
「それはそうかもしれませんが……」
私は屋敷の玄関口でかなり緊張していた。それもお父様が予定した幼馴染との会合の為だ。私の幼馴染の名前はジスタ・オーフェン侯爵令息……。その名の通り、侯爵家の長男になる。子爵令嬢でしかないメロス家の私が会うなんて……それだけでも緊張してしまうのに。
「でも、お父様。ジスタは会うことを了承してくれたんですか?」
「ああ、その辺りは問題ないぞ。事情を話したが、向こうから会いたいという程だったからな。なに、ジスタ殿は侯爵令息ではあるが緊張することはない。前までのように付き合っていれば問題ないさ」
「いや、それは……」
私も18歳になって立派な大人の部類に入っている。ジスタも18歳と同じ歳にはなるはずなんだけれど……子供の頃のようには付き合えないのは明白だった。まだ同じくらいの令息ならともかく、相手は侯爵令息なのでなおさらだ。ああ、本当に緊張してしまうわ……一体、どういう風に出迎えればいいのか。
「ジスタ・オーフェン様がお越しになられました。お連れしてもよろしいでしょうか?」
「うむ、よろしく頼むぞ」
「畏まりました、だんな様」
とうとう来たのか……本当に緊張してしまう。ジスタも18歳になっているはずだけれど、どのように変わっているのかも気になってしまうし……ああ、どうしようかしら。どのような態度をすればいいのか。
「失礼致します」
「あ……!」
思いの外、普通の様子でジスタ・オーフェン侯爵令息は入って来た。当然、周囲には護衛の人が数名待機していたけれど、侯爵令息としては無防備な様子と言えるかもしれない。
「ほら、パウナ」
「あ……ようこそいらっしゃいました……ジスタ様」
私は固くなっていたけれど、自分の考えうる最大の経緯を込めてジスタを招いたつもりだった。ジスタは呆けている様子だ……あれ? 私の出迎えは間違っていただろうか? 子爵令嬢の間違え……これは相当に響いてしまうのかもしれない。
そんなことを考えていると……。
「ぷっ、あはははははははははははははっ!!!」
驚いたことに、ジスタは大笑いをし始めた……えっ? 意味が分からないんだけれど……。
「なんだよ、その挨拶は! あははははははっ、笑うしかないじゃないか!」
驚くほどにジスタは笑っている……お父様もなぜか笑っているようだった。あれ? 私、何かやらかしたの?
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