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4話 ビルデ視点

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(ビルデ・フォース侯爵視点)


「ビルデ様……エンリ様はを追放して良かったのですか?」


 私にそんな質問を投げかけて来るのは、護衛兼執事のハモンドだ。心配そうな顔で私を見て来る。


「問題はないだろう。既に婚約破棄の手続きは完了しているのだからな。まあ、多少は事実と違うところはあるが」

「……」


 王家の者達に事実をそのまま伝えるわけにはいかない。だからこそ報告書には多少の嘘も混ぜるしかなかった。だとしてもこれが明るみになることはないだろうがな。


「そういえばビルデ様」

「どうしたのだ、ハモンド」

「噂で聞いているのですが……エンリ様の屋敷に動物の死体が投げ込まれていたという情報がございます。それから奇妙な手紙もポストに入っていたとか」


 そんな話があったのか。それにしても、こいつはエンリのことをそれ程に気にしているのか?


「ほう、そのようなことがあったのか……ふむ、確かに奇怪な現象だな」

「ビルデ様はお心当たりはないのでしょうか?」

「どうした? 私がやったとでも思っているのか?」

「いえ……ビルデ様が直接行ったとは思っておりませんが。ですが何かご存知なのではないかと思いまして……エンリ様に行われた嫌がらせについて」

「ふむ……そうだな」

 そうだな……考えられるとすればあれになるか。


「お前も伯爵家の出であれば分かるだろう。貴族社会に噂は付き物だ。おそらくは私とエンリとの間で起きた婚約破棄について、誤解した者達の犯行であろうな」

「そ、そんなことが……!」

 私は対外的評価は高いのだ。おそらくはエンリが一歩的に婚約破棄をしたなどという誤解を真に受けて、嫌がらせをした貴族が居たのだろう。その気になれば嫌がらせをした者の特定はできそうだが、流石にそれは酷と言うものだろうか。


「ビルデ様。すぐに犯人の特定を行いましょう。貴族として許しておくわけにはいかないと思います」

「馬鹿を言うな、ハモンド。その者達はおそらく、私の為に行ったのだぞ? その好意を無駄にするつもりか?」

「で、ですが……!」


 今日のハモンドはやけに食いついて来るな。それほど気になっているということか……。だが、調査をして犯人捜しをするわけにはいかない。こういった噂が流れるのはむしろ良いことだからな。エンリも怖がり、私に対して逆らうとどうなるか、という恐怖に脅えることになるだろう。そうなれば慰謝料などの支払いも免除されるかもしれん。


「それよりもだ、ハモンド。今月は様々な事業への視察で忙しくなりそうだ。そちらの方はちゃんとしているのだろうな?」

「は、はい。そちらは問題ございませんが……しかし、やはり……」


 ハモンドはこれでも伯爵家の出身だ。だからこそ、私に対して反抗的な態度を取ることがある。まったく困った奴だ……優秀であるから余計にな。
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