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その日、私とカルナム兄さまはノールの屋敷を訪れた。私としては非常に怖いことだったけれど、兄さまの意思が固かったためだ。私は兄さまを信じることにした。確かにこのままだと、私自身に危害が及ぶかもしれないからね。
それこそ、婚約破棄の話なんてしようものなら、ノールがどれだけ逆上するか分かったものではない。
「カルナム……? なんでお前がここに来るんだ? リリア、一体、どういうことだ?」
「ごめんなさい、ノール。どうしてもカルナム兄さまがあなたに会いたがっていたのよ。私にそれを止めることは出来なかったわ」
「なに? リリア! カルナムとは話すなと言ったはずだろ? 僕のことを馬鹿にしているのか!」
「ひっ! そんなに怒らないでよ……怖いわ」
「怒らせているのはどっちだ? 許せない……僕との約束を破るなんて……!」
案の定、ノールは逆上をし始めた。でも、そこにカルナム兄さまが冷静に入ってくれる。
「いい加減にするんだ、ノール。妹のリリアはお前の所有物ではないんだぞ? ちゃんとした一人の人間なんだ」
「何を言っているんだ? そんなことは言われなくても分かっている。僕はそんなことを話しているんじゃない。夫婦になる者同士の信頼関係の話をしているんだ」
「それが思い上がりだと言っているんだよ、ノール」
「なんだと!? カルナム、僕に向かってよくもそんなことを……!」
今回のノールの逆上は今にも殴りかかりそうな程だった。今までの中で一番怒っているかもしれないわね。これは本当にマズいわ……。なんとかノールを宥めないといけないんだけれど、どうしようかしら。
「お前は確かにリリアの婚約者だが、地位的には私と同じ伯爵令息だろう? 僕に向かってとはどういうことだ?」
「うっ……! それは……」
めずらしくノールが口をつぐんだ。カルナム兄さまの方が優位性を獲得しているという証だろうか。
「リリアのことを愛しているなら、まずはその脅しとも取れる言い方を改善してくれ。それから束縛としか取れない愛情表現もだ。兄として大切な妹をこれ以上見ていられなかった。だから、今回は屋敷に来て直接言っているんだよ」
「カルナムお前……黙って聞いていれば適当なことばかり言いやがって! これは僕とリリアの問題だ! いくら兄妹だからと言って入って良い部分とそうでない部分があるだろう!?」
「それはそうかもしれないが、お前だっていくら婚約者とはいえ、やっていいことと悪いことがあるんだぞ? その辺りはちゃんと理解しているのか?」
「なんだと!?」
カルナム兄さまはさらにノールを逆上させているようだった。いつ殴り掛かられてもおかしくない状況だ。これは少しマズイかもしれないわね。そろそろ、兄さまを止めた方が良いかもしれない。
「あの、兄さま……ノールを挑発し過ぎでは?」
「心配はないさ、リリア。私は悪いことは言っていないからね」
確かにそうだけれど、このままでは非常にマズい気がしてしまう。ノールを正す為だとしても、もう少しオブラートに包んだ方が良いのではと思ってしまうからだ。でも、兄さまは敢えて挑発的にしゃべっているように思える。
「カルナム! 言わせておけば! お前は!」
「兄さま!」
そしてついに恐れていたことが現実になった。ノールがなんとカルナムに襲い掛かったのだ。これはマズすぎる事態だ。
それこそ、婚約破棄の話なんてしようものなら、ノールがどれだけ逆上するか分かったものではない。
「カルナム……? なんでお前がここに来るんだ? リリア、一体、どういうことだ?」
「ごめんなさい、ノール。どうしてもカルナム兄さまがあなたに会いたがっていたのよ。私にそれを止めることは出来なかったわ」
「なに? リリア! カルナムとは話すなと言ったはずだろ? 僕のことを馬鹿にしているのか!」
「ひっ! そんなに怒らないでよ……怖いわ」
「怒らせているのはどっちだ? 許せない……僕との約束を破るなんて……!」
案の定、ノールは逆上をし始めた。でも、そこにカルナム兄さまが冷静に入ってくれる。
「いい加減にするんだ、ノール。妹のリリアはお前の所有物ではないんだぞ? ちゃんとした一人の人間なんだ」
「何を言っているんだ? そんなことは言われなくても分かっている。僕はそんなことを話しているんじゃない。夫婦になる者同士の信頼関係の話をしているんだ」
「それが思い上がりだと言っているんだよ、ノール」
「なんだと!? カルナム、僕に向かってよくもそんなことを……!」
今回のノールの逆上は今にも殴りかかりそうな程だった。今までの中で一番怒っているかもしれないわね。これは本当にマズいわ……。なんとかノールを宥めないといけないんだけれど、どうしようかしら。
「お前は確かにリリアの婚約者だが、地位的には私と同じ伯爵令息だろう? 僕に向かってとはどういうことだ?」
「うっ……! それは……」
めずらしくノールが口をつぐんだ。カルナム兄さまの方が優位性を獲得しているという証だろうか。
「リリアのことを愛しているなら、まずはその脅しとも取れる言い方を改善してくれ。それから束縛としか取れない愛情表現もだ。兄として大切な妹をこれ以上見ていられなかった。だから、今回は屋敷に来て直接言っているんだよ」
「カルナムお前……黙って聞いていれば適当なことばかり言いやがって! これは僕とリリアの問題だ! いくら兄妹だからと言って入って良い部分とそうでない部分があるだろう!?」
「それはそうかもしれないが、お前だっていくら婚約者とはいえ、やっていいことと悪いことがあるんだぞ? その辺りはちゃんと理解しているのか?」
「なんだと!?」
カルナム兄さまはさらにノールを逆上させているようだった。いつ殴り掛かられてもおかしくない状況だ。これは少しマズイかもしれないわね。そろそろ、兄さまを止めた方が良いかもしれない。
「あの、兄さま……ノールを挑発し過ぎでは?」
「心配はないさ、リリア。私は悪いことは言っていないからね」
確かにそうだけれど、このままでは非常にマズい気がしてしまう。ノールを正す為だとしても、もう少しオブラートに包んだ方が良いのではと思ってしまうからだ。でも、兄さまは敢えて挑発的にしゃべっているように思える。
「カルナム! 言わせておけば! お前は!」
「兄さま!」
そしてついに恐れていたことが現実になった。ノールがなんとカルナムに襲い掛かったのだ。これはマズすぎる事態だ。
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