束縛が厳し過ぎるので、流石に婚約破棄したいです

2話

「ノール、私は屋敷に戻るわ。用事があるの」

「用事かい？」

「ええ」


　私はいつものようにノールに帰省する許可を貰っていた。こうしていちいち貰わないと、私は自由に外出することが出来ない。特に前の件もあるので、ノールは敏感になっているようだった。

「君のお兄さん、カルナムとはあまり話さないようにね。わかったかい？」

「ええ、わかっているわ」

　私はノールを怒らせないように、その場限りの約束をした。こうでもしないとまた逆上してしまうかもしれないからね。こんなの婚約関係にある仲とは言えないと思うのだけれど……でも、家に帰るためには仕方がなかった。

「絶対だよ？　信じてるからね、リリア」

「大丈夫よ。分かっているわ。兄さまとはあまり話さないで帰って来る。これでいいでしょ？」

「ああ、それじゃあ、行ってらっしゃい」

「行って来ます」


　ノールはこう言ったけれど、監視の名目で執事達を護衛として同行させる。最早、定番だった。事実、家に帰って兄さまと話さないことなどあり得なかった。ノールの件で悩みを聞いてもらっているのだから。それだけに、ノールにバレた場合が怖いけれど、その辺りは執事に話を通している。この辺りも最早定番で非常に気を遣うことだった。

　正直言って、家に帰るだけでこんなに苦労するのは疲れてしまう。本当に婚約破棄をした方がいいのではないだろうか。そこまで考えてしまう事態だ。


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「やあ、お帰り。リリア。今日は帰って来る予定はなかったんじゃないか？」

「カルナム兄さま、ただいま。ノールには無理を言って帰らせてもらったわ」

「ははは、なるほど、そういうことか」


　自分の家へと帰って来た私は、たまたま兄さまに出迎えられた。そのまま、応接室へと入る。なんで私が応接室なのか分からなかったけれど、久しぶりの帰省だったので、お客さんの立場で考えてしまったからだ。対面には兄さまが座っていた。


「ノールの様子はどうなんだ？」

「相変わらず、束縛が酷いわ。私のことを想ってくれているのは分かるんだけれど。最近は恐怖すら覚えるの」


　カルナム兄さまにはこうして、たまに悩みの相談をしていた。兄さまも忙しいと思うけれど、私の話を聞いてくれている。本当にこの瞬間は私の癒しだった。ノールに怒られるという不安はあるけれど、我が家はやはり安息の場所なのだ。


「ふむ……ノールの愛情による束縛癖もそろそろ限界かもしれないな」

「限界？　どういうこと？」

「このままでは、リリアに危害が及ぶかもしれないということだよ」

「それは……」


　それは確かに考えられることだった。ノールの最近の逆上回数は一番多いし。勢い余って殴られる可能性もなくはないから。すると、兄さまが立ち上がった。

「少し、ノールと直接会った方が良さそうだな」

「えっ、兄さま……？」


　ノールとカルナム兄さまが会う……それは危険なところではないだろうか？　ノールがまた逆上しそうだけれど……。