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4話
しおりを挟む「うおおおおお!」
「ノール、兄さま!」
怒りに震え殴り掛かった一撃……それはカルナム兄さまの顔面にヒットした。口から出血をする兄さまは倒れることはなかったけど、後ろに後退していた。
「カルナム……お前は、お前は! 絶対に許さないぞ!」
「殴られることは覚悟の上だったが……かなり痛いな」
「なんだと!? どういうことだ!?」
「兄さま、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、リリア。心配することはない。こうなることは予想していたからな」
「えっ……?」
やはりと言えばいいのか。確かに兄さまはわざと挑発していたように見えたけれど。これはひょっとすると、ノールに殴られることを想定してのことだったのかもしれないわね。カルナム兄さまは痛そうにしているけれど、特に怒っている様子はないもの。ということは……ここまでは兄さまの想定内だということだ。
「カルナム……一体、何を考えているんだ?」
「ノール。お前はもう言い逃れは出来ないぞ? リリアに対する数々の束縛と仕打ちも許されることではないが、こうして手を出したのだからな。自分が悪いことをしている自覚がまったくなく、リリアを疲れさせていることと合わせて、お前に妹はやれないと確信した」
「な、なんだと……?」
「お前とリリアの婚約破棄を提案させてもらおう」
「な、何を馬鹿なことを! そんなこと許されるわけがないだろう! いい加減にしろ、カルナム!」
ノールはまた手を出そうとしたのか、拳を振り上げる。しかし、兄さまの叫び声がそれを邪魔した。
「いい加減にするのはお前だ、ノール! 今度、私を殴ってみろ。お前の人生はかなりマズイことになるぞ。国王陛下や他の貴族にも伝わることになるだろうしな」
「くっ……それは……!」
国王陛下に伝わるのは流石に厳しいと判断したのか。ノールは振り上げた拳を元に戻した。
「リリアとは婚約破棄をしてもらうぞ。お前からは慰謝料の請求もしてやる」
「馬鹿なことを言うな! 私はリリアを愛しているんだ! 今までのことだって、彼女のことを心底愛していたから……!」
「お前がリリアのことを愛しているのは知っているさ。これでも、一番近くでお前達を見て来たと自負しているからな」
「兄さま……」
「カルナム……だったら! 婚約破棄などあり得ないだろう?」
ノールは先ほどよりも落ち着いている気がする。カルナムを殴ってしまい、少しだけ冷静になったのかもしれない。
「幼馴染としては二人は上手く行っていただろう。しかし、結婚をすれば破滅しかない。それは今までの事件が物語っている。そして何よりも、妹のリリアが別れたがっているのだからな」
「なに……そんな馬鹿な! リリア、本当なのか……!?」
ノールは信じられないといった表情で私に問いかけて来ていた。ここは真実を語るべきだろう。ノール自身の為にも。私はもうノールとは一緒にいられない。兄さまを殴ったことでより強く実感してしまった。
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